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AppleのクックCOO、またもNetbook批判 Macタブレットにはコメントせず

» 2009年07月23日 14時12分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 米Appleが小型ノートPCを開発中とのうわさが飛び交う中、同社の最高執行責任者(COO)を務めるティム・クック氏は7月21日、四半期決算報告の電話会見において、そうしたデバイスに容赦ない批判を浴びせた。ただし同氏は、Appleが同様の機能を持つタブレット型マシンを開発中かどうかについては、コメントを拒否した。

 問題は、こうした小型ノートPCの処理能力だという。主な用途がWebの閲覧と軽量タスクの実行であることから、こうしたデバイスはNetbookと呼ばれている。

 「ポータブルな製品を購入する顧客の大半はフル装備のノートPCを欲しがっているはずだ。だが市場に出回っているNetbookの中には、非常に動作の遅いものもある。既製のソフトウェア技術を搭載し、堅牢なコンピューティング体験も提供しない。多くの人たちはそうした状況に不満を感じるだろう」とクック氏は語った。

 世界的な景気低迷の影響でPCの総出荷台数が落ち込みを見せる中でも、低価格なNetbookの市場は驚くほどの活況を呈している。NPD Groupが2009年5月に発表した報告書によると、サンフランシスコやロサンゼルス、ボストンなど、米国の主要都市では、ノートPCの売り上げのうち、かなりの比率をNetbookが占めている。

 だがクック氏は、Appleがこの市場に参入する上では製造原価と利幅が問題になると考えている。

 「まだ大きな市場が残っていることは、われわれも認識している。だが今のところ、399ドルや499ドルの価格で優れた製品を開発できるとは思えない。前にも言ったとおり、顧客の中には、Netbookを購入した後に落胆や失望を感じている向きもいるはずだ。恐らく多くの顧客がそう感じているだろう」と同氏。

 「Macbook Proを800ドル以下で買えたら驚きだ。われわれは当社の価格設定については非常に満足している」とさらに同氏は続けた。

 だがこの数カ月間、AppleがAmazonの電子書籍リーダー「Kindle DX」と似たフォームファクタの、iPhoneやiPod touchよりも大きい、タッチスクリーン搭載のタブレット型マシンを開発中であるとのうわさが飛び交っている。

 調査会社Piper Jaffreyのアナリストは今年5月、Appleが2010年上半期に7〜10インチのタブレット型マシンを500〜700ドルの価格で発売するとの見通しを明らかにした。これが実現すれば、Appleにとっては、iPod touchとローエンドMacの隙間を埋める製品となる。

 「Appleの製品ラインアップに大きめのタブレット型マシンが加われば、AppleはオンラインストアiTunes Storeでデジタル書籍の販売も始められる。そのタブレット型マシンを電子書籍リーダーとして使ってもらえるからだ。そうすれば、AppleはAmazonのKindleやKindle DXなどの電子書籍リーダーに対抗できる」とアナリストは報告書で指摘している。これが実現すれば、ユーザーはWebを閲覧するほか、Appleの「App Store」からアプリケーションを購入することもできるだろう。

 Appleはこれまで決算報告の電話会見のたびに、そうしたタブレット型マシンをめぐるうわさを一蹴(いっしゅう)しており、直近の決算報告でも、クック氏は「わたしは何であれ、将来の可能性について否定するつもりはないが、この場で具体的な新製品に関する質問に答えたくはない」と語っていた。

 新製品の発表はないとしても、Appleの財務状況は健全なようだ。同社は第3四半期(4〜6月期)の決算で、前年比12%増の12億3000万ドルの純利益(1株当たり1ドル35セント)を計上した。ウォール街のアナリストは82億1000万ドルの売上高に対し、1株当たり1ドル17セントの純利益を予測していた。

 景気低迷の影響でPCなどのデバイスの売り上げが軒並み減少する中、Appleの第3四半期の製品販売台数は好調に推移し、iPhoneの販売台数は520万台、Macの販売台数は260万台を記録した。ただし、人気の音楽プレーヤーiPodの売れ行きは勢いを落とし、販売台数は前年比7%減の1020万台となった。

 Appleの最高財務責任者(CFO)を務めるピーター・オッペンハイマー氏は決算報告の電話会見で、iPodの売り上げが減少したのはAppleがiPod touchとiPhoneの販売を促進したことによる「共食い」が原因だと説明した。

 Appleは第4四半期については、売上高を87億〜89億ドルと予測している。第3四半期については、アナリストは当初、スティーブ・ジョブズCEOの療養休暇が同社の経営にマイナスの影響を及ぼす可能性を懸念していたが、結果は好調なものとなった。同氏は健康問題を理由に今年1月から休養していたが、今春、治療の一環としてテネシー州メンフィスの病院で肝臓移植手術を受け、その後、6月29日に業務復帰を果たしている。

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