コラム
» 2016年12月09日 06時00分 UPDATE

ポケモンGOとサン・ムーンに見る「脱落させない」ゲームの作り方

[波戸みつる,ITmedia]

 「ポケットモンスター 赤・緑」が発売された1996年、私は小学生だった。さすがに小学生の頃というと記憶がおぼろげになっているが、通信ケーブルの所持がとても重要だったことは今でも覚えている。

 赤緑の20年後に発売された「ポケットモンスター サン・ムーン」も、発売前に予約して初日からプレイしている。

 実は前作の「ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア」は序盤で飽きてやめてしまったのだが、今回は学生時代に比べて少なくなった遊び時間をほぼサン・ムーンに費やして一気にクリアしてしまった。

 時間の少ない社会人でも飽きずにクリアできた、というのは「Pokemon GO」でポケモン熱が再燃しているのもあるが、サン・ムーンがこれまでのポケモンシリーズに比べて大きくゲーム設計を変えたのが何よりも大きな要因だと考えている。

 端的に言えば、プレーヤーを「脱落させない」ゲーム作りになった。

 そう思う点を下にいくつか挙げてみよう。ネタバレは極力しない方針だが、ゲーム内容に触れるのでその点了承した上で読んでほしい。

ライバルがこちらにとって相性の良い御三家ポケモンを選んでくれる

サン・ムーンの御三家ポケモン(ポケットモンスター サン・ムーン公式サイトより)

 赤・緑では主人公がゼニガメを選べばライバルはフシギダネ、フシギダネを選べばヒトカゲ、と主人公のポケモンにとって相性の悪いポケモンをライバルが選んでいたが、今作ではそれが逆転している。

 主人公がみずタイプを選べばライバルはほのおタイプ、ほのおタイプを選べばくさタイプ、と主人公にとって有利なポケモンを選ぶようになった。これによって最初のライバルとのバトルは簡単に勝てるようになった。

(もっとも、この変更は「ポケットモンスター X・Y」からの仕様だ)

ひでんマシンがなくなった(わざ自体はある)

 マップを攻略していく上で必要不可欠だったのが「ひでんマシン」だ。木を切るには「いあいぎり」、海を進むには「なみのり」などのひでん技を手持ちのポケモンに覚えさせておく必要があった。

 どうくつに入ってみたが「かいりき」を使えるポケモンを連れてこなくてすごすご帰る、という経験がある人もいるだろう。

ラプラスを持っていなくてもライドギアで呼び出して背中に乗ることができる

 サン・ムーンではポケモンがなみのりを覚えていても海は進めず、そらをとぶを覚えていても他の街に飛べない。ではどうやってマップを攻略していくかというと、「ライドギア」という道具から登録されたポケモンを呼び出し、ポケモンの背中に乗って海や空を渡るのだ。なので今までのようにひでん技を覚えさせた、いわゆる「ひでん要員」を手持ちに加えずによくなった。

 今までのひでん技は、サン・ムーンではわざマシンの1つとなっている。

次の目的地がマップ上で常に表示されている

主人公を目的地へ導くロトム図鑑(公式サイトより)

 今作では3DSの下画面に常にマップが表示されている。このマップ機能が従来より親切になっており、ストーリーを進める上でとても便利だ。

 マップ上には主人公の現在地と次の目的地が常に表示されており、「あれ、次何したらいいんだっけ?」となることもなくストーリーを進めていくことができる。

バトル中、自分のポケモンのわざと相手ポケモンとの相性が表示される

相手のポケモンのタイプを知らなくても、わざの下に相性が表示されるようになった

 相手のポケモンのタイプを知らなくても割りとなんとかなるようになった。相手のポケモンと対面して技を選ぶときに、技の下に「こうかばつぐん」「こうかあり」「いまひとつ」「こうかなし」と技の相性が表示されるようになった。

個体値厳選、努力値振りが簡単に

 ポケモンバトルをがっつりやる人にとってこの変更は大きい。簡単に説明するとこれらはHPやこうげきなどのステータスを決定する要素で、個体値は個体ごとの固有の値、努力値は野生のポケモンとのバトルなどで後から振り分けを決められる値だ。

 個体値の厳選には高個体値のメタモンを用意することで、目的のポケモンのタマゴを量産し良い個体を選んでいくというのが通例なのだが、高個体値のメタモンを見つけるのがこれまではかなり難しかった。

 ところが、今作では野生のポケモンが「仲間を呼ぶ」ようになり、野生で出たメタモンとのバトル中に仲間を呼ばせまくることで高個体値のメタモンを確実に捕まえられるのだ。

野生で捕まえてきた高個体値のメタモンタマゴで厳選した最高個体値のポリゴン 野生で捕まえてきた高個体値のメタモン(左)とタマゴで厳選した最高個体値のポリゴン(右)

 また、努力値を特定のステータスに振っていくには同じ種類のポケモンだけを何度も倒す必要があったが、今作では「ポケリゾート」というところに1日程度預けておくだけで1つのステータスへの努力値振りが完了するようになった。

ポケモンたちが探検して育っていく「ポケリゾート」(公式サイトより)

やりこみ要素まで多くのユーザーを連れ込むゲーム設計

 これらの変更を見渡すと、「間口を広くし、やりこみ要素まで誰でも到達できる」ということを意識してゲーム設計がなされたのだと思う。

 現在のポケモンシリーズのやりこみ要素は、図鑑の完成もあるがやはりバトルだろう。

 ここ数年のポケモンのゲーム要素で何が一番流行っているかと言えば「レーティングバトル」だ。これはインターネットを通して世界中のプレーヤーと対戦をし、勝てば勝つほどレート上位に上がり、負ければレートが下がっていく。

 そこには個体値の厳選はもちろんのこと、わざや戦術も洗練してきたプレーヤーたちがひしめき合っている。

 このレーティングバトルの魅力に取りつかれたプレーヤーは寝ても覚めてもバトル環境の考察に明け暮れることになるのだが、ここに至るまでに必要な個体値厳選の手間やタイプ相性の把握など、やることが大変でその前にゲームを辞めてしまうプレーヤーも少なくなかったのではないだろうか。

 その視点からサン・ムーンのゲーム設計を見返すと、まずはスムーズにストーリーをクリアしてもらい、個体値厳選などのコストも下げることでより多くのユーザーをレーティングバトルに誘おうという意図があるように思う。以前は不正に改造された高個体値ポケモンが横行することもあったが、改造なしで簡単に厳選できるようにすることでそういった不正のメリットを相対的に下げるという意味もあるのだろう。

 懐古的なことを言うと、ストーリー攻略にかかる手間やタイプ相性の知識など、そういった煩雑な部分まで含めてポケモンであったなあとも思うのだが、スムーズに攻略できるようになったのは新規ユーザー・ライトユーザーにとってはうれしいことだ。私がスムーズにクリアできたのもそのおかげであるし。

 ポケモンGOも、ゲームシステムを単純にしたことにはまず多くのユーザーにプレイしてほしい意図があったと開発元が明かしている。まずは分かりやすく、多くのユーザーに、という思想はサン・ムーンとポケモンGOに共通しているといえる。

 サン・ムーンは初めてポケモンをプレイする人にも、久しぶりにポケモンをプレイする人にも広くおすすめできるゲームだ。ポケモンGOからポケモン熱が再燃していたら是非プレイしてみてほしい。

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