主語は「わたし」に――相手の心に響く伝え方ビジネスマンの不死身力(2/2 ページ)

» 2009年11月21日 00時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]
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ポジティブなメッセージにも効果的

 コミュニケーションやマネジメント関連の情報の多くは、相手を褒めることが重要だと言及している。もちろんそれは大切だが、気恥ずかしさなどが先立ってうまく言葉にできない方も多いはずだ。

 「わたし」を主語にしたコミュニケーションは、相手にポジティブなメッセージを伝えるときにも効果的だ。もしあなたがねぎらいの気持ちを相手に伝える場合、以下のいずれの表現を選ぶだろうか。

メッセージ1

「あなたは、いつも仕事が早くて素晴らしいね!」

メッセージ2

「あなたの仕事が早いおかげで、(わたしは)すごく助かるよ!」

 注目してほしいのは、メッセージ2.が相手を無理に賞賛していないという点だ。自分の気持ちを伝えているため、相手を主語にするよりも気恥ずかしさはやわらぐ。伝えられた側からすると、「すごく助かる」というメッセージは「相手の役に立ったのだ」という思いを生み出すだろう。

 わたしもこうしたメッセージの伝え方を実践している。先日知人が仕事で新たな挑戦を始めた。古くからのつきあいのため、いまさら賞賛を伝えるのは恥ずかしく、抵抗感があった。そこで「あなたが新しい仕事を始めると聞いて、(わたしは)すごく刺激を受けた。やる気をもらったよ」と伝えた。素直な気持ちを伝えただけなので、それほど恥ずかしさを感じることはなく、むしろ素直な気持ちを伝えられたことがうれしかった。知人は笑顔で応えてくれた。

「褒める」効用――ほめられサロン、JR脱線事故対応に学ぶ』では、相手を褒めることのメリットを詳しく解説しています。


「わたし」を主語にして気持ちを伝えるための3つのポイント

 「わたし」を主語にするコミュニケーション方法では、形だけ変えればいいというものではない。そこで正しく気持ちを伝えて相手のモチベーションを高めるための3つのポイントをお話しよう。

批判を入れない

 「この間のミスくらいならかわいいものだけど、今回も直ってなかったので(わたしは)悲しくなったよ」

 先輩から自分の仕事のミスをこう指摘されたとしよう。確かに「わたし」が主語になっているが、実際に聞くと嫌みを言われたように感じる。これは「この間のミスならかわいいもの」という相手への批判や否定の表現が入っているからだ。こう言われるくらいなら、「あなたが作成した書類にミスがあった」と直接言われた方がましである。伝える内容に批判や否定をいれないように気を付けよう。

ポイントを絞って短めに

 「わたし」を主語にしたメッセージを作るときは、まず「わたしは○○に思った」といった短い文章を作ってみよう。こうすることで、相手の批判が入るすき間をふさぐことができる。

 また、伝えるメッセージは長文よりも短くシンプルなものの方が、相手の心にも届きやすい。「わたしは○○について、○○の理由で、○○だからうれしい」と回りくどく言うと、せっかくの感謝の気持ちも伝わりにくくなってしまう。

事実のみを伝える

 「この間のミスくらいならかわいいものだけど、今回も直ってなかったから(わたしは)悲しくなったよ。次回もまたミスが起こるのではないかと心配だな」

 これはまだ起きていないことまでを余分に伝えてしまった例だ。否定的に未来のことを話すと、相手から思わぬ反感を受けることになる。起こった事実のみを伝えるようにしよう。


 仲間や顧客とコミュニケーションをしていく上では、「何を伝えるか」以上に「どのように伝えるか」ということが重要になってくる。「わたし」を主語にすることを少し意識することで、あなたのコミュニケーション力は格段にアップし、相手の心に響く言葉掛けができるようになるだろう。仕事だけでなく、友人や家庭、教育などの場面でも是非活用してほしい。

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著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)

 竹内義晴

テイクウェーブ代表。自動車メーカー、コンピュータ会社を経て、現在は、経営者・起業家・リーダー層を中心としたビジネスコーチング、人材教育に従事。システムエンジニア時代には、プロジェクトマネジメントにコーチングや神経言語学を生かし、組織活性化を実現。この経験を生かして、クライアントの夢が現実になるよう、コーチングの現場で日々奮闘している。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「竹内義晴の、しごとのみらい」で、組織作りやコミュニケーション、個人のライフワークについて執筆中。


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