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アンプらしからぬ見た目で“生きた音楽”を奏でる――NuPrimeのUSB-DAC内蔵プリメイン「IDA-16」潮晴男の「旬感オーディオ」(2/2 ページ)

» 2014年09月26日 19時26分 公開
[潮晴男,ITmedia]
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ウォーミングアップで見違える音に

 さらにIDA-16はプリメインアンプの新世代機らしく、多彩なデジタル入力を基本にしていることも彼らの思いを伝える意欲的な部分だ。同軸、光デジタル入力を各々2系統、これにUSB-DACを加えた5系統の入力を装備し、アナログ入力は1系統にとどめた。USB入力のサンプリングレートは44.1kHzから384kHzの24bitと5.6MHzまでのDSDネイティブ再生に対応しているので、現行のプログラムソースに余裕で応える。この他にはAVアンプとの連係動作が行えるようパススルーのボリューム回路を備えたシアターモードを用意して汎用性を高めていることも、ユーザーにとってはうれしい部分である。

背面端子

 試聴にはソフィー・ミルマン5作目のアルバム「イン・ザ・ムーンライト」から5曲目の「ティル・ゼア・ウィズ・ユー」を聴いてみた。ロシアで生まれ幼少期をイスラエルで過ごし現在はカナダに在住と言う経歴が、彼女の音楽に多くの影響を与えていることは間違いない。2004年のデビュー・アルバムですでに堂々の貫録を見せていたことから、凄い才能の持ち主だなぁとは思っていたが、バックのミュージシャンやスタッフにも恵まれたらしく、順調に作品を送り出してきた。日本にもよく来日していて、東京のブルーノートへの出演もある。残念ながらぼくはまだ彼女のライブ・ミュージックを体験していないので、次の機会にぜひとも出かけてみようと思っている。

ソフィー・ミルマン5作目のアルバム「イン・ザ・ムーンライト」。レーベルはビクターエンタテインメント

 このアルバムは新譜ではなく2011年にリリースされたものだ。「ティル・ゼア・ウォズ・ユー」はビートルズも取り上げたナンバーだが、オリジナルはミュージカル「ミュージックマン」のために、メレディス・ウィルソンが作曲したものである。

 ソフィーのナンバーはイントロのガット・ギターがなんとも印象的だが、続いてスキャットで彼女の声が入り、そこにアコーディオンとアップライトのベースが加わるスローテンポのアレンジがなされている。とてもきれいで雑味の少ない録音がボーカルを引き立てるが、楽器の編成が少ないだけにアンプのS/N感が問われる厄介な一面も持つ。IDA-16はこの楽曲を飾らず丁寧に聴かせてくれた。中低域にかけてはもう少しエネルギー感がほしい気もするが、すっきりとしていて落ち着きのある感じが音楽の中に込められた情感を惜しみなく描き出す。

 また、このアンプは30分程度のウォーミングアップを行うことで、俄然(がぜん)音の躍動感が違ってくるので、電源投入直後に音質の判定をすることは避けたい。設計者はアナログの入力は付けたくなかったというデジタルアンプなのに、この変化にはぼくも不思議な感じがした。電源部を含め通電することで各部の馴染みが良くなることがその理由らしい。

 ウォーミングアップが終了すると、安定度が増しS/N感が高まることでボーカルの息遣いやニュアンスが豊かになり、ソフィーがスピーカーの中央に立体的に浮かび上がる。スタジオ・レコーディングなのにライブネスをたっぷりと含んだ、まさに生きた音楽を聴かせてくれるアンプなのである。

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