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ミラクル・リナックス 茂木正之社長 MIRACLE LINUXはエンタープライズLinux実現の決定版

ZDNet エンタープライズ向けのLinux市場は,Linuxの有効性も認識され注目度が高い割りに,実現性が低い状況にあるように思います。これはどのようなことが原因なのでしょう。

茂木社長
茂木 ハードウェアはそろいました,データベースもOracleが利用できます,それではLinuxサーバOSはどこが保障してくれますか……,というのがこのような状況の引き起こした原因の1つだと思います。エンタープライズ向けのLinuxでは,OSを提供して終わりというわけにはいきません。特に,Linuxをきちんと保障してくれる人材が圧倒的に不足しているのです。

 例えば,Oracleデータベースの認定資格である「オラクルマスター」は,既に5万人が取得しています。しかし,本当にビジネスに活用できるLinuxの資格を持っている人は数えるほどしかいないのです。これでは,いくらエンタープライズ領域でLinuxを利用したいと顧客が考えても,導入することは不可能です。現在,LinuxとOracleのディストリビューションには,大きな格差があるのです。

 そこでわれわれは,OracleとLinuxの両方に精通した技術者の育成を急務としてきました。この技術者の育成も含め,エンタープライズLinuxの市場拡大に向け準備が整ったと思っています。色

ZDNet 社長就任時に,「ミラクル・リナックスの第2フェーズが始まる」と話されていましたが,第2フェーズで目指すのはどのようなことなのでしょう。

茂木 第2フェーズの本質は,オペレーティングシステムの会社として日本国内に完全に認知されるということです。また,会社として利益が確保できる体質を作り上げることも第2フェーズの目的です。

 現在,Oracleデータベースに最適化されたLinuxサーバOSとしてMIRACLE LINUXは完全に市場に認知されたと思います。しかしそれだけでエンタープライズLinux市場が実現するわけではありません。例えば,クラスタリングソフトやシステム運用管理ソフトなど,まだまだ数多くの仕組みを提供しなければいけません。

 例えばクラスタリングソフトでは,NECや東芝,NTTコムウェア,スティールアイ・テクノロジーなどのベンダーと協力関係にあります。実際に,クラスタ構築の案件も数多く手がけていますし,既に構築事例もいくつもあります。

 ミラクル・リナックスは,LinuxサーバOSを提供するだけでなく,SIに必要なさまざまなミドルウェア製品群を提供してくれる会社なんだということを理解してもらえることも第2フェーズの大切な目的の1つなのです。

 これにより,SIパートナー,ハードウェアベンダー,ミドルウェアベンダーなど,Linuxに関わるすべての会社が儲かる体制を実現したいと考えています。もちろん,ミラクル・リナックスも儲からないといけませんが……(笑)。

「Linuxは儲からない」という考えを,早く払拭色したいと思っています。

ZDNet 今後,エンタープライズLinux市場が儲かる市場になるためには,何が最も足りないのでしょう。

茂木 やはり人材です。Linuxの専門家をそれぞれのパートナーの中で育成してもらうことが必要だと思います。われわれは,パートナー各社が人材を育成するためのサポートをしていきたいと思っています。

 もう1つは,意思決定のスピードです。IT市場は常に変化しており,この変化に迅速に対応できる意思決定ができる会社だけが今後生き残っていけると思います。ですから,Linuxの導入を今こそ迅速に決定してほしいと思います。

ZDNet 2002年の抱負をお聞かせください。

茂木 基本的には,Oracleデータベースを利用するLinuxサーバOSは100%,MIRACLE LINUXにしたいと考えています。また,クラスタ分野でもわれわれの製品を利用してもらえる環境を実現したいと考えています。

 エンタープライズ向けのLinux市場に付加価値を与えることで,顧客やSI,ハードベンダーなどのビジネスパートナーに喜んでもらえる会社になりたいと思っています。

「年末年始は,ひたすらゴルフの“練習”をしていました」と話す茂木社長。これまでの最高スコアは「83」だが,その後のスコアの低迷に悩んでいるという。そこで年末年始はコースに出るのではなく,スコア80をコンスタントに切れるように,ひたすら練習したというわけだ。「冬の寒いうちにしっかり練習しておけば,暖かくなった春にいいことがあるから……」とは,Linuxビジネスに通じる教訓を含んでいるのかもしれない。

[聞き手:山下竜大 ,ITmedia]