「しりあがり寿」らが書き下ろし〜モバイルコミック:ケータイ漫画の新潮流(前編)

» 2004年05月17日 12時04分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 携帯電話で視聴するマンガコンテンツに、新たな流れが産まれつつある。サミーネットワークスはEZweb向けに、有名漫画家が書き下ろしたコンテンツを配信する「モバイルコミック」を提供している。

 紙のマンガとは一味違う、“携帯で視聴することを前提にした”オリジナル作品というが、果たしてどのようなものか。同社のeパブリッシング事業部、井島剛志事業部長に聞いた。

6コマ〜20コマの「ケータイマンガ」

 モバイルコミックの料金は、月額315円。毎週月〜金曜に日替わりで1作品ずつが追加される。執筆するのは4人の“レギュラー作家”と、週によって変動する“ゲスト作家”となっている。

 レギュラーの顔ぶれは、「サーキットの狼」の池沢早人師、「キャンディ・キャンディ」のいがらしゆみこ、「時事おやじ2000」のしりあがり寿、「愛し合うことしかできない」の桜沢エリカとなる。ゲスト作家にも、「かぼちゃワイン」の三浦みつるや、「まいっちんぐマチコ先生」のえびはら武司などが名を連ねる。

 一見して感じるのは、いわゆる4コマ作家ばかりが集まっているわけではないこと。

 「スポーツ新聞の4コマのイメージではない。20〜30代の若者をメインターゲットにしており、 “オッサンくささ”は極力排除する。また、ギャグマンガに限定するつもりもない」(井島氏)

 コマ数も「4コマ」ではなく、概ね6〜8コマ程度の自由な形式をとっている。「作品によっては、20コマになることもある」(同氏)。以下に、しりあがり寿の作品例を挙げよう。

Photo
Photo

 右下に表示される▼をクリックすると、次が表示される仕組み。台詞は“フキダシ”方式で表示される。「画像とテキストを別々に表示する事業者もあるが、あれだと画像が表示されないうちにテキストだけ表示されて、オチが先に分かってしまう」(同)。

 フキダシ形式を採用するため、端末はQVGA液晶を搭載することが条件となる。対応機種が限られるようにも思えるが、「いまや、市場にQVGA端末も増えてきた。機は熟した」(同)。

SMILで「動き」をつける

 モバイルコミックでは、1ページずつをWebで取得するのでなく、まとまった枚数のコンテンツをまとめてダウンロードするという手法をとる。面白いのは、そのコンテンツに“動き”がついていることだ。

 たとえば、前述のフキダシも最初は表示されておらず、時間が立つと出てきたりする。場面によっては効果音がつくほか、キャラクターもひょこひょこと簡単な動きを見せる。

Photo

 実は、サミーネットワークスではコンテンツをFlashのかたちで保持している。これを、SMIL2.0を利用して「GIFアニメーションのかたちに変え、なかば強引に時間軸表示させている」(同)わけだ。

 「動きを増やして動画にしたり、色をぬって『待ち受け画像』にしたりといった、ヨコの展開も可能」。井島氏は、そうした多面展開が行えるのも作品が“書き下ろし”だからだと強調する。

「2次利用する気はなかった」

 井島氏は、出版社と提携して有名作品を2次利用する考えは、最初からなかったと話す。

 「出版社と組むと、“版権元”がいることになる。そうではなく、新規に執筆してもらってこちらで著作権を管理したかった」。今回集まってもらった作家は、「集英社系」といった出版業界の枠を越えて、サミーネットワークスの主旨に賛同して集まった。事業が軌道に乗れば、新人作家も加えていきたいという。

 ただし、この企画はスタート時点から収益性が見込めるわけではない。井島氏は、「最初はみんな苦しい思いをするが、上手くいったら分け合おう」という共通理解があると話す。

 モバイルコミックでは、漫画家のほかに放送作家集団「古館プロジェクト」のメンバーも参加している。いわば、漫画家と放送作家が手を組み、新しいメディアの立ち上げを目指す……という趣向になっている。

 井島氏は最終的に、「モバイルならではのマンガの読み方、楽しみ方を確立し、『新しいマンガ文化』を創造する」とうたった。


 携帯電話が高機能化し、また液晶が高精細化するにつれ、そこで提供されるマンガコンテンツの質も変容しつつある。「ケータイ漫画の新潮流」、後編は日本ユニシス情報システムとクリアキューブの取り組みについて紹介する。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年10月11日 更新
  1. ダイソーで1100円のノイキャンイヤフォン「TWS009」を試す 騒音カットの効果は実感も電池持ちに課題か (2026年10月09日)
  2. 資産3000万円以上が対象 MUFG「エムット」最上位サービスと“年会費無料”アメックス・プラチナの魅力とは (2026年10月08日)
  3. スマホの「実質価格」高騰の恐れ、iPhone 18 Proは2倍高く? 総務省の残価設定ルール厳格化は“誰のため”か (2026年10月10日)
  4. 10月1日から楽天モバイルの「au 4G LTEエリアローミング」が縮小も意外と残っている件 (2026年10月10日)
  5. ダイソーで1100円の「GaN USB充電器」は折り畳みプラグで外出用に持ち歩きやすい 45W出力対応でPCでも使える (2026年10月10日)
  6. 「iPhone 18 Pro Max」を試して分かった進化と課題 想像以上に“使えた”可変絞り搭載カメラ (2026年10月09日)
  7. ドコモが「Google Pixel 10a(256GB)」を11万6930円に値上げ 2年7万円台に (2026年10月09日)
  8. JR東日本「分かりにくい」新幹線券売機を改善へ なぜ、スマホではなく「駅での最短1分購入」を実現? (2026年07月04日)
  9. 楽天グループ、1億件超の会員情報流出説を否定 「情報漏えいが発生したという事実は確認されておりません」 (2026年10月09日)
  10. 「iPhone Duo」は閉じても開いても迷わず使える Appleが提示するUIの設計思想 (2026年10月10日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー