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マイクロソフト 阿多親市社長 .Netで新たな領域に挑むマイクロソフト

ZDNet エンタープライズ市場に話を移します。この分野,昨年はどうでしたか。

阿多社長
阿多 2000年2月にリリースしたWindows 2000 Serverのテストがその夏からテストが始まり,2001年からはミッションクリティカルな分野でもカットオーバーが相次ぎました。

 日本ユニシスのUnisys e-@ction Enterprise Server ES7000とわれわれのWindows 2000 Datacenter Serverを組み合わせた三井住友銀行のBANCSシステム(都市銀行間キャッシュサービス連携システム)が昨年10月に稼働しました。メインフレームをWindowsシステムで置き換えるとコストは1/10になると新生銀行では話されていましたが,そういった話にリアリティが出てきたと思います。

ZDNet そして,今年は新しい開発ツールやWindows .Net Serverが登場し,.Netプラットフォームの全容が明らかになりますね。

阿多 Visual Studioをリリースしてからもう3年になります。まもなく正式出荷が始まるVisual Studio .Netでは,Windowsというプラットフォームにアプリケーションを書くのではなく,インターネットに書くというアプローチに変わります。しかも,XML Webサービスという形で再利用できるようになります。エキサイティングなツールになると考えています。

 いち早く,オービックビジネスコンサルタントやピーシーエーといったISVも.Netで開発すると表明してくれましたが,その主な理由は,「開発効率の高さ」と「既存資産の活用」ということでした。

ZDNet 競合各社もWebサービスに関しては力を注いでいます。どのように差別化を図っていくのでしょう。

阿多 アプリケーションサーバは,プロセス統合を経て,Webサービスサーバへと進化している過程にあり,そういう意味では,われわれマイクロソフトはトップを走っています。そして激しく争うのは,IBMのWebSphereでしょうが,われわれにはVisual Studio .Netという開発ツールの優位性があります。

ZDNet ハードウェアのコモディティ化がコストを大幅に引き下げるというのは分かりやすいのですが,システム全体となるとどうでしょうか。

阿多 多くの企業のコンピューティング環境は異機種が混在しています。もはや企業が購入するハードウェアが1台目ということはあり得ません。メインフレームがあり,UNIXサーバがあり,Windowsもあるという具合です。それらの既存資産を活用しなければなりません。昨年3月にはわれわれの.Netプラットフォームと富士通の「INTERSTAGE」の間でSOAPを介してアプリケーション同士の接続を成功させています。

 例えば,銀行にとって大切な顧客データベースがメインフレームでがっちり構築されていたとします。これをWindowsシステムに置き換えたところで売り上げが増えるでしょうか? もちろんコスト削減には有効でしょうが,ITに対する投資は減っているわけではなく,企業は自社の売り上げを増やせるシステムに投資したいと考えています。

 ならば,顧客のデータを営業系のアプリケーションのところまで引っ張り出して,よりアクティブな顧客に効果的なプロポーザルを出せるようにした方がいいわけです。その際,フロントアプリケーションはどんどん開発し,儲かるシステムをつくりたいのですが,バックエンドまでやり直すのはたいへんです。そこで,XML Webサービスが有効になってきます。

ZDNet 日本は世界で最もメインフレームを保有する国だといわれています。メインフレームやUNIXのハイエンドサーバからWindowsへの移行はそう簡単ではないと思いますが。

阿多 日本の企業は,オーバースペックともいえるような,がちがちなシステムを構築してきました。決してそれが悪いというつもりはありませんが,コストはどうでしょうか? そうした投資を続けていってグローバルなメガコンペティションに勝ち抜けるでしょうか?

 最近MRO(Maintainance, Repair and Operation:消耗品や補修用品など,企業が日常的に消費するサプライ用品)の集中購買について話をすることが多いのですが,事業部ごとにばらばらにデータベースを構築している企業がほとんどです。それでも使い慣れたメンテナンスコードで,事業部ごとのやり方をしたい場合にXMLは極めて有効になります。

 2002年は,そうした実装技術が出そろってきます。システムインテグレーターやデベロッパーの協力を得ながら,システム間のインテグレーションを積極的に企業に提案していきたいと考えています。

「喪中ということもあって,今年の正月は神戸の実家で母親孝行をしました」と阿多社長。暇を見つけてジャック・ウェルチやカルロス・ゴーンの本を読んだが,「社員もみんな既に読んだ本ばかり……」と苦笑。1月15日からは早速シアトル本社への出張があるが,「バルマーに会うと,いつも元気をもらって帰ってくる」という。社歴の長い阿多社長はビル・ゲイツやスティーブ・バルマーとも個人的な信頼関係があり,「ビルもバルマーも仕事に使命感を持ち,その一方でゲームとしても楽しんでるところがいい。彼らが引退したら? 僕はそんなにドライに仕事をしてるわけじゃないからなぁ」と,社員が聞いたらドキッとする発言も。

[聞き手:浅井英二 ,ITmedia]