BPMプロジェクト成功の鍵[1] - コアアプローチBPTrends(10)(2/2 ページ)

» 2007年08月27日 12時00分 公開
[著:デレク・マイヤー, 訳:高木克文(日本能率協会コンサルティング),@IT]
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コアアプローチ

 BPMプロジェクトの成功を確実なものにするには、反復可能なBPM展開の方法論の開発が極めて重要である。本来、方法論は一連のステップであり、それに従って進めば、成功確率を劇的に高めてくれるものだ。方法論を、成功のための処方せんととらえてほしい。

 このBPM展開方法論全体の一部として、「BPMプロジェクト展開フレームワーク」がある。このBPM展開方法論の構成要素は、個々のBPMプロジェクトのマネジメントと展開をタスクとする人々のガイドラインとなるのだ。

 この構成要素は、以下の事柄の確実な遂行に重点を置く。

  • プロジェクトへの取り組みが適正な手順で行われること
  • プロジェクトが、決められたビジネス目標に即したものであること
  • 適切なスコープ設定とリソース配分が行われること
  • 入手できるBPMテクノロジの効果的活用が図られること

 BPMプロジェクト展開フレームワークによれば、まず、事業上のメリットが明確で、比較的シンプルかつ達成可能なプロジェクトに的を絞るべきである。スコープを限定した短期間のプロジェクトに集中することで、チームのスキルと経験を蓄積する一方、BPMアプローチの現実的効果を実証してみせるのだ。

 例えば、新入社員雇用に伴う“オンボーディング”プロセス※1における標的は、人事部門のニーズである。人事部門では、個々の新入社員に関し、机の準備、PCの配布、さらには適切な個人記録の整備を確実に行わなければならない。そのため、オンボーディング・プロセスには、高いトレーサビリティと社内他部門への明快な連絡を可能にすることが求められよう。

※訳注1:オンボーディング・プロセス=新入社員の会社に対する理解を深めるために実施されるオリエンテーションプロセス

 これは、BPMプロジェクト展開フレームワークの重要な側面である。BPMプログラムをさらに必要性の高い業務に展開する前に、その成功事例を示し、社内に信頼感を植え付けることができるからだ。

 図1にBPMプロジェクト展開フレームワークの概略を示すが、これを理解するためには、1つ1つのステップを熟知することが重要である。

図1 BPMプロジェクト展開のフレームワークは、BPMステップそのもの

BPMプロジェクト展開のフレームワークは、BPMステップそのもの

 まず、機能横断的に組織上層部で構成される「推進委員会」は、ガバナンスの指針が適切に執行されるよう、フレームワークと進行中の個別プロジェクトを監視する。推進委員会を設置するメリットは、敬意を持って見られるビジネスセントリックの機構が定着することだ。そこでは、客観的な視野を持ち、的確な課題の優先順位設定を行える。また、組織としての改革シナリオが明確に描かれ、ビジネスオーナーシップや、IT部門との効果的なパートナーシップが保証されることにもなる。端的にいえば、推進委員会が、初期プロジェクト選定の公式認証を行うことになるだろう。

 プロジェクト・スコープに関する合意形成ができれば、成果を評価するための尺度とベンチマークを含めた、現実的なビジネスケースの作成が求められる。エグゼクティブのスポンサーシップを取り付けるとともに、このアプローチの価値を検証するためだ。特に、最新のBPMテクノロジがもたらすメリットと機能特性を正確に示さなければならない。

 エグゼクティブ・スポンサーシップは、絶対必要条件である。克服すべき政治的ハードルが、必ず待ち構えているからだ。エグゼクティブからプロジェクトに対するコミットメントを得られたならば、コアBPMプロジェクトチームの編成を行う。

 プロジェクトを実施する前に、プロセスの正確な把握と改善機会の探求のための時間を持たなければならない。この作業は重要である。従来どおりのシステム/プログラム上の問題回避法や非効率性を残したまま、既存アプローチの自動化に駆られる人間もいるからだ。

 プロセスの把握が完了すれば、選定したBPMスイートを用いたソリューションのプロトタイプを作成し、そのソリューションが真に求められる要件を満たしているかどうかを確認するために、ユーザーのフィードバックを求める。これに際しては、関連して行う組織的変更に周到な注意を払わなければならない。組織的変更がうまくいかなければ、ソリューションの受け入れに障害をもたらすことになるだろう。

 BPMの実装が完了すれば、成果の測定と修正を継続的に行い、プロセス実行の反復とBPMへの整然とした適応を助長するカルチャーの醸成に努める。そして最後に、達成されたベネフィットを発表し、全社的なキャンペーンを推進するのだ。

(続く)

Original Text

Derek Miers, "The Keys to BPM Project Success." BPTrends, January 2006


著者紹介

デレク・マイヤー(Derek Miers)

個人として活動する業界アナリスト。BPMI.org.の共同議長。最近では、最新のBPM環境に関する総合レビューを完成した(「BPMスイート」 BPTrends刊)。


訳者紹介

高木克文(たかぎ かつふみ)

(株)日本能率協会コンサルティング、テクニカル・アドバイザー。日本BPM協会 ナレッジ研究部会メンバー。グローバル・コンサルティング、リーダーシップ開発研修、ベンチマーキング・プロジェクトなどを中心に活動。戦略、組織、リエンジニアリング、学習する組織、ベンチマーキング、コンサルティングビジネスなどに関する著書、訳書、論稿、多数。


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