改めて問う「クラウドの本質的なメリット」Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2015年06月01日 17時00分 公開
[松岡功ITmedia]
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AWSが提供する本質的なクラウドメリット

 では、企業がクラウドを利用する本質的なメリットとは何か。亦賀氏はそれを説明するために、グローバルなIaaS市場で競合他社を大きくリードしているAmazon Web Services(AWS)を引き合いに出した。

 「AWSの事業戦略はAmazon.comのネット販売と同様に“ハイボリューム・ローマージン”を貫いており、サービスの内容や価格についても継続的なイノベーションを図っている。インテグレーターなどとのパートナーエコシステムも広がっており、ユーザー企業にとってはクラウドメリットを分かりやすく提供してくれる存在となっている」

 こう説明した同氏だが、「ただ、基本的にベストエフォート型のサービスであることや、初期投資が不要で安価だといわれる従量課金も実は使えば使うほど費用がかさむことを理解しておく必要がある」と注意点があることも付け加えた。

 ちなみに、グローバルなIaaS市場における有力プロバイダーの競合状況について、米Gartnerが2015年5月18日(米国時間)に「マジック・クアドラント2015年版」を発表したので、図2に示しておく。図の見方および2014年版については、1年前の本コラム「激戦区IaaS市場の行方」で解説しているので参照していただきたい。

photo 図2 グローバルなIaaS市場の「マジック・クアドラント2015年版」(出典:米Gartnerの資料)

最大のポイントは「標準サービスであること」

 さらに、亦賀氏は日本のIaaS市場における興味深い調査結果も明らかにした。図3がその内容だ。まず左側の図は、ユーザー企業がIaaSを選ぶ際の重要項目を挙げたものである。最大のポイントは、2012年も2015年も「プロバイダー自身による本質理解」がトップに挙がっていることである。

photo 図3 日本のIaaS市場におけるユーザー企業の調査結果(出典:ガートナージャパンの資料)

 同氏はこの結果について、「これはすなわち、プロバイダがクラウドの本質を理解していないと、ユーザー企業が不信感を抱いているということだ。2012年から3年経過してもまだこの不信感がトップに挙がってことを、プロバイダーは深刻に受け止めるべきだ」と警鐘を鳴らした。

 一方、右側の図は、日本企業における主要IaaSの採用状況(採用率)を示したものである。亦賀氏によると、「日本独自のクラウドサービス市場におけるマジッククアドラントも数カ月後に発表する予定」だという。その際は、IaaSとともにガートナーが説く「デジタルビジネス」を支える基盤となっているかなども考慮に入れるとしている。

 さて、結論。つまりは、企業がクラウドを利用する本質的なメリットとは何なのか。「速い、安い」「ハイパフォーマンスでスケーラブルなIT環境を利用できる」「豊富なAPIによってサービスの連携が柔軟に行える」「ビジネス革新に貢献する」といった点とともに、亦賀氏は最大のポイントとして「標準サービスとして利用できることが起点となっている」ことを挙げた。すなわち、この起点がすべてのメリットを生んでいるということだ。

 筆者も全く同感である。さらに付け加えておくならば、亦賀氏が紹介した図3の左側のランキングにおいて2位および3位に挙がっている項目から、「プロバイダはユーザー企業に、自らのクラウドサービスの方向性やビジネスメリットを明確に示すべし」ということだ。例えば、最近になって「お客様のニーズはハイブリッドクラウドにある」との説明をプロバイダーから聞くことが多くなったが、果たしてそれでユーザー企業のIT利用における将来像を描き、提案できているのか。改めて問いかけておきたい。



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