「NECクラウドプラザ」がオープン 企業向けクラウド開拓に動く

クラウド型サービスに力を入れるNECは、同サービスをユーザー企業が実際に体験できる施設「NECクラウドプラザ」を開設した。「目に見える形」でユーザー企業にサービス内容をアピールし、利益拡大につなげたい考えだ。

» 2009年10月14日 15時30分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 「クラウドコンピューティングのサービスは、聞くと見るとでは全然違う。本物にこだわった」

 10月14日に開かれた記者説明会で、NECの藤吉幸博 取締役 執行役員常務は、港区の本社ビル1階に開設した「NECクラウドプラザ」の感触をこう話した。同プラザでは、NECが持つ国内外のデータセンターで稼働するSaaS(サービスとしてのソフトウェア)や業務アプリケーションを、設置端末から体感できる。クラウド環境を活用したNECの経営システム刷新のノウハウも紹介する。経営や事業の展開にクラウド関連のノウハウを取り入れたい企業にデモ環境を提供することで、同社のクラウド型サービスを「目に見える形」で訴求する考えだ。

NECクラウドプラザの外観NECクラウドプラザの内部 NECクラウドプラザの外観(写真左)とプラザ内

 NECクラウドプラザは、クラウドコンピューティングのノウハウを取り入れた基幹システムの構築や業務アプリケーションをSaaSとして提供するNECのサービス「クラウド指向サービスプラットフォームソリューション」について、具体的なサービス内容をユーザー企業に体験してもらうための専用ルーム。プラザ内に設置した端末からNECが運営する国内外50カ所のデータセンターに接続し、稼働している業務アプリケーションや企業向けシステムを体験できる。

 NECのクラウド型サービスは基幹システムも含めた企業向けとしているが、ユーザーにとって「クラウドのイメージは、海外企業が展開する(パブリック型の)クラウド」(藤吉氏)。サービス内容を体験してもらうことで、利便性やメリットの理解を促す。

 同プラザで紹介するデモは、(1)NECが進めている経営システムの業務プロセスの標準化とクラウド環境の活用例、(2)クラウド指向サービスプラットフォームソリューションで提供するSaaS――の2つ。

 (1)は、NECが世界規模で進めているグループ企業を含む経理/販売/購買システムの業務プロセスの標準化を説明したり、システム刷新に伴うコードの標準化や統合マスタ管理の詳細をポータル画面から確認したりできるもの。また、国内外のデータセンターにシステムを集約し、世界規模でシステム全体の稼働状態を管理しているノウハウも見せる。

藤吉幸博取締役 執行役員常務 専用のプラットフォームを用意しているNECのクラウド型サービスは「アウトソーシングやハウジングとは異なる事業だ」と藤吉氏。「基幹業務や新規ビジネスの立ち上げに有効なアプリケーションをカバーし、大企業、中小企業のニーズをカバーする」

 (2)は、クラウド指向サービスプラットフォームソリューションの1メニューである「SaaS型」のサービスを、職場や業務での活用例を交えて紹介する。記者説明会では、店舗に設置した販売促進向けの専用端末にQRコードを表示し、EC(電子商取引)サイトに誘導するシステムをSaaSで構築した事例を紹介。従来は、ユーザーが専用端末やECサイトのシステムを個別に構築し、別途システムを連携させる必要があったが、「(機能別に提供している)SaaSを組み合わせることで、専用のシステムを簡単に構築できる」と富山卓二執行役員は話す。

 サービスの対象として、基幹システムの刷新やSaaSによる新事業の立ち上げを考える経営者、最高情報責任者、情報システム部門を挙げている。藤吉氏はユーザー企業のニーズを「クラウドでシステムを作ることではなく、クラウドを使うことで総コストの削減やサービスインのスピードを上げるのが目的」と読む。NECクラウドプラザの開設により、目に見える形でクラウド型サービスを体験してもらう土台を整備し、「2012年までに1000億円の売り上げ」(藤吉氏)を目標としているクラウド関連サービスの利益確保に弾みを付けたい考えだ。

NECが見据える「クラウド指向」

 NECが掲げる「クラウド指向」の定義は、「クラウドコンピューティングの特徴を活用して企業向けシステムをサービス型で提供すること」(藤吉氏)。具体的に進める3つの取り組みとして、(1)クラウドを活用するための業務プロセスの改革支援、(2)企業利用に適したサービスの提供、(3)データセンターを経由したビジネス基盤の提供――を挙げた。

 10月8日には、クラウド関連の技術を取り入れたデータセンターの運用を強化し、関連サービスを順次打ち出していく方針を固め、新たな構想「REAL IT PLATFORM Generation2」をまとめた。藤吉氏は「クラウドというサービス化の流れは大きい。それに対してNECが取り組む」と意気込み、クラウド関連事業に本腰を入れる構えを見せていた。

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