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» 2012年02月20日 12時08分 UPDATE

本田雅一のTV Style:4Kテレビとデジタルカメラの相性

テレビを取り巻く技術の面では、デジタル写真への対応をさらに高めていく準備は整っている。先日開催された「CP+2012」では、いくつかの興味深い提案が見られた。

[本田雅一,ITmedia]

 先日、開催されたカメラ映像機器工業会(CIPA)主催のトレードショー「CP+2012」を訪ねた。昨年末、タイの洪水による部品・組み立て工場の操業停止の影響を受け、発売が遅れていた新製品も含め、この春に一気に新製品が集中。1月の「2012 International CES」で披露された製品も含め、大盛況のイベントだったことは、すでに多くのニュースで伝わっているとおりだ。

ts_cpplus01.jpgts_cpplus02.jpg 2月9日〜11日に開催された「CP+2012」の様子。来場者数は4日間合計6万5120人と、昨年(4万9368名)を大きく上回った

 これら展示の中で興味深く見ていたのが、”写真を楽しむ方法”や”写真を展示する方法”についてだ。もちろん、作品や写真の品位を訴求するサンプルの掲示に使われているのは、紙へのプリントだ。印画紙へのダイレクトプリントもあれば、インクジェットプリンターによる出力など、さまざまな方法が使われているが、紙へのプリントという点では変わりはない。

 しかし、この数年、デジタルフォトスタンドがたくさん売れるようになってきたことからも分かるとおり、紙へのプリントというプロセスを経ず、デジタルデータをデジタルディスプレイデバイスに直接表示して写真を楽しむ人も増えてきた。いや、以前からほとんどの写真を印刷せず、撮影だけしてPCの中だけ(あるいは写真共有サービスにアップロードしてみんなで楽しむ。いずれの場合も、表示はPCやスマートフォンの画面)で楽しんでいるという方も多いのではないだろうか。写真を表示する手段としては、すでに紙へのプリントよりも、デジタルディスプレイの方が見られる回数の面でも多くなっているのかもしれない。

 ところが、これだけデジタルカメラが普及した(というよりも、今ではカメラといえば通常はデジタルなわけだが)にもかかわらず、テレビとデジタルカメラの相性を高める努力は、あまり進められて来なかった。

 テレビの高精細化は進み、フルHD解像度が当たり前。リビングに置かれるテレビ画面のサイズは40インチ台が主流になった。せっかく撮影した写真なのだから、みんなで大画面で見たいというニーズはあるはずなのに、テレビ(あるいはBlu-ray Discレコーダーなど写真ストレージ機能を持つ装置を含め)のデジタル写真をサポートする機能は、機能として存在するものの、力の入った機能とはいいがたいものが大半である。

 と、商品としての作り込みには不備が残るものの、テレビを取り巻く技術の面では、デジタル写真への対応をさらに高めていく準備は整っている。あとは作り込みだけだ。

 例えばHDMIには、表示するコンテンツがどのような素性のものかを示す属性を伝える機能がある。通常は動画を表示するわけだが、”これは写真だ”とテレビに明示できるため、対応するテレビならば静止画を表示するのに適した画質モードへと自動的に切り替わる。動画でも静止画でも”高画質”なモードなら、どれも同じじゃないの? と思うかもしれないが、動画と静止画では、画像処理や調整の最適値が異なる。しかも、最近のテレビはシーンを適応的に判別して画像処理を行っているので、静止画としての写真をそのままでは正しく表現できない場合もある。

 仕組みはあるのだから、もっとデジタル写真との相性を、画質の面でも追求すべきだろう。各社とも写真モードは作っていても、まだ作り込みは甘い。なんてことを思っていたら、CP+ではソニーとペンタックスのブースが4K×2Kディスプレイを用いて写真を展示していた。ソニーは民生用テレビではなかったが、ペンタックスのほうは東芝“レグザ”の4Kテレビ「55X3」を用いていた。

ts_cpsony01.jpgts_cppen01.jpg 「CP+ 2012」のソニーブース(左)とペンタックスブース(右)

 ソニーは静止画向けにキャリブレーションを行っていたのだと思うが、ペンタックスの場合は、そのまま市販の「55X3」を使っているだけだという。画の作りは素直でテレビ特有のクセはなく感心したが、やはり注目は精細感だろう。

ts_pen01.jpg 4000万画素(7264×5440ピクセル)のペンタックス「645D」で撮影した画像を、東芝のQFHDパネル(3840×2160ピクセル)搭載テレビ「55X3」を使って表示するデモ。東芝レグザのキーマン、本村裕史氏が自ら来場者の質問を受けていた

 人間の眼は、視野角1度あたり50Hz程度ぐらいまでしか高域情報を認識できないという。これは網膜の解像度限界に達するから……と難しい話になるが、横方向の画素数がおよそ4000あるならば、視野角にして80度以上になるところまで近付かないと、画素を意識することはない……と、大まかに解釈していい。

 ザックリと感覚的に言うと、4K2Kテレビならば画面を視野全体に入れるぐらい近付いても、美しく高精細な映像を楽しめるということだ。また動きによる解像度低下もないため、キレイな写真では印刷物のような精密感を感じる。

 ところが、このようなことをCP+の取材会場で話をしていたら「デジカメの画素数は1000万を超えているのに、テレビは4K2Kでも800万画素。テレビに表示するなんてもったいない」という意見を聞いた。しかし、これは全くの誤解だ。

 一般的なデジタルカメラの○○画素と、テレビの画素数ではその意味が違うからだ。むしろ、今後の発展性も考えるとデジタルカメラの性能を生かすには、テレビなどのディスプレイを高精細、広色域にする意味の方が大きい。次回はそうした話をすることにしたい。

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