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» 2009年12月28日 08時00分 UPDATE

世界で勝つ 強い日本企業のつくり方:やり直せる時代の新教育論(2)

これからの教育には出口を意識することが必要になる。最近になり、日ビジネスの経験者が教壇に立つことが増えているのも関係している。

[大木豊成,ITmedia]

 ソフトバンクなどさまざまな企業において豊富なビジネス経験を持つオルタナティブ・ブロガーの大木豊成氏に、新たな教育論を話してもらう企画の第2回。第1回はこちら


 最近、高等教育の現場においてよく耳にする言葉が「出口」です。出口戦略、出口はどうなっているのか、という使われ方をします。ここで言う出口というのは、就職先を含めた、卒業後の進路のことを指します。

 プロジェクトマネジメントと一緒にはできないかも知れませんが、プロジェクトにおいて、段取りやスケジュールといったものは、アウトプットから定義するのが当たり前となっています。どういうアウトプットを出したいから、こういう段取りをする、こういった準備が必要、いついつまでにこうする、といったスケジュールを立てていく、ということになります。

 ところが、多くの高等教育の現場では、教員が教えたいものを教えている。そこまで極端ではないかも知れませんが、出口から考えた授業内容になっていない場合が見受けられます。

 A君は、どういう就職先を考えている。だから、こういう勉強をし、こういったことを身に付けていくべきだ。だから、こういうプログラムを組んでいく、といった具合です。

 もちろん、その後の進路次第ではあるのですが、少なくともビジネスマンを目指す人に関しては、そういう考え方でいいのではないか、と考えています。

 「しかし自分の就職先を考えられないではないか」

 そういう声が聞こえてきそうです。確かに、商社、アパレル、ITといったように、あるいは営業部門といったように、自身の方向性を考えずに、闇雲に就職活動をしている学生も少なくありません。しかし、これは進路に向けて体系立てた教育を受けていない副作用なのではないかともいえます。

 プロジェクトマネジメントのWBS(Work Breakdown Structure=作業分割構成)のように、進路別に学習するべきことをプログラミングしていってはどうか、と思います。こういう進路であるのだから、これとこれを受講し、さらにこれも受けておく方がよい。MustとBetterをセットで学生に提案していくわけです。

 もちろん、大学卒業後に大学院に進みたい学生もいますし、専門学校卒業後に大学に編入を考えている学生もいます。しかし、多くの学生は就職を望んでおり、自校を卒業する学生の多くが就活に苦労しています。

 「自分のことは自分でやる。就職したら、自分でやっていなかくてはならないのだから」

 確かにその通りだと思います。正論ではあるのですが、教育の現場でできることはないのでしょうか。

 ここ数年、大学、専門学校の教壇には、多くのビジネス経験者が立っています。わたしもその一人です。ビジネスの経験のない教員が、ビジネスのことを教えるには限界があるから、とお誘いを受けるわけです。学校側がそういうことを考えなくてはならないフェーズに来ているのだと思います。

 ビジネスの経験のない、理論だけの教員を招き、定期的にゲスト講師を呼んでいるだけでは、学生たちのためにならないのです。本当に学生たちのことを考えるのであれば、自校の学生たちに必要な教育環境を整えていくことだと思います。

 その中には、ビジネス経験者も必要でしょうし、きちんと理論を理解している教育界の人たちも必要です。専門的なことを中心に学んでいく専門学校なら理論を必要としない学校もあるでしょうが、大学の場合には理論と経験の両輪が必要なのだと思います。そういう意味でも、ビジネス経験者の教育現場への投入は欠かせないわけです。

 ここで言う「ビジネス経験者」というのは、実業経験者である必要があります。ビジネス界にも、理論だけの職種があります。いいとか悪いと言ったことではなく、役割の違いなのですが、教育を出口から考えるときに必要な人材は、実業をやってきた人材であり、その実業に投資していた会社とか、中間持株会社だけを経験した人ではなく、実業です。自社で何かを製造販売していたり、自社サービスを行なっていたり。

 そういう実業を経験してきた人たちが教壇に立つことにより、自らの経験に基づいた話ができます。これは、学生たちにとって何より役に立つ情報です。僕が学生のころに、こういう話をもっと聞けたら、と思います。

 大学、短大、専門学校、高専、大学院。いろいろな学校がありますが、一部の特殊技能を身につける学校は違うかも知れませんが、きちんとビジネスパーソンの基礎を身につけ、企業が「欲しい」と思える人物を育成していく必要性を痛感しています。

 出口という概念を強く持ち、その学校を出たらどうするのか、どうしたいのか、その原動力、きっかけは何なのか、ということを考える学生が必要とされる時代になっていくのではないか、と感じています。

 社会人になったばかりの人材は、即戦力にならない。そうは言わせない人たちが、多く育ってくることを望んでいます。繰り返しになりますが、そのために学生たちに必要なものは、高い視点とスキルです。

 物事を俯瞰する力、あるいは俯瞰しようとする努力をする人材であり、日々の仕事の中ではきちんとメモをとることができ、議事録も問題なくとれる。プレゼンテーションも、ある程度はこなせる。そんな人材が出てくるといいと思います。

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著者プロフィール:大木豊成(おおき とよしげ) 

大木豊成

人材育成コンサルタント。米国PMI認定ProjectManagementProfessional取得。シンガポール大学卒業後、数々の事業立ち上げおよび企業立ち上げを経験。ソフトバンク在籍中の経験を「ソフトバンク流『超』速断の仕事術」(ダイヤモンド社)にまとめて出版した。現在はコンサルティング業のかたわら、専門学校での非常勤講師、講演などに奔走する。


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