はてなには「しなもん」という社員犬がいる。また、システム開発のデーコムやホームページ制作のユーシステムも社員犬を飼っているなど、企業が犬を社員として迎える動きが出始めている。
レンタルペット事業を展開するズージャパンは「社員犬への問い合わせは、IT関連だけでなく事務系の企業でも増えている」と話す。PCを使った業務が多い企業では、従業員がストレスを抱えないための対策が不可欠だ。それに寄与するものとして、社員犬が注目を集めつつある。
だが、社員犬を導入するには乗りこえなければならない壁がある。最たるものは「レンタル費用の高さ」(ズージャパン)だ。社員犬の導入を支援している企業数社に取材をしたところ、週に1度社員犬をレンタルする場合、飼育費や専門スタッフの人件費などを入れると月額で数十万円掛かるという。社員をもう一人雇用するようなものだ。社員犬を短期間でレンタルすることはあるが、結局は導入を断念してしまう企業が多い。
また犬アレルギーや好き嫌いの問題もある。日本オラクルでは温厚な犬種を選び、充分なしつけをすることで、人と犬がお互いに近寄りすぎないようにしている。こうした仕組みを整備できるのは、ある程度オフィスの面積が大きい企業でなくては難しいかもしれない。
それでも、身近に犬がいることにはお金に代えられないメリットがあり、数字にも表れている。ペットフードを製造するマースジャパンの家庭向け調査によると、ペットオーナーの半数近く(45.1%)が、ペットを話題に家族の会話が増えたと回答した。健康状態が変化したという意見も多く、「ストレスが軽減した(28.5%)」といった回答が目立った。
IT企業における社員犬の導入は、トップの一存で決まることが多い。日本オラクルは社長の一声で、ピクシブやはてなは社長が直々にペットとして飼っていることで、社員犬の導入につながった。では、トップの理解が得られないと社員犬は導入できないのか。
アイティメディアの藤村厚夫会長は社員犬を導入しない理由を「社内からの提案がないから」と話してくれた。社員犬は従業員のストレス軽減や広報活動に寄与する。こうしたメリットの理解が経営層から得られるように従業員から働きかけることで、犬が社員の一員として活躍する企業がさらに増えるかもしれない。
米国では愛犬と出社できる「Take Your Dog to Work Day」という日があり、今年で10周年を迎えるなど、犬の受け入れ体制が整っている。日本企業も今後そうした取り組みに力を入れるのかどうか、引き続き注目していきたい。
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