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» 2009年12月07日 22時01分 UPDATE

ウェブ学会シンポジウム:「初音ミク出馬」も? ネットが導く「民主主義2.0」

ネットは民主主義をどう変えるか――12月7日の「ウェブ学会シンポジウム」で、濱野智史さんや東浩紀さん、津田大介さんなどが議論した。

[岡田有花,ITmedia]
画像 左から佐藤哲也准教授、津田大介さん、鈴木健さん、東浩紀さん、濱野智史さん

 ネットと政治の距離が近づいている。Twitterやブログを使う政治家が増え、有権者が各党のマニフェスト(政権公約)と自分の考えをマッチングするサービスも広く使われるようになってきた。

 ネットが導く「民主主義2.0」とは――12月7日の「ウェブ学会シンポジウム」で、批評家の濱野智史さんや東浩紀さん、ジャーナリストの津田大介さんなどが、ネット時代の政治のあり方などについて議論。“Twitter議員”こと藤末健三 参議院議員(民主党)が、政治現場でのネット活用について話した。

「ネットが政治を身近&クリーンに」 Twitter議員の藤末さん

画像 藤末議員

 藤末議員は、オバマ米大統領の事例を引き、ネットが政治を「身近に、クリーンに」できると期待する。Twitterなどを利用した情報発信は政治家を身近に感じさせ、ネット経由の個人献金が政治にまつわるお金の動きをクリーンにするという見方だ。

 鳩山政権はネット利用に積極的だ。国民の声を吸い上げる“目安箱”サイト「ハトミミ.com」を来年1月にオープンする予定。ネットを使った選挙運動解禁に積極的で、8月の衆院選に向けて「来年の春過ぎぐらいに公職選挙法を改正できるようプランを立てている」という。

 「選挙では使えない言う政治家も多いが、まずは目の前の制度を変え、ネットを使った政治の新しいスタイルを確立し、若い人が政治を動かす実感を持てるようなシステムを作ることが重要」と藤末議員は話す。

Twitterで政治関連の発言がしやすく

 「ネット上で政治的な行動はタブーになっていた」――予測市場の仕組みを使った衆院選予想サイト「shuugi.in」を研究室メンバーとともに開発した静岡大学情報学部の佐藤哲也准教授は指摘する。

 一方でTwitterには、政治関連のつぶやきが比較的多い。「これまでのネットでは、調べてから書けという圧力があるが、政治は調べてから書くと何も書けなくなる」と東さんはその背景を分析。Twitterは140文字という制限がある上、「送り手は文脈を無視して書き、受け手も配慮する」(津田さん)ため、政治的な意見でも発言しやすくなっている。

 Twitterは、政治家に直接働きかけるツールにもなる。例えば、鳩山総理が公約に反し、記者会見をオープン化しなかった際、藤末議員あてにTwitter経由で批判や意見が寄せられ、藤末議員はTwitterで背景や状況を報告した。「議員の後援会メンバーなら、議員本人に『しっかりしろよ』と言えるのはかなり力がある人だけ。だがTwitterだとポーンと言える。従来のコミュニケーションとのジャンプは大きい」(佐藤准教授)

 東さんは、Twitterのデータベースが、ルソーが提唱した「一般意志」に近いと話す。「タイムライン上で各自が見ている同期空間が全体意志で、Twitterのデータベースが一般意志」――Twitterは各人が一方的に相手を「フォロー」し、独自の文脈(タイムライン)上で好き勝手にひとりごとをつぶやいているが、タイムライン上ではあたかもユーザー同士で議論しているように見える「フィクション感」があるのがポイントという。

初音ミクよ、出馬せよ

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 日本の民主主義制度は限界に来ているという共通認識の上で、ネットが可能にする新たな民主主義の仕組みについてのアイデアも出た。

 「バーチャルなキャラによる政治家がいてもいいじゃない」――濱野さんは、「キャラクラシー」(キャラクター民主主義)を提案する。イデオロギーが似た人たちが、初音ミクのようなバーチャルなキャラクターを共同で作って政治家にし、自らの声を政治に反映させようというものだ。

 ミク作品に情熱を傾けるネット上の「P」(プロデューサー)のようなエネルギーやコラボレーションを、政治の世界にも活用しようという考え方だ。キャラの裏では、匿名ユーザーが政策を書いたり、PR動画を作ったり、キャラの忠実な「エージェント」として国会に参加したりする。

 “政治家”はやる夫でもいいし、キャラでなくてもいいという。「政治家のイメージを打破し、みんなの意見を集約する新しい単位が必要。キャラならあらゆる空間にいられ、人間の政治家よりも“公人”になれる。日本のキャラは世界にも通用するので、同じキャラが8カ国同時擁立なども可能かもしれない」

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 サルガッソー代表の鈴木健さんは「伝播委任ネットワーク」を提案する。各政策について個人が各1票持ち、分割して投票したり、信頼する別の人に票の権利を譲渡できるという仕組みだ。例えば、ある政策についてA、B、Cの3つの選択肢がある場合、「Aに30%、Bに20%、残りの50%は山田さんに渡す」――といったことが可能。個人の中にある矛盾した考えや迷いも包含できる仕組みにしようというものだ。

 「投票が面倒なので」――佐藤准教授は、各人の立場や意見を踏まえた上で適切な人に投票できる「投票自動化ロボ」を作ることが夢だと語る。佐藤准教授の研究室では、ユーザーの考え方と各政党のマニフェストを比較できるボートマッチシステムや、mixiユーザーが政府の事業仕分けを追体験できるmixiアプリを開発。各ユーザーや政党、候補者の信念やイデオロギーを正確にデータベースに反映でき、マッチングがうまくできれば、投票自動化ロボットも実現できるはずだ。

 東さんは、日本ならではの理念に基づいた民主主義の再構築が必要と説く。「ヨーロッパは民主主義の伝統があり、アメリカは『民主主義作らなきゃ、参加しなきゃ』というハイテンションな自己啓発国家。Web上でアメリカやGoogleが強いのは、アメリカ的民主主義を情報社会に読み替え、常に理念に基づいて動いているから。伝統もテンションもない日本では、道具立てや原理から社会モデルから考える必要があるだろう」

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