失った「信頼」を取り戻すのはなぜ難しいのかそのひとことを言う前に(2/2 ページ)

» 2014年08月14日 09時00分 公開
[岩淺こまきBusiness Media 誠]
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信頼貯金は放っておくと減ってしまう

 信頼貯金が減っていくもう1つのパターンとして「信頼の土壌の劣化」というものもあります。次のようなケースでは、周囲から「今」やるべきことをやっていない、と思われ、反感を買ってしまっています。

ケースC:昔の“やり方”にこだわる

Eさん: この件に関しては、A商事に依頼したいと思っているのですが……。

Fさん: いや、絶対B株式会社に依頼した方がいいって。あそこの担当者は、私の言うことならいろいろ便宜図ってくれるし。何なら今から電話してお願いしようか?

Eさん: (B株式会社が良かったのは前の話。もう技術も考え方も遅れてるのに……。それが分からないFさん自身、もう勉強不足だよな)

ケースD:いつも通り、が適当に見える

Gさん: この案件の進め方についてなのですが……。

Hさん: 今までいつもこんな感じだったし……、今回もそれでいいんじゃない?

Gさん: (いつも一緒でいいってこと? 改善も検討した方がよくない?)

photo 信頼という名の貯金を貯めるのは長い時間がかかるもの。しかも徐々に減っていくのだからやっかいだ

 こうしたケースは、いわゆる「昔のナンバーワン」――過去に実績を上げた人に多く見られる傾向です。注意したいのは、信頼の土壌は一度整ったら終わりではないということ。時間が経つにつれて土壌は劣化し、貯金は減っていきます。いわば“毎月、自動で引き落としされる”ようなイメージです。

 なので、過去の栄光に頼らず、今求められる信頼を貯め続けていくことが必要になります。上記の例で言えば、情報収集や決断ですね。

 いずれにせよ、信頼を蓄積するのは長い時間がかかるもの。即効性を期待しない方がよいでしょう。仮に信頼貯金はないが、今すぐ影響力を発揮したい――例えば、会議などで通したい意見があるといった状況ならば、自分以外の人を使うのもアリです。貯金が貯まっている人に後押ししてもらったり、その人の意見として出してもらったりするのが賢い方法でしょう。

 自分が発言するのが目的か、意見を採用してもらうのが目的なのか……自分が影響力を発揮したい場面では、何がゴールなのかを考えて、人でもツールでも、工夫して使っていくのが得策です。

今回のまとめ

Q:ビジネスでは「信頼」が大事と言われていますが、信頼を得るために気を付けることはありますか?

A:信頼は“貯金”のようなものだと考えてください。約束を守り続けることによって貯金は貯まっていき、一定額を貯めれば周囲に影響力を発揮できます。しかし、ネガティブワードや約束を破ることで一気に貯金は減ります。貯まりづらく、なくなりやすいものだと知ることが重要です。


著者プロフィール:岩淺こまき

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 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師

 大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気づく。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。


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