基幹の住民情報管理にクラウドサービスを採用した栃木県小山市、その理由は?

税や福祉など自治体にとっては非常に重要な基幹業務に関わる住民情報管理システムに、富士通のクラウドサービスを採用した。

» 2015年02月25日 08時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]
栃木県小山市のホームページ

 栃木県南部に位置する小山市は、これまで庁舎内で運用してきた住民情報管理システムを富士通の自治体クラウドサービス「FUJITSU 自治体ソリューション INTERCOMMUNITY21統合型クラウド基盤」に移行し、運用を開始した。住民情報管理システムは、税や社会福祉など自治体にとって非常に重要な基幹業務に関わるものだ。

 小山市では1978年に汎用機を導入、1980年には住民税や固定資産税証明書発行システムを稼動させ、1991年には全国でもいち早く汎用機の電子決裁方式の財務会計システムを構築、1996年クライアント/サーバ方式の福祉総合システムを導入するなど、ITによる業務の効率化やサービスの向上に取り組んできたという。2014年度が最終となる「第6次小山市総合計画」や「小山市情報化基本計画」ではICT活用による新たな仕組みづくりを掲げ、情報システムの見直しと刷新を進めきた。

 小山市情報化基本計画では情報システムの見直しと刷新を目指した背景として、システムの肥大化や増大化に伴う多大な運用コストを挙げている。「長らくメインフレームによるホストコンピュータを利用してきましたが、運用の効率化に加えて事業継続の観点からもクラウドサービスの採用を以前から検討していました」(IT推進課)という。ホストコンピュータが設置されている庁舎は老朽化が進み、特に災害時の事業継続性の確保が大きな課題になっていたとのことだ。

小山市役所(同市サイトより)

 住民情報管理システムの更改にあっては、オンプレミス型やデータセンターを利用したアウトソーシング、クラウドサービスなどの運用方式を検討。ホストコンピュータで富士通製のメインフレームを運用してきた背景などを踏まえ、複数の提案の中から富士通のサービスを採用した。

 新たな住民情報管理システムは、INTERCOMMUNITY21統合型クラウド基盤をベースに同社の「FUJITSU自治体ソリューション MICJET MISALIO 住民情報ソリューション」や「FUJITSU自治体ソリューション MCWEL 介護保険 V2」などのソリューションを同社のデータセンターで運用する。データセンターは高度なセキュリティシステムと免震設備や新ガス消火設備、変電所からの2系統受電による停電対策などが施され、西日本のデータセンターと1日1回のバックアップも行う。同氏と富士通のデータセンター間の通信回線も異なるルートで冗長化し、主回線が利用できない場合にはもう一方の回線へ自動的に切り替わるなど、小山市が必要とした事業継続性を確保した。

新システムの利用イメージ。システム以外にも職員が行っていた住民向け発信文書業務を富士通のプリントセンターにアウトソーシングして業務効率化を図っている

 これによって50以上の業務システムを利用していた住民情報の管理が集約され、複数の業務処理画面の同時起動やデータベースの一元化を実現した。例えば、従来は業務処理ごとにデータベースを検索する必要があったが、新たな仕組みではいったん住民税情報照会画面で対象者を特定すれば、住民税情報が表示された状態で、税の徴収簿や年金の資格情報などの住民情報を参照でき、業務効率化と住民向けサービスの迅速化が図られている。

 システムの運用面でも従来は、職員が行っていた夜間のデータバックアップやシステムのレベルアップ、法定停電対応の業務なども不要になった。従来は毎日の業務終了後に2、3時間ほどかけてデータのバックアップ処理を行い、法定停電では約1、2時間を費やしてホストコンピュータの一時停止と再立ち上げなどを職員が実施していたという。コンピュータ室にあてていた市庁舎内の約50平方メートルの部屋は、今後は会議室や事務室として市民向けサービスに活用していく。

 新システムは2014年12月に稼働し、小山市では今後5年間でTCOの約2割と年間電力使用料金の約3割を削減できると試算している。IT推進課によれば、クラウドサービスは既に市の施設管理などのサービスでは採用しているものの、本格導入は初めて。「住民向けサービスを安定して提供していくためにも今後もクラウドサービスを活用していきたいと考えています」とコメントしている。

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