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エクストリーム ネットワークス 楢原良康代表取締役社長 「キャリア市場のデファクトスタンダードに近づいた」

ZDNet 昨年はコンテンツスイッチングの新製品,「SummitPx1」もリリースしました。

今年は特に,キャリアやISP市場での伸びがあった
楢原 ええ,この部分は今までボトルネックになっていましたから,そこに向けた新しいソリューションとして出しました。といっても発表したのが昨年9月ですから,これから本格的に販売活動を展開していきます。それ以外にも,たとえばSANなどの分野に向けて,いろいろなソリューションを提供していきたいと思います。

ZDNet 興味深いですね。それ以外に日本法人としての取り組みはありますか?

楢原 日本法人としてこれまでも,「Close to Market」を掲げ,ローカリゼーションを提唱してきましたが,なかなか浸透がみられませんでした。ですが社内におけるコントリビューションが高いことから,本社からのサポートも受けて,今年はローカリゼーションを充実し,リペアセンターの構築といったこともやっていこうと考えています。

ZDNet IPネットワークの拡大は間違いないでしょうが,その中での競争も激しくなるでしょう。他のベンダーとの差別化はどう図っていくつもりですか?

楢原 いろいろとあるんですが……簡単にまとめるのは難しいですね(笑い)。

 われわれが提唱するMANやイーサネットという世界では,従来のようにLANとWANを区別して,ATMがあってそれでつないで……というモデルではなく,ネットワーク全体が使えるようになってきました。

 これまでは,エンタープライズのネットワークと,キャリアやISPの提供するインフラというのは別々のものと考えられていました。ですが今は,企業ネットワークとキャリアネットワークの境目がなくなってきています。テクノロジベースで見ても,シームレスになってきました。そうしたことから,キャリアやISPの視点からも,われわれの製品が「使える」と判断いただいています。

 大きな理由は,簡単に使えるだけでなく,ポート数が多く,ポート当たりの値段も安いため,結果としてネットワークの値段を安くできるからです。もっといえば,キャリアのネットワークには,廉価で,高可用性,高信頼性を備えるといった条件だけでなく,帯域設定や柔軟な料金設定が求められるようになってきましたが,そこにわれわれの製品がぴったり合っているということだと思います。つまりは,他社にないもの,市場のニーズに合うものを提供できているということですね。そこでの実績も積んでいます。今後もそれをベースにやっていきますし,ローカリゼーションをはじめとするきめの細かいサービスも提供していきます。

 昨年は,私どもの製品やテクノロジが,キャリアのマーケットでデファクトスタンダードに近いところまでもっていけたのではないかと思っています。そのポジションを維持していくつもりです。エンタープライズのマーケットについては,企業の規模もありますから,すべてを1社でエンドツーエンドで提供するというわけにはいきませんが,そこは強みのあるところに特化して製品を提供していきたいと思います。

ZDNet では今年は,どういった技術にフォーカスがあたるとお考えですか? 10GbE対応製品も登場が間近だと思いますが。

楢原 ご存じのとおり,10GbEでは,われわれがリーダーシップを取って標準化から進めています。たとえばIEEEの標準化委員会では,米国本社CTOのスティーブ・ハドックが副委員長を務めています。彼は,ギガビットイーサネットの標準化の際もチェアマンを務めていました。一方,10GbEアライアンスは,トニー・リーという,日本でもなじみの深い人物が議長を務めています。われわれは,こうした作業を通じて標準化を引っ張ってきました。製品も……

ZDNet 展示会などでテスト機を拝見しました。リリースまでもう秒読み段階だそうですね。

楢原 ええ,研究機関や大学などにお見せして,評価していただいています。これからキャリアやISPでも同様に評価を始めていただき,来年には投入する計画です。

 またMPLSについては,広域LANサービスなどの展開が全国規模で可能となってきました。そういったMPLSベースのサービスを行っているいくつかのキャリアと組んで,既に評価していただいています。

 それからIPv6に対しては,1つにはIPv4の問題を解決するということから期待しています。もう1つ,日本では,携帯電話を利用してのインターネットが普及しています。有線のネットワークと無線のネットワークを融合させた新しいネットワークが可能になるんじゃないか,そのときはIPv6ベースになるんじゃないかという期待も抱いています。その意味で日本には土壌がありますから,世界に対してこちらから標準を発信できるといいんじゃないかなとも思います。

 これも,WIDEプロジェクトをはじめとする学術機関などで,製品の評価運用を開始していただいています。これから主要なキャリア,ISPや,先進的な企業ユーザーにおいてもIPv6でのネットワーク構築を進めてもらえるんじゃないかと考えています。ただこれは,ひとえにアプリケーションがどのくらい出てくるかによるでしょうね。何かドライバが必要だと思います。もちろん,われわれとしても,これに向けた調査研究を行っています。

ZDNet では,これからの企業ネットワークやキャリアのネットワークはどう変わってくるでしょう? それに向けてどういったソリューションを提供しますか?

楢原 ネットワークの3原則として「Faster,Simpler,Cheaper」ということがよく言われます。われわれはそれに応えるべくさまざまな製品,テクノロジを出してきました。Ethernet Everywhereもそこから出てきたものです。

 これからも,われわれの製品がそれのニーズに応えられるよう努力していきます。合わせてサポートの強化も進め,一貫したサービスを提供していく方針です。また製品ばかりでなく,アライアンスなども十分に考えながらやっていきたいと思います。

 その意味で,お客様にフォーカスしていくという姿勢に変わりはありません。一見,障害のように見えるものもあるかもしれませんが,それはユーザーにフォーカスした製品を着々と出していけば,時代の波やユーザーの要求によって自然に解決していけると思います。

「この年末年始は,娘が予約してきた古城のホテルで,ゆっくり家族と過ごした」という楢原社長。「休暇にPCを持っていくと家内が怒るので,今回は持っていきませんでした。ええ,寝ていました」と笑う。さらに社員に向けても,「本当によく働いてもらっています。それに,1月から3月にかけてまた忙しくなるので,めりはりをつけるという意味でもゆっくり休んでもらえればいいのですが」と付け加えた。

[聞き手:高橋睦美 ,ITmedia]