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» 2015年05月18日 07時30分 UPDATE

先生もびっくり? 中学1年の意外なiPadの使い方

横浜市の桐蔭学園では4月に導入したiPadを中学校と中等教育学校1年生の授業で利用している。リテラシー教育のヒントになる生徒の意外な使い方が見えてきたという。

[國谷武史,ITmedia]

 進学校・スポーツ強豪校として知られる桐蔭学園(横浜市青葉区)は、4月に入学した中学1年生を対象にiPadを授業で活用するICT教育をスタートさせた。利用開始から約1カ月が経過し、生徒らのITリテラシーの育成に役立つ様々なヒントが見えてきたという。

ICTによる協働学習の環境

toingakuen01.jpg 授業風景(桐蔭学園のFacebookページより)

 iPadの導入は、文部科学省が2011年に発表した「教育の情報化ビジョン」で掲げる、2020年までに全ての学校で1人に1台のタブレットを導入したICT授業を実現するという目標に対応したものだ。桐蔭学園では生徒が少人数のグループで学習内容を相談したり、発表したりすることで学ぶ力を養う「アクティブラーニング」に取り組み、iPadの活用もその一環となる。

 導入規模は生徒向けの約500台と教員向けの約140台の合計約640台。生徒にはiPadを貸与し、自宅への持ち帰りも許可している。日中の利用に耐えるバッテリ容量や導入コスト、多くのデータを保存できるメモリ容量や見やすい大画面といった条件を満たす端末として、iPad Air 2のWi-Fi 64Gバイトモデルを選択した。モバイル端末の管理(MDM)にはアイキューブドシステムズのCLOMO、セキュリティ対策にはデジタルアーツのi-Filterを採用した。

 アプリはドキュメント作成のPagesや表計算のNumbers、プレゼンテーションのKeynote、動画作成のiMovieなどを利用するほか、協働学習などにはLoiLoの「ロイロノート」を活用している。生徒が自分のアイデアをまとめたり、生徒同士や教員と共有したりすることが簡単にでき、オフラインでも利用可能なことから、特に重宝されているという。

 教室に電子黒板と無線アクセスポイント、Apple TVによるシステムを設置して無線ネットワークを構築。各iPadが接続され、生徒や教員との間で画面やデータを共有し、電子黒板にも投影する。授業での具体的な利用方法は、教員の裁量に任されているという。例えば、生物の授業では生徒がiPadのカメラで植物を撮影して、教員に種類を質問したり、技術の授業では写真から設計図を作成する際に、教員がiPadに書き込んだアドバイスを電子黒板に表示したりといった具合だ。

toingakuen04.jpg 技術科目の製図の授業での利用イメージ

リテラシーをどう育む?

 思春期真っ只中の生徒たちにとって、iPadのようなツールは実に魅力的だろう。生徒がITツールを安全に活用できるようになるためにどうすべきか――大人にとって実に悩ましい問題だ。

 桐蔭学園中学校男子部の山口大輔教諭は、「好奇心から安易にカメラで撮影した画像をSNSなどにアップしてしまえば、肖像権の侵害といった大きな問題になりかねず、先に肖像権とは何かといったことを伝えないといけません。安全に利用していくための制限や管理と、ICTの利便性を体験していけるバランスをどう確保するかがポイントになります」と話す。

toingakuen02.jpg 技術科目を担当する山口大輔教諭

 例えば、iPadを使ったコミュニケーションは生徒同士では許可しておらず、生徒と教員の間だけに限定している。メールなどツールの正しい使い方を先に学ぶ必要があるとの考えからだ。また、インターネット検索はGoogleに限定している。Googleやi-Filterのフィルタリング機能を利用して、生徒が不適切なデータに接することなく安全に情報を得られるようにするためだという。iPadに登録されているアカウントも生徒には通知しておらず、iCloudなどのサービスは利用できない。

 「校内では学校のセキュリティシステムや各種の対策ツールによって生徒を守ることができますが、自宅など学校以外の場所ではどうしても制約があります。生徒の利用状況を全て学校が把握することは事実上不可能なので、後からでも利用状況を把握でき、適切な対応が講じられるようにしています」(山口教諭)

 実際に運用を開始してみると、教員にとって意外な発見が幾つかあったという。例えば、生徒がiPadに登録されているMDMの構成プロファイルを削除してしまうという出来事があった。

 MDMの構成プロファイルは削除不可にも設定できるが、桐蔭学園では諸事情から消去可能にしているという。構成プロファイルを削除すると、iPadが初期化されると同時に、消去された日時などがすぐに管理者へ通知されるようにしている。

 「消去した生徒も驚いたようですが、そもそもiPadを管理する仕組みを理解していないと、消去操作はできません。生徒がここまでできてしまうことを知りました。構成プロファイルを削除すればiPadが使えなくなるという体験を通じて、生徒も何をしてはいけないのかをいうことを学べると思います」(山口教諭)

 また、山口教諭がWebサイトへのアクセス状況やフィルタリング機能でブロックしたWebサイトの状況を調べたところ、約1割のWebサイトがブロックされていたことが分かった。フィルタリング機能でブロックしたWebサイトのほとんどは芸能ニュースやブログだったという。「こうしたWebサイトの閲覧が悪いわけではありませんが、学校から貸与されたiPadでの閲覧は適切ではないと理解してくれたと思います。フィルタリングはブラックリストで行っていますが、ホワイトリストで厳しく制限すればこうした実態は把握できません」(山口教諭)

toingakuen03.jpg iPadにインストールされている学習用アプリ。それぞれの活用を進めている

 生徒に貸与しているiPadは3年間利用される予定。製品のライフサイクルやiOSのアップデートにも対応しやすいという。来年度に入学する生徒への貸与や高校での取り組み、また、生徒のITリテラシーの成熟度やその度合いに応じた教育を今後どのように実施するについては、教員のICT教育委員会でこれから検討していくという。

 山口教諭は、「大人の常識では思いも寄らない生徒たちの使い方は、教員にとっても良い刺激になり始めています。生徒の新しい使い方に対応できる新しい教育の内容や方法を工夫していきたいですね」と語っている。

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