トラック製造大手の三菱ふそうがIT投資に本腰を入れ始めた。コネクテッドカーを軸にした新サービスの開発や、スマートファクトリーへ24億円の投資を表明するなど、生き残りへの強い思いが伺える。
「2020年までに自社のデータセンターのサイズを数倍に」「年間で10億を超えるメッセージを処理し、ペタバイト級のIoTデータに対応する」――。自社のIT基盤について、このようなアグレッシブな目標を立てる自動車メーカーがある。独ダイムラー・グループの三菱ふそうトラック・バス(以下、三菱ふそう)だ。
同社は、2017年7月から、社員や顧客、機器、トラック、工場をシームレスに接続することで、生産性を高め、付加価値の提供を目指す「Connected X」戦略を進めている。全ての工場をつなげ、2020年までに10万台のトラックをインターネットにつなげるという。
UberやGoogleなど、これまで自動車とはあまり関わりがなかった業界が、自動運転などを契機に次々と参入してきている今、トラックの製造や販売だけではなく、デジタル化による付加価値で差別化を図ろうというのが、三菱ふそうの戦略だ。
4月24日に開かれた報道関係者向けイベント「FUSO Digital Forum」で同社CIOのルッツ・ベック氏は、Connected Xをプロダクト、プロセス、人材育成(採用)という3つの柱で進めていくと話した。
最近では、世界初となる量産型電気トラックを展開するなど、新たなプロダクトの開発を進めているほか、トラックに搭載したデジタルタコグラフ(運行記録用計器)などから得られたデータを使い、車両情報を一括管理する「Truckonnect(トラックコネクト)」を展開している。
ユーザーは、稼働しているトラックの位置や燃費情報などをリアルタイムで把握できるほか、急発進や急ブレーキといった情報から、運転の安全性を評価したり、車両故障につながる機能低下を感知し、カスタマーセンターと連携して整備予約を行ったりすることができる。こうしたデータの活用は「自動車業界ではトップだと思っている」とべック氏は述べる。
Truckonnectは、MicrosoftのIoTソリューション「Microsoft Azure IoT Hub」や、ホートンワークスのデータ基盤、そして分析面では、デロイトトーマツコンサルティングの協力を得るなど、さまざまな企業と提携することで実現している。しかし、その上で自社でも研究機関を持つべきというのがべック氏の考えだ。
「業界内でテクノロジーリーダーになるためには、パートナーだけではなく自社でも研究を進めなくてはならない。われわれは、BotLabというロボットの研究所を立ち上げており、今後はスマートファクトリーやブロックチェーン活用も見据えて動いていく」(べック氏)
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