コラム
» 2010年03月01日 11時00分 UPDATE

小寺信良の現象試考:うっかりしてると懲役刑? 拡がるワイヤレス通信機器と法のギャップ (1/2)

一般的に利用される「ワイヤレス」は無線LANに限った話ではない。AV機器の無線化は着実に進みつつあるし、無線のヘッドセットやマウスなど珍しいものではない。ただ、手元のワイヤレス機器をウッカリ使ったら懲役刑ということもあり得るのだ。

[小寺信良,ITmedia]

 2010年は、密かにワイヤレスの年なのではないかと期待を寄せている。すでにPCユーザーにとっては、無線LANはもはや当たり前の通信手段であり、ノートPCにいちいち有線でネットワークケーブルをさして使っている人は少ないだろう。そして高速化する無線技術は、そろそろAV機器にも波及しそうである。

 現在テレビをネットに接続している人は、どれぐらいだろうか。2008年の調査では10%程度という数字が出ているが、現在はまあ多少広がったとしても、おそらく15〜20%ぐらいのものではないかと思われる。つながないにはいろいろ理由はあるだろう。例えばつなぐメリットが見えない、といったことだ。しかし物理的な面では、そもそもテレビに有線でLANを接続できる環境になってない、ということも大きいはずである。

 AV機器が無線LANに対応すれば済む話かといえば、そうではない。AV機器は映像・音声をケーブルで引き回す必要があるため、置き場所が制限される。今でこそHDMIの普及で1本で済むようになってきているが、テレビ台の下にDVDプレーヤーやレコーダを置くのは、そこにあったほうが便利だからではない。そこにおいた方が、配線がすっきりするからだ。

 ではレコーダからテレビへの結線が、完全にワイヤレスになったらどうだろう。AV機器の置き場所は、自由にレイアウトできる。DVDやBDを入れ替えるために、いちいち席を立ってテレビの下にしゃがみ込むより、手元に置いたほうが使いやすいに決まっているのだ。

 このようなAV機器の結線をワイヤレスに置き換えるものとして、WiHD(WirelessHD)やWHDI(Wireless Home Digital Interface)といった規格が立ち上がっており、すでに米国では第一世代の製品がリリースされはじめている。こういうものは、やはり米国が一番早い。

電波出力が問題?

 しかし、米国からこれらの機器を買ってきて日本で使うには、なんとも難しい問題があることが分かった。その発端となったのは、小さなBluetoothヘッドセットだ。実は今年1月に渡米した際、JVCのビデオカメラがBluetoothに対応したということを知り、いずれテストしなければならぬということで、Bluetoothのヘッドセットを買った。それをブログに書いたところ、日本でそれを使用するのは電波法違反ではないか、という指摘を受けた。

 トランシーバーなどは、使用周波数や電波出力の問題があって、海外製のものは法律上日本では使えないということは、ご存じの方も多いだろう。筆者も別にトランシーバーには詳しくないが、海外ロケに行く撮影部の人から話を聴いていて、事情は以前から知っていた。しかしあれは出力が大きいものだから問題なのだろうと思っていた。例えば車でFMを聴きながら走っていると、たまにトラックの無線が飛び込んでくることがある。あれなんかは身近に起こる電波障害の例だろう。

 Bluetoothのような小出力の無線は法的にどうなっているのか、総務省総合通信基盤局電波部電波環境課に取材を行なった。電波を発する機器というのは、法律上は「無線局」となるそうである。無線局と聞くと、普通はアマチュア無線とかの規模を連想するが、微弱電波でも無線局なのである。

 無線局なるものは、登録と免許がいるというのがデフォルトになっている。しかしその中で、出力の小さいものに関しては、免許や登録が必要ないレベルのものが3段階で存在する(総務省 免許及び登録を要しない無線局)。

  • 1 発射する電波が著しく微弱な無線局 ―― ラジコンに使うもの、ワイヤレスマイクなど
  • 2 市民ラジオの無線局 ―― 特定周波数の範囲で、空中線電力が0.5W以下。ただし現在はほとんど使われていない
  • 3 小電力の特定の用途に使用する無線局――コードレス電話や特定小電力無線局に該当するもの

 Bluetoothは1なのではないか、と思ったが、総務省によれば、Bluetoothという規格であるかどうかが問題ではなく、個々の機器の電波出力で1なのか3なのかが変わるという。3に該当する場合は、次の条件を満たしている必要がある。

(1)空中線電力が0.01W以下であること。

(2)総務省令で定める電波の型式、周波数を使用すること。

(3)呼出符号または呼出信号を自動的に送信しまたは受信する機能や混信防止機能を持ち、 他の無線局の運用に妨害を与えないものであること。

(4)技術基準適合証明を受けた無線設備だけを使用するものであること。

 (4)にある技術基準適合証明とは、俗に「技適マーク」と呼ぶそうである。郵便マークの上に電波のギザギザがあるやつだ。(1)から(3)を満たしていると認定された機器は、この技適マークを付けることができる。認定して技適マークが発行できるのは、総務大臣の登録を受けた11の法人に限られる。

 一般消費者にとっては、その機器がどれぐらいの電波出力を持つものなのかは、知る術がない。唯一判断できる要素は、この技適マークがあるかどうか、という点のみである。しかし1の「発射する電波が著しく微弱な無線局」に該当する場合は、技適マークすら必要ない。したがって、微弱なので付いてないのか、認可されてないから付いてないのかは、消費者には判断できないことになる。

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