「The Information Company」を掲げたOracleのフィリップス社長Oracle OpenWorld 2004 San Francisco Report(2/2 ページ)

» 2004年12月07日 17時03分 公開
[浅井英二,ITmedia]
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Information Age Applications

 これまでほとんどの企業は、部門や業務ごとにシステムを構築してきた。サーバ、アプリケーション、プロセス、データが強固に一体となり、部門や業務での最適化はしやすいものの、孤立した情報のサイロを幾つも生み出してしまった。

 「10件の発注を行い、請求書も受け取ったが、5件分の発送通知しか寄越さず、しかも実際に届いたのは3件分だけ」── フィリップス氏は、現実のビジネス現場で起こっている例を挙げ、ばらばらに散在する情報によってが、企業が支払う代償がいかに高くつくのかを示した。こうした課題を解決し、企業が業績を高めていくには、「情報」が不可欠だと彼は話す。

 「タイムリーで一貫性があり、完全で、しかもグローバルで使える情報があれば、企業は正しい意思決定が行える」とフィリップス氏。

 「言うは易し」と彼が自ら指摘するように、コンピューティングの分散化は企業に難問を突き付けている。まさにこの課題は、ここ数年、「統合」を訴えてきた同社の取り組みの中心であり、「The Information Company」の標榜はその延長線上にあると言っていい。

Data Hub

 Data Hubは、インフォメーション時代のアプリケーションを構築するための革新的なアプローチを提示する。今年1月のOracle AppsWorld San Diegoで発表された「Oracle Customer Data Hub」は、顧客に関する唯一の真実をもたらす源泉を提供する。もちろん、E-Business Suiteをフル採用してくれればいいのだが、多くの企業はすぐに捨てることができない基幹システムを構築済みだ。

 こうした顧客にも柔軟なアプローチを示すべく、最新のE-Business Suite 11i.10では、何百ものWebサービスを利用してほかのアプリケーションと連携できるほか、900以上のBusiness Event(あるイベントをトリガーにしてビジネスロジックが実行され、例えば、Webサービスでほかのアプリと連携できる仕組み)が組み込まれる。また、Open Application Group(OAG)が定義する、例えば「注文書」といったビジネスオブジェクトを150以上サポートする。

 Data Hubは、こうした「スイートの開放」をさらに進め、E-Business Suiteの機能を使わない顧客にもインフォメーション時代のアプリケーションを構築する「第3の道」といえる。今回のOracle OpenWorldでは、顧客情報だけでなく、製品情報でも唯一の真実をもたらしてくれる「Product Data Hub」、市民情報を各省庁が横断的に共有できる「Citizen Data Hub」、法規制と経営レポートのプロセスを統合する「Financial Consolidation Hub」、財務データと会計ポリシーを統合する「Financial Services Accounting Hub」の4製品がプレビューされている。

グリッド

 「GMが75%の工場は稼動してなくてもいいなんて考えるだろうか?」── フィリップス氏は現状のITインフラの非効率さを嘆く。昨年秋のOracleWorld San Franciscoでベールを脱いだOracle 10gは「Gridこそ将来」とし、特に企業のデータセンターに焦点を当て、ITリソースを簡素化すると同時に効率的な活用を狙った。

 「IBMのグリッドは、コンサルタントを動員して初めて機能する。それでは話にならない。Oracleならアプリケーションを一切変更する必要はない」とフィリップス氏はライバルとの違いを際立たせる。グリッドはData Hubと共にOracle Information Architectureの基盤となる。

 Information Age Applications、Data Hub、そしてグリッドがしっかりと統合されることが顧客の利益につながるとフィリップス氏は話す。この夏のOracle OpenWorld Shanghaiでも彼は「あらかじめ組み立てられた」(Pre-Assembled)、「動作保証済み」(Certified)の「安全な構成」(Secure Configuration)のシステムが重要だとし、Oracle Information Architectureに基づく「Oracle Stack」を売り込んだが、The Information Companyのスローガンへと、より分りやすく昇華した印象を受ける。

 「完璧なインフラ、一貫性のあるコンピューティングを顧客は求めている」とフィリップス氏。それがテクノロジーとアプリケーションのカンファレンスを統合したOracle OpenWorldの狙いでもある。

 なお、Oracleはこの日、Information Age Applicationsのための将来のアーキテクチャを啓蒙する「Architecture of the future」プログラムを2005年1月から開始することも明らかにした。Dell、Intel、Novell、およびRed Hatと協力し、IAサーバとLinuxによって次世代のデータセンターを構築するためのセミナーを世界14カ所で展開していくという。

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