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日本アイ・ビー・エム 平井康文理事ソフトウェア事業部長 WebSphere,DB2,Lotus,Tivoliの4ブランドで新しい価値を創造

「WebSphere」「DB2」「Lotus」「Tivoli」という4つのブランドを顧客に認知させ,オープンソフトウェア路線の確立に成功した日本アイ・ビー・エム(日本IBM)のソフトウェア事業。今後は,4つのブランドのコラボレーションを実現していくという。そこで2002年の事業展望について,同社の平井康文理事ソフトウェア事業部長に話を聞いた。

ZDNet 2001年1月からちょうど1年間,日本IBMのソフトウェア事業を統括されたわけですが,どのような1年でしたか。

「90%のユーザーがIBMの製品を利用していないのはIBMの責任」と平井部長
平井 一言でいえば,非常にエキサイティングで,非常に楽しい1年だったと思います。また,IBMが提唱するe-ビジネスにおいて,ミドルウェアが占める価値の重要性を(今までも理解しているつもりでしたが)再認識させられた1年でもありました。さらに,価値の重要性だけでなく,それを提供している責任の重さについて非常に強く意識させられました。

 現在,e-ビジネスにもいろいろなステージがあり,さまざまな戦いが繰り広げられています。オペレーティングシステム(OS)は,既に主たる戦場ではありません。マルチプラットフォーム上に,ミドルウェアを搭載し,アプリケーションを構築し,ソリューションとして提供しなければe-ビジネス市場では勝負にならないという使命が明確になりました。

ZDNet 2001年3月に開催されたDB2パートナー会で,「IBMのソフトウェア事業部は,もはやIBMではなくISVの1社に過ぎない」と話して大きな反響があったようですが,この言葉の意味はどのようなものだったのでしょう。

平井 われわれのソフトウェア戦略では,大きく4つのブランドがあります。「WebSphere」「DB2」「Lotus」「Tivoli」です。2001年7月には,インフォミックスのデータベース事業を買収しまししたが,これはデータマネージメント事業であるDB2ブランドにに統合されています。

 インフォミックスだけでなく,ロータスにしてもチボリシステムズにしても,元々はオープンソフトウェアベンダーでした。ですから,IBMが買収したとはいえ,オープンソフトウェアの精神は変わっていません。これらの製品は,AIXだけでなく,WindowsやSolaris,hp-ux,Linuxなど,さまざまなプラットフォームで動作します。2001年末には,コンパックのHimalayaもサポートしました。IBMのソフトウェア製品は,オープンな環境で稼動するということが,大きな1つの価値になっているのです。

 IBMのソフトウェア製品は,非常にクオリティの高い,優れた製品が多いにも関わらず,例えば日本国内のDB2のシェアは10%に過ぎません。つまり90%のユーザーには,DB2の素晴らしさをうまく伝えられていないのです。これは,われわれの責任が大きいと考えました。

 そこで,堂々とISV宣言をして,IBMブランドだけに頼るのではなく,本当に良い製品を提供しているんだということを強調したかったのです。さらに,パートナー企業もそれを望んでいるということを肌で感じたからです。

ZDNet その意図は,この1年でうまく伝えられたのでしょうか。

平井 IBMのビジネスポートフォリオでは,「ビジネスソリューション」「インフラストラクチャ」「テクノロジー」という大きく3つの分野があります。ソフトウェア製品やサーバ製品というシステムを構成するコンポーネントを提供するビジネスはインフラストラクチャに属します。

 インフラストラクチャを噛み砕いて言えば,IBMが料理の素材を提供し,パートナー各社が思い思いの味付けや盛り付けをして顧客に提供すること環境を提供するということです。例えば,スーパーに売っている「すき焼きなべセット」は,野菜や肉など必要なすべての材料がパッケージされていますが,それを販売する方法は各店舗に任され,そして鍋や味付けなどはそれぞれの家庭に任されています。

 つまり,IBMの提供するソフトウェア製品群は,「すき焼き鍋セット」なのです。ソリューションの最終的な組み立ては,パートナーや顧客の考え次第です。ですからIBMでは,顧客が必要とするであろう製品の品揃えと,メニュー,実現のための能力を兼ね備えることに専念しています。これこそが,ISVとしての最大の差別化要因になると考えているからです。

 こうした取り組みにより,新しい競争が生まれ,その競争が顧客に新たな価値を提供できるという,良い連鎖環境が実現すると思います。

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[聞き手:山下竜大 ,ITmedia]