米Microsoftの先週のビッグニュースは、同社のモバイルOSの最新アップデートとなる「Windows Mobile 6.5」が10月6日にリリースされたことだ。Microsoftのスティーブ・バルマーCEOの最近のコメントから判断すると、Mobile 6.5は2010年初頭に「Mobile 7」をリリースするまでの間、同社が市場シェアを何ポイントか増加させるための“つなぎ”的な役割を狙ったものであるようだ。
Windows Mobile 7の具体的な機能やインタフェースは一切明らかにされていないが、各方面の情報を総合すると、同OSはメジャーアップグレードとなるもようであり、MicrosoftはこれでiPhoneおよびPalm Preと真っ向から対抗する考えのようだ。9月に行われた「Venture Capital Summit」でバルマー氏は、MicrosoftはWindows Mobileで「大きなヘマをやらかしてしまい」、本来ならば既にMobile 7がリリースされているはずだったと述べた。
10月6日にニューヨークで開催されたMicrosoftの「Open House」イベントにおいて、Microsoftのエンターテインメント&デバイス(E&D)部門のロビー・バーク社長が語ったところによると、Mobile 6.5で動作する新しい携帯電話が年末までに30機種登場する見込みだ。既に、HTC、Sony Ericsson、AT&T、LG Electronicsなどのメーカーやキャリアが、同OSで動作する新しいスマートフォンを発表した。
Microsoftはこの夏、AppleのApp Storeに対抗する「Windows Marketplace」向けにアプリケーションを作成するよう開発者たちに促した。同社では、Mobile 6.5のリリース時点で約600本のアプリケーションがそろうと見込んでいた。753社以上のISV(独立ソフトウェアベンダー)がアプリケーションを開発中だが、Marketplaceは246本のアプリケーションでスタートした。
Mobile 6.5を投入する一方で、バルマー氏は、10月22日に一般向けにリリースされるWindows 7への期待が過熱するのを抑えようとしている。
Reutersの報道によると、バルマー氏は10月7日、独ミュンヘンでの記者会見において「PC需要が拡大する見込みだが、それほど大幅なものにはならないだろう」と語った。さらにバルマー氏はその席上、長期に及ぶ不況で深刻な打撃を受けているIT分野の急速な景気回復は期待できないとの認識を示した。
Microsoftの命運は、Windows 7をはじめとする同社の主力製品の新バージョンの成功にかかっている。同社の2009年第4四半期の売上高は、ウォール街の予測を約10億ドル下回る131億ドルで、昨年同期と比べて17%の減少となった。同社の次の四半期決算発表は10月23日に行われる。
Microsoftは企業市場での新OSの訴求力を高めるべく、Windows 7 Enterpriseの90日間の無料トライアルエディションを提供している。この夏に実施された各種調査では、大多数の企業がWindows 7を早期に採用するのか、来年まで導入を見合わせるのかで結果が分かれているようだ。
また、Microsoftは10月8日にFuture Social Experiences(FUSE)ラボを設立し、同社の総合的な将来戦略の一端を示した。同社のWebサイトによると、この新プロジェクトは、マサチューセッツ州にあるMicrosoftのStartupラボと、同社のCreative SystemsグループおよびRich Mediaラボを組み合わせたもので、「ソーシャルネットワーク、リアルタイムエクスペリエンス、リッチメディアを中心としたソフトウェアとサービス」にフォーカスするという。
FUSEラボは80人余りのスタッフで構成され、Microsoft ResearchのCreative Systemsグループの元ディレクター、リリー・チェン氏が責任者を務める。この組織再編は、余暇の追求という面だけではなく、企業のコミュニケーションとコラボレーションという面においてもソーシャルコンピューティング用プラットフォームとアプリケーションの重要性が高まっているというMicrosoftの認識を示すものだ。
Microsoftのチーフソフトウェアアーキテクトを務めるレイ・オジー氏は「FUSEラボは、これらの先進的な開発プロジェクトの結束力と能力をさらに高めるだろう。これらのプロジェクトでは、ライバルを追い越すという目標達成に向け、既に製品グループとの積極的なコラボレーションを進めている」と社内メモに記している。
このように、IT市場の状況の変化に迅速に対応することが、新製品を素早く市場に投入してきたGoogleなどの企業にMicrosoftが今後も競争する上で必要だろう。市場調査会社StatCounterによると、Googleと最も直接的に競合するMicrosoft製品である検索エンジンBingは、米国での市場シェアが9月に8.5ポイント余り低下した。調査会社Net Applicationsの報告書でもやはり、Bingのシェアがわずかに減少している。
これらの数字がMicrosoftを不安に陥れていることはなさそうだが、Bingのリリースに際して数百万ドルの資金を投じて展開された宣伝キャンペーンが一段落しつつある今、同社が検索市場における足掛かりを活用する手段を見つける必要性を示していることは確かだ。
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