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» 2010年12月07日 15時47分 UPDATE

初音ミク搭乗「あかつき」金星軌道投入なるか JAXAから写真リポート

7日午前、「あかつき」は金星周回軌道に乗るべく逆噴射を実施したが、噴射後に通信が途絶。その後通信は回復したものの、午後3時現在で詳しい状況は分かっておらず、心配される。

[森岡澄夫(超電磁P),ITmedia]
画像 パブリックビューイングの会場

 12月7日は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金星探査機「あかつき」の金星周回軌道投入の日だ。金星観測は、「あかつき」と、“搭乗”している初音ミクのミッション目的。軌道投入は、打ち上げを除けばミッション中もっともクリティカルな段階だ。搭載エンジンを逆噴射して減速し、金星の引力につかまえてもらうのだが、減速量が足りないとそのまま金星を通り過ぎてしまうし、減速しすぎれば金星に墜落してしまう。

 このため適切な時刻に、適切な姿勢で、適切な推力で、適切な長さの噴射を行わなければいけない。これは想像するよりもはるかに難しい技術で、世界的に見ても失敗事例は多くある。日本にとっても、惑星の周回軌道へ探査機を投入した成功例はまだない。「はやぶさ」や、あかつきとともに打ち上げられた宇宙ヨット「IKAROS」と同じく、とても挑戦的な試みなのである。

 さて、12月7日の早朝5時30分、JAXA相模原キャンパスでの金星観望会が企画されていたが、ある有名な雨女(初音ミク)の影響もあってか天候が思わしくなく、公式には中止されてしまった。ただし、それでも熱心なファンが集まったために臨時に実施し、時々金星を見ることもできたようだ。


画像 12月7日早朝のJAXA相模原キャンパス。残念ながら薄曇りで筆者は金星を目撃できず
画像 早朝から多くのファンが詰めかけていた
画像 「あかつき」に搭載のメッセージパネル群。全部で約90枚

 午前7時からは「あかつき」管制室の中継を含めたパブリックビューイングが開催され、筆者もそれに参加した。平日の早朝にも関わらず老若男女数十名(正確には不明だが100人近くに見えた)が集まり、皆が固唾(かたず)を飲んでその瞬間を待った。逆噴射は一発勝負であり、やり直しはほとんど効かない。また、電波で4分近くかかる遠方であるため、地上から噴射ボタンを押したりするのではなく、全てが「あかつき」の自動操作で実施される。

画像 あかつきとともに打ち上げられた宇宙ヨット「IKAROS」にも同じようにメッセージパネルが搭載されていた。ミクも筆者が乗せました
画像 「IKAROS」搭載のメッセージは、ディスクにも収録して打ち上げられた
画像 ミクパネルでお世話になったJAXA阪本成一教授。これはまだ噴射前の撮影で、にこやかに応じていただいたが……

画像 逆噴射開始直前の観客の様子。固唾を飲んで見守った
会場ではTwitterによる応援も展示されていた。観客の多くもTwitterを見ており、情報は非常に早く伝わる
画像 「あかつき」の実機。4月の撮影

画像 今日使用した逆噴射用のエンジン。衛星の右下にメッセージ・パネルが取り付けられている
画像 逆噴射に使用したセラミックスエンジン。推力は約50キロ
画像 エンジンは意外にコンパクト

 午前8時49分、噴射開始時刻になったがすぐには状況が分からない。8時53分になって噴射開始の確認との一報が入り、やや安堵した空気になったが、気は抜けない。「あかつき」は地球から見えない位置に回っていったので通信は一旦途絶した。そのまま待ち続ける。

 午前9時1分、噴射停止時刻となった。9時20分ごろには「あかつき」が地球から見える位置に戻って来る予定で、通信が回復するはずだった。ところが、なかなかその一報が入らず、筆者はおかしいと思い始めた(2003年のコロンビア号事故を思い出していた)。

 通信が予定通り回復しないということは、姿勢が崩れたか、噴射が失敗してあらぬ軌道へ乗ってしまったか、最悪の場合、ロケットエンジン爆発などで致命的な破壊が起きた可能性も意味するからだ。管制室からの報告もなく、正常ではない何かがあったことが予感された。観客の間にも張り詰めた空気が漂った。

 そのまま悶々とした状態で待ち続けること1時間。午前10時28分に電波受信との報告がもたらされ、「おお」という歓声が上がった。「あかつき」と初音ミクは生きていた。

 ただし、午後3時現在、状況は決して楽観的ではない。低利得アンテナ(衛星がどちらを向いていてもよい代わりに低速でしか通信できない)での通信が取れているだけで、「あかつき」に何が起きどのような軌道にあるのかは、まだ分かっていない。場合によっては、金星周回軌道に乗っていない可能性も残されている。

 しかしJAXAの運用チームが、「はやぶさ」の時と同じく諦めず粘り強い対策を打っていくのは間違いない。筆者は「あかつき」に関わる人達の話を聞いて実機や打ち上げを目撃する過程で、これが本当にチャレンジングな試みであって、傍目に見えるほど容易ではないことを実感として感じられるようになった。チャレンジには成功する時もそうでない時もある。「はやぶさ」のような成功には賞賛を惜しまないが、「あかつき」がどのような結果になっても同じように心から賞賛したい。

森岡澄夫

 ニコニコ技術部で「超電磁P」という名で物作りをする本職のLSI研究者。「あかつき」搭載ミク・パネルの企画主催者。Twitterアカウントは@chodenzi。個人サイト


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