コラム
» 2013年05月31日 17時09分 UPDATE

本田雅一のTV Style:やっぱりネットとテレビは水と油? 求む、テレビ局の挑戦

以前、フジテレビが深夜枠でボーカロイドをテーマにした番組を流すという話を書いた。ドワンゴが企画に絡んでいると聞いていたので、ニコニコ動画とテレビ番組のコラボレーションがあると面白いな、と思ったのだ。しかし……?

[本田雅一,ITmedia]

 前回の連載からずいぶん間が開いてしまった。その間、さまざまなことがあったが、テレビ関連の話題を抜き出すと、各社の4Kテレビが出そろったこともその1つ。北米でマイクロソフトの新型ゲーム機「Xbox One」が発表されたが、驚かされたのは既存のテレビをより楽しめるものにするための仕掛けを入れていたこと。ゲーム機だけではなく、AV体験を拡張するツールとしてもXbox Oneを訴求しようとしているようだった。

ts_xbox1.jpg 「Xbox One」

ts_xbox2.jpg Xbox Oneのシステムは、ゲーム用とSkypeやテレビ用が個別のOSで動く。例えばゲームと映画やテレビをシームレスに切り替えたり、画面を分割して映画を見ながらSkypeチャットするといったことができる

 と、これらも興味深いテーマなのだが、前回、中途半端なままだった話の続きを、今回はしておきたい。

 フジテレビが深夜枠でボーカロイドをテーマにした番組を流すという話を書いた。ドワンゴが企画に絡んでいると聞いていたので、ニコニコ動画とテレビ番組のコラボレーションがあると面白いな、と思ったのだ(→関連記事)。

 テレビ放送という、きちんとオーソライズされた、作り込んだコンテンツを大量の人に楽しんでもらうというメディアがあり、一方で強いテーマ性を持ち、コンテンツに集まるファンたちを強く結びつけるニコ動という通信サービスがある。本放送以外の領域をニコ動でカバーし、熱心なファンとの関係を構築。アウトプットとしてはテレビという手法を用いるという形には、大きな可能性がありそうだと思ったからだ。

ts_kayosai_01.jpg 賛否両論あったフジテレビ「ボーカロイド歌謡祭」

 ところが、前回の連載を執筆した直後にフジテレビ関係者に話を伺ったところ、実のところ番組の企画や台本に、ニコ動のサービスが組み込まれる予定はないのだという。もちろん、せっかくボーカロイドをテーマにするのだから、ニコ動をうまく企画に組み込みたいと考える人たちはいたようだが、最終的には今回は見送ることになったという。その細かな経緯については分からない。

 さて、フジテレビの件はともかく、またニコ動という特定のサービスに関連する話はさておき、テレビ番組をより楽しく観るためのツールとして通信サービスを活用することに関して、僕はかなり肯定的な意見を持っている。1つには「JoinTV」のようなソーシャル視聴を起点とするものもあるだろうが、通信サービスを絡めるならば、上記のようにテレビを観ていない時間帯の活用の方がベターだろう。

 そもそも、僕らが子どもの頃と今とで、なぜ視聴率が大きく異なるのか。娯楽の多様化という話がよく囁かれる。しかし、テレビ黄金期を知る我々のような40代以上の人間でさえ、最近のテレビは以前ほど面白くないと感じている。

 すると多くの人から「番組がくだらないから」という意見が出てくるが、では昔の番組がくだらなくなかったにか? といえば、今よりもずっとくだらない、悪ふざけが電波に乗って伝わってくるような番組がたくさんあった。つまらなくなった理由は、もっと違いところにあるのではないだろうか。

 どんなエンターテイメントコンテンツでも、同じ娯楽性を共有できる仲間がいる方が楽しい。映画の趣味が同じ人同士なら映画の話で盛り上がれるものだし、切り口は特定のタレントや音楽ジャンルなどでもいい。ソーシャル視聴が楽しいのは、同じコンテンツにチャンネルを合わせている、というゆるやかな価値観の共有があるからだ。

 ところが、ライフスタイルが多様化し、子どもであっても放課後の過ごし方は人によって千差万別。ものごとの感じ方がバラバラなら趣味も、面白いと思うテーマも違う。昔と今では学校生活における人間関係は変化してきている。「8時だョ!全員集合」をみんなが観て、翌日になると男子全員が同じギャグで笑える時代ではなくなってしまった。

 しかしクラスの中に同じテーマ、同じコンテンツで盛り上がれる仲間がいなくても、ネットを通じてならば、同じ属性の仲間が集まれる。それが匿名であればなおさらのことで、年齢や立場を超えて盛り上がれる可能性が出てくる。もちろん、秩序の強制が必要な場合もあるだろうから、必ずしも匿名がベターというわけではない。同じ趣味の仲間を結びつけるために、通信サービスがとても有効であることは誰もが認めるところだろう。

 そろそろ放送と通信という、水と油のようにまるで異なる2つのメディアを上手に使いこなすテレビ局が顕れてくれるのではないだろうか。国主導で決める次世代テレビの”フレームワーク”とはまったく異なる価値観で考えられた、視聴者にとっての娯楽性を決定的に高めるアイデアとなることを期待したい。

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