フリージア「いつもグチを聞いてくれてありがとう」Mobile&Movie 第251回

» 2007年03月16日 08時07分 公開
[本田亜友子,ITmedia]
作品名フリージア
監督熊切和嘉
制作年・製作国2006年日本作品


 今回ご紹介するのは、暴力が蔓延した近未来が舞台の『フリージア』。犯罪の被害者が加害者を処罰できる『敵討ち法』が施行され、街角で銃撃戦が繰り返される日常。そんな殺伐としたストーリーの中で、『敵討ち法』の標的にされた男が、メル友と交わす携帯メールだけがホッと一息つかせてくれます。

 感情のない青年・ヒロシ(玉山鉄二)は、敵討ち執行代理人事務所のヒグチ(つぐみ)にスカウトされ、執行代理人として働くことに。初めての任務の敵討ちでは、上司の溝口(三浦誠己)や山田(柄本佑)に連れられて、ラーメン店を訪れました。

 何を考えているのかわからないヒロシの態度に溝口は苛立ちますが、存在を無視して、ラーメン店主夫妻への敵討ちに挑みます。加害者が雇った警護人に向かって、やみくもに引き金を引き得意顔の溝口。しかし、加害者の夫を逃がしてしまいます。ヒロシは冷静に跡を追い、正確に仕留めてみせました。そのガン・テクニックに呆然とする山田。実は、ヒロシはかつて少年兵として軍で働いていた過去があり、銃の腕前には自信があったのです。

 それは15年前のこと。軍が極秘に行なったある実験がきっかけで、ヒロシは感情や痛みの感覚を失ってしまったのです。そして、その時の軍の実験は、悪夢となって毎晩ヒロシに襲いかかってくるのでした。そんな罪の意識を打ち消すように、敵討ち執行代理人として引き金を引き続けるヒロシ。

 少年兵時代、ヒロシの上司だったトシオ(西島秀俊)もまた、過去から逃れるように暮らしていました。軍から逃げ出し、身を隠すように下町の整備工場で働いていたのです。自分の過去は決して語らず、工場の仲間とも距離を置いて。そんなトシオが唯一心を許していたのは、見知らぬ北の国の女性・コトミ。メル友のコトミと交換する携帯メールだけが、トシオをなごませてくれたのです。

 「どうしてますか?」

 「いつもグチを聞いてくれてありがとう」

 会ったこともないコトミから届くメールに思わず、頬が緩むトシオ。コトミが添付してきた雪だるまの画像を見て、安らかな気持ちで返信をします。しかし、そんな平和な日々も長くは続きませんでした。運命の歯車が、ヒロシとトシオを再び、引き合わせようとしていたのです。敵討ち執行代理人=ヒロシと加害者=トシオとして。

 15年ぶりに再会したヒロシとトシオ。感情を失ってしまったヒロシは、ただ任務を遂行するのみ。そして、トシオもまた、逃れられない過去を嘆きつつ、ヒロシに立ち向かっていくのです。銃を向け合った2人の運命は? そして、ヒグチの狙いとは?

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