コラム
» 2012年12月10日 20時18分 UPDATE

本田雅一のTV Style:2012年のテレビ(1)、アグレッシブに攻めた東芝レグザ

2012年の国内向けテレビ業界で、真っ先に名前を挙げたいのは東芝だ。テレビ市場の冷え込みなどネガティブなニュースが続いた今年、4K2Kや全録など“大きな声を上げているのは東芝ばかり”という状況が続いた。

[本田雅一,ITmedia]

 今年も終わりに近づき、年末商戦もラストスパートという時期に入った。今年の春ごろは、テレビ市場の冷え込みに加え、ここ数年、使いやすさと画質のバランスという面でもっとも納得感のあるテレビを作っていた日立の生産撤退(外部委託)、さらには電機メーカーの業績不振とネガティブな話題が続いた。今後、テレビに対する投資が適正に行われないのでは? との観測もあった。

 過去にどんなに素晴らしい製品があったとしても、今年、ラインアップに存在しなければ手に入れることはできない。メーカーからは「最上位モデルを出せるかどうか、まだ最終的な判断はできていない」といった声も聞かれ、4K2Kや録画機能の充実、タブレットやスマートフォンとの連動など、“大きな声を上げているのは東芝ばかり”という状況が続いた。

ts_zanmai06.jpgts_toshiba4K13.jpg レグザ「Z7シリーズ」(左)、来春に登場予定の4K対応テレビ(右)

 しかし、夏を過ぎて年末商戦が近付き、「IFA 2012」「CEATEC JAPAN 2012」といった国際展示会の前になってくると、品質あるいは機能と、多様なアプローチで進歩した製品が見られた。製品全体の低価格化が進む中で、新機能や向上させた品質を押しつけるのではなく、しっかりと”顧客価値”として提供し、理解してもらうと努力している点では、以前よりも進歩したといえるかもしれない。ということで、年内いっぱいをかけて今年のテレビ業界を振り返ってみることにしよう。

「ざんまいプレイ」と「TimeOn」

 今年の国内向けテレビ業界で、真っ先に名前を挙げたいのは東芝だ。東芝は、画質、機能、先進性という3つの要素に対し、過不足なく全方位で取り組み、多様なテレビの利用スタイルに対して幅を持たせた全方位の開発/マーケティングスタイルを貫いた。

 東芝はまず、昨年末に先鞭を付けた4K2Kパネル採用の廉価版を発売し、そのパネルを生かすためにゲームメーカーと接続検証をしたり、カメラメーカーとのコラボレーションにより写真表示画質の向上を図るなど、新しいことに取り組んだ。本格的な4Kアップコンバート機能を持つ新エンジン「レグザエンジンCEVO 4K」も開発中。フルHDテレビ上位モデルの絶対的な画質では他社に一歩譲る面もあるが、メーカー全体としての取り組みはかなりアグレッシブだ。

 そうしたアグレッシブさで次世代テレビに挑戦しつつ、機能面では“全チャンネル録画”(タイムシフトマシン)の価値を高めた。使い勝手の向上に加え、価格面を含めて一般ユーザーも手を出せる製品に昇華している。

ts_zanmai05.jpg Z7シリーズは、タイムシフトマシン、通常録画ともにUSB外付けHDDを使う

 東芝が年末商戦の目玉として用意したレグザ「Z7シリーズ」は、地上デジタル放送を全チャンネル録画するチューナーを内蔵しながら、HDDを内蔵していない。もちろん、内蔵した方が簡単に使えるが、容量は固定され、価格も上がってしまう。「ならば、外付けのHDDを内蔵HDDと同じ使い勝手にすればいいじゃないか」という発想で生まれたのが、HDDレスの全番組録画機能を持つZ7だ。

 このあたり、もちろん抵抗感を持つ一定の消費者層もいるだろうが、テレビを買った後でもHDD容量を追加できることや、低価格なサードパーティー製品の存在を考えれば、思い切って外付けのみとしたことを歓迎する消費者は多いだろう。

 さらに、全番組を録画してタイムマシンのように戻れるだけでなく、「ざんまいプレイ」と名付けた、テレビ放送コンテンツをしゃぶり尽くす機能を加えた。自分の見ている番組を起点に、次々に”見たいかも?”という番組を発見できる「ざんまいプレイ」を使うと、それまで気付かなかった興味深い番組が、自分の知らない時間帯に放送されていたことを知る。

ts_zanmai01.jpgts_zanmai02.jpg リモコンの「ざんまいプレイ」ボタンを押せば、ジャンル別の番組一覧に加え、いつも見ている番組や、電子番組表の急上昇ワードといった切り口で話題の番組を見つけられる

ts_zanmai03.jpgts_zanmai04.jpg 気になるキーワードを登録しておけば、関連する番組をリストアップしてくれる(左)。「ほかにもこんな番組」の画面。知らなかった番組と出会える仕組みが盛り込まれた(右)

 EPGに現れる頻度が急上昇したキーワードを追いかけたり、好きなスポーツの試合を見逃したり、あるいはドラマの新シリーズ開始を知らなかった、なんていう悔しい思いをしなくて良いだけで価値があるが、東芝の取り組みで感心したのは、発売後にさらに「TimeOn」(タイムオン)というクラウドサービスを追加提供し始めたことだ。

 詳細は実際に体験してもらうのが一番だが、簡単にいえば最近話題の番組メタデータに全番組録画を組み合わせ、ユニークな価値を提供するものだ(みどころシーン再生)。番組内容を細かくコーナーごとに区切った情報を時間軸に沿って参照し、シーンにジャンプできるのも便利だが、それだけにとどまらない。何らかのシーン――例えばサッカー日本代表のシーンを見ている時に、関連するキーワードを選ぶと、録画されている番組の中から日本代表に関連するシーンがリストアップされる。さらに絞り込み、誰のインタビュー、あるいは試合結果などを遡るなど、1つのシーン(番組コーナー)を起点に、次々とほかの番組のシーンを楽しめる。

ts_timeon02.jpg 「気になる!シーンリスト」

 テレビの情報番組などは、すべてを記録し、キーワードやタイトル名を付けて補完すると、それ自身がデータベースのようになる。単にHDDにたくさんの番組をため込むだけでなく、その先にある楽しみ方、活用するところにまで踏み込んだ。

 その上、タブレット端末を連動させ、新しいユーザーインタフェースや使い方も積極的に提案している。これが面白くないわけがない、と、実際にZ7シリーズを使っていると思う。

 ”最近、テレビがつまらない”という声を耳にすることがあるが、ではどんな番組を見ているかというと、実はほとんどテレビ番組を見ておらず、内容も表面的にしか知らないという人も少なくない。Z7シリーズのように、自分好みの番組と出会うための工夫があり、より短時間で興味のある番組へと誘導してくれる仕組みを用意すれば、テレビの視聴スタイルや番組に対する評価も変わってくるだろう。東芝を“褒め殺し”にするわけではないが、これらの工夫は他社が簡単にまねできるものではない。


 テレビであるからには、映像品位の高さはもちろん重要だ。しかし、メーカー各社には、もっとユーザーがテレビをどんな風に楽しみたいのか? どうすれば楽しんでもらえるか? という根本に立ち返ってほしい。きっと、東芝を出し抜くようなアイデアを持っている人が、どこかのメーカーに隠れているに違いない。

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