小さい頃から家に夢を持っていたから住宅販売会社に就職したように、子どもの頃の夢の延長上に今の仕事があるなら、自分のストーリーはつくりやすい。
しかし、子どもの頃の夢を思い出したところで、だれもがそれに関係した仕事をしているわけではない。そのようなケースでは、どうしたらよいのだろうか。
以前に、女性宇宙飛行士の山崎直子さんが常々自分自身に言い聞かせている言葉について紹介したが、宇宙に憧れる子どもたちは非常に多い。多くは、星空を見上げて観賞するに止まるが、中には宇宙飛行士になりたいとまで思う子もいる。
だが、宇宙飛行士というのは、現実にはなかなかなれるものではない。
「じつは、私は宇宙飛行士になりたくて、小学生の頃から『大きくなったら、宇宙飛行士になる!』って宣言していたほどでした。でも、大学生になって、いろいろ現実的な条件を考慮して、その夢は断念しました」
そう語る20代の女性は、航空整備士の仕事に就いている。宇宙飛行士になるという長年の夢は叶わなかったものの、今の仕事はとても充実しているという。一人前になるまでに10年かかると言われる厳しい仕事だが、やりがいを感じて取り組んでいる。
「自分が整備した飛行機が空を飛んでいると思うとすごく嬉しい。宇宙でなくても、自分が飛ばなくても、空を飛ぶことに関係した仕事なら何でもよかったのかも、と思います」
空を飛ぶことに関係する仕事をしていたい。自分の仕事は飛行機が空を飛ぶのを支えている。そうしたストーリーを生きることで、その女性はイキイキと仕事生活を送っている。
この事例のように、ストーリーというものには幅がある。宇宙飛行士が飛行機のパイロットになったり、飛行機の航空整備士になったり、航空管制官になったりしても、空を飛ぶことを支えるという点で同じストーリーに収めることができる。
子どもの頃から夢だった職業に就く者は、きわめて稀だ。将来は野球やサッカーの選手になりたいと思う男の子は非常に多いが、ほとんどは子どもの頃の夢に終わる。せいぜい、休日に草野球ができればよいほうだろう。
多くの人たちは、同じように子どもの頃の夢とはまったく関係のない仕事に就いているはずだ。だからといって、仕事を意味づけるストーリーを持てないわけではない。職業は何であれ、働き方のストーリーを持つことは可能である。
実際に、イキイキと働いている人たちの多くは、自分の仕事に意味を与えてくれるような働き方のストーリーをもっているものだ。
就きたかった仕事に就ける幸運な人間は少ない。でも、働き方のストーリーがもてれば、どんな仕事でも意味を感じながら取り組むことができ、毎日を充実させられるのである。
希望通りの仕事じゃなくても楽しむコツはある!
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