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» 2011年09月21日 12時00分 UPDATE

クラウド ビフォア・アフター:震災復興に向けた「融合産業」の創出

東北で「エネルギー×IT」「医療×IT」といった「融合産業」を創出し、被災地復興と日本の産業発展を目指す。

[林雅之,ITmedia]

 経済産業省は2011年8月11日、「産業構造審議会情報経済分科会中間とりまとめ」を公表した。ものづくり、サービス、コンテンツといったレイヤーを超え、ITと産業が融合する「融合産業」の創出を目指し、課題の抽出やアクションプランを策定している。また本とりまとめでは、震災復興におけるITとの融合によるアクションプランも示している。本稿では、震災復興に向け策定された3つの柱について、解説する。


 とりまとめは震災復興に向けたアクションプランとして、「柱1:被災地域における各種プロジェクト等の重点的・先行的実施」「柱2:クラウド活用等による中小企業再生支援等」「柱3:情報発信、リテラシー対応」の3つを挙げている。

被災地域における各種プロジェクト等の重点的・先行的実施

 1つ目の柱では、「IT融合による東北・被災地の復興」「医療の情報化」、そして「コンテンツの緊急デジタル化」を行う。

IT融合による東北・被災地の復興

 先行的にプロジェクトの実施が検討されているのは、「IT融合による東北・被災地の復興」である。ITやエレクトロニクスの重要な集積地域である東北・被災地域の強みを生かし、被災地のニーズを踏まえつつ、「自動車・交通×IT」「エネルギー×IT」「医療×IT」「農業×IT」などのITと産業が融合するプロジェクトを実行することに重点が置かれている。

 被災地の大学・研究機関や大手IT・エレクトロニクス企業、地場の中小企業やベンチャーの参画を促し、外国政府機関や外資系企業などの国際的な協力や連携も求める。また、東北地域の新たな産業創出も期待されている。

hayashimasayuki_4a.jpg IT融合による新産業創出プラン(出所:産業構造審議会情報経済分科会 中間とりまとめ 2011.8.11)

医療の情報化

 「医療の情報化」は、災害に強い医療情報管理を目指す。震災後、被災地の多くの医療機関で、紙のカルテや院内の電子カルテシステムが津波などによって流出・毀損し、適切な医療提供や健康管理が行えなくなるという問題が起きた。

 各医療機関の医療・健康情報などをデジタル化、かつクラウドなどを利用することで、すべての国民がどこでも適切な医療サービスを受けられ、災害にも強い医療情報を管理する情報基盤構築が検討されている。

hayashimasayuki_4b.jpg 医療情報化全体図(出所:産業構造審議会情報経済分科会 中間とりまとめ 2011.8.11

 政府は、すべての国民の医療情報を電子・データベース化する「どこでもMY病院(自己医療・健康情報活用サービス)」構想の検討を進めている。全国どこでも過去の診療情報に基づいた診療を受けられるとともに、個人が医療・健康情報を医療機関から受け取り、データを管理・活用できる、全国レベルの情報提供サービスだ。

 被災者の中長期的な心身のケアや、高齢者を中心とした慢性疾患への治療が必要な今、「どこでもMY病院」構想のモデル地域としての仕組みづくりや制度設計、クラウドを活用した共通基盤の構築整備が急がれている。

 なお、調査会社のシード・プランニングによると、2010年の医療分野におけるクラウド活用に関する市場規模は100億円未満であった。同社は2011年2月10日、これらが2015年には1164億円、2020年には1928億円まで拡大すると予測している。東日本大震災を背景に、医療分野におけるクラウドの活用はさらに進むと予想される。

コンテンツ緊急デジタル化

 「コンテンツ緊急デジタル化」では、東北・被災地域にデータ管理会社の拠点を設置し、震災や復興記録のデジタル化作業を行う。雇用創出や経済活性化を図るとともに、次世代への伝承や世界への情報発信や提言を行うことも狙いとしている。

クラウド活用等による中小企業再生支援等

 中小企業再生支援では、「クラウドサービスの普及による中小・ベンチャー企業支援」「被災企業の越境ECによる販路開拓支援」「インフラ等の損傷状況評価システムの導入支援」が挙げられた。

 新たなIT投資が困難な被災中小企業への、クラウドの導入による経営情報の基盤を確立できる仕組みの検討が進められている。また、東北地方におけるITユーザーとベンダ間のニーズのマッチング支援を重点的に実施していく。中小企業などをクラウドで支援する産官学の取り組みは一部始まっており、今後の広がりが期待される。

情報発信、リテラシー対応

 3つ目の柱では、「公共データの利活用を促進する官民連携の取組」「被災地におけるITリテラシー・情報リテラシー向上」が挙げられた。被災地は高齢者の比率が高く、被災者のIT利用を支援する環境づくりの構築が求められている。


 東北・被災地域が復興への道を着実に歩んでいくためには、被災地のニーズを踏まえ、復興特区の創設による税制優遇や規制緩和を行いつつ、産官学による産業の誘致と新たな産業の創出を目指すことが重要となる。

 「エネルギー×IT」「医療×IT」といった「融合産業」を創出することで、海外から産業を誘致できる日本の産業の集積地を目指し、東北の復興、さらには日本の産業の発展に寄与する仕組みづくりが急がれている。

著者プロフィール:林雅之(はやしまさゆき)

 林雅之

国際大学GLOCOM客員研究員(ICT企業勤務)

ITmediaオルタナティブ・ブログ『ビジネス2.0』の視点

2007年より主に政府のクラウドコンピューティング関連のプロジェクトや情報通信政策の調査分析や中小企業のクラウド案件など担当。2011年6月よりクラウドサービスの開発企画を担当。

国際大学GLOCOM客員研究員(2011年6月〜)。クラウド社会システム論や情報通信政策全般を研究

一般社団法人クラウド利用促進機構(CUPA) 総合アドバイザー(2011年7月〜)。

著書『「クラウド・ビジネス」入門


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