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» 2010年11月16日 19時00分 UPDATE

国民視点の欠如した行政サービスを変えろ

省庁や地方自治体などで書類申請などの諸手続きを行う際、わずらわしさを感じた経験のある人は多いだろう。法務省CIO補佐官は「国民本位の行政サービスになっていない」と指摘する。

[伏見学,ITmedia]

 データマネジメントの普及を目指した国際組織として、全世界で40支部、7500人を超える会員を持つ非営利団体「Data Management Association International(DAMA-I)」は11月15日、DAMA日本支部を設立し、活動を開始することを発表した。

 それに合わせて同日に設立セミナーを開催、法務省CIO(最高情報責任者)補佐官で、県立広島大学経営情報学部教授を務める森田勝弘氏が「電子政府化のあるべき姿と標準化問題」と題した基調講演を行った。森田氏は現状の電子行政サービスの課題を挙げるとともに、「国民の視点を伴った行政サービス改革が不可欠」だと訴えた。

紆余曲折する電子政府の推進

法務省CIO(最高情報責任者)補佐官で、県立広島大学経営情報学部教授を務める森田勝弘氏 法務省CIO(最高情報責任者)補佐官で、県立広島大学経営情報学部教授を務める森田勝弘氏

 日本の電子政府に対する取り組みは、2001年1月に自民党政権下で発表された「e-Japan戦略」に端を発する。同戦略では重点目標の1つとして「世界一便利で効率的な電子行政」を掲げ、2010年までにオンライン申請率を50%以上にすることや、さまざまな省庁の申請を1カ所で済ませる行政サービスのワンストップ化を実現する基盤構築などが盛り込まれた。

 ところが、中間報告では、2006年度末のオンライン利用率が15.3%と低迷していたほか、ワンストップサービス基盤の構築についても、官民合同の検討会を設置したことにとどまっていた。その理由として、電子証明書の取得や添付書類のわずらわしさから、国民や企業がオンライン利用のメリットや利便性を十分に実感できなかったことや、従来のように省庁や地方自治体ごとにオンライン利用を促進する縦割りのアプローチが限界を迎えていたことなどがある。

 そうした状況を受けて2006年1月に発表された「IT新改革戦略」では、国民視点の重視と新たな成長戦略を進めるための取り組みの方向性を明確にした「IT政策ロードマップ」を策定し、取り組みの強化が特に必要な3分野――(1)国民本位のワンストップ電子行政、医療・社会保障サービスの実現(2)ITを安心して活用でき、環境に先進的な社会の実現(3)「つながり力」発揮による経済成長の実現――を定めた。

 その後、政権が民主党に移り、2010年5月に発表された「新たな情報通信技術戦略」では、国民主導の社会に転換するための徹底的な情報公開、それによる透明性の向上を基本認識として、(1)国民本位の電子行政(2)地域のきずなの再生(3)新市場の創設と国際展開が重点戦略として打ち出された。

 電子行政については、2020年までに主要な申請手続きや証明書入手を週7日24時間ワンストップで行うため、2013年までにコンビニエンスストアなどの端末を通じて国民の50%以上が利用できること、2013年までに政府で、2020年までに50%以上の自治体で国民が行政を監視し自己の情報をコントロールできること、2013年までに2次利用可能な形で行政情報を公開し、原則すべてインターネットで利用できること、を目標に掲げた。

国民に“運び役”を強いる

 こうした一連のIT戦略策定の中で、電子政府あるいは行政サービスに対する改善が議論されているものの、「(理想型への)道のりはまだ長い」と森田氏は言う。国民本位という視点が抜けた典型例として森田氏が挙げたのが、パスポートや免許証の申請、各種免許・資格証の携行や提示である。「パスポートなどを発行申請するには、国民が自ら戸籍抄本や住民票などを取り寄せ、それを申請窓口に提出するという、官から官への個人登録情報の“運び役”を強いられている」と森田氏は述べる。

「パスポート発給申請に関して、本籍情報は住民票の記載事項として得られるので、戸籍抄本/謄本の提出は不要なはず。自動車運転免許申請についても、住民票の提出は不要で、道路交通法施行規則の改正と住基ネットで対応可能だ」(森田氏)

 免許証の携行や提示についても、国民に義務を負わせるものではなく、本来は官が自らデータベースを照会することで本人確認するものだという。森田氏は「主務官庁は既に業務データベースを保有していて、リモートアクセスによる情報確認は容易に実現可能だ。そもそも免許証不携帯の罰則規定は、国民本位の行政サービスの観点から主客転倒している」と語気を強める。仮に免許証の発行・更新を廃止すれば、195億円以上の費用が削減できるという試算があり、コスト削減の効果も期待できるという。

 今後の行政サービス改革のあり方について、「免許証や資格証明書は原則不発行化して、身分証明については国レベルでの統一的な個人認証カードを導入したり、官同士のデータ連携強化と内部合理化を図ることで申請処理の効率化を進めるなど、国民の視点から改革の成果を見える形で実現すべきだ」と森田氏は考えを示した。

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