前方を見ているだけならそれほどヘンテコな絵にはならないが、横を向くと進むにつれて建物やクルマが変形していく。「Lucy in the Sky with Diamonds」や「Glass Onion」の世界だ。
トリップしそうになるので、たまに空を見上げると、ロンドンの青空が広がっている。
この地に行ったのはちょうど35年前、1986年の9月。新婚旅行、妻も僕もビートルズの大ファンとあってビートルズの聖地ツアーをし、その起点がロンドン、アビーロードの横断歩道だった。
世の中に定点カメラがはやり始めた頃、妻がアビーロードのカメラを見つけて、カクカク動く画像を見て喜んでいたのは前世紀の終わり頃だったろうか(今のはかなりの高解像度だ)。技術はついにここまで来た。
そういえば妻は「仮想自転車旅日記」というブログを2006年くらいに書いていた。家にあるエアロバイクを漕ぎながら、走った距離をもとに、地図にプロットして言葉と想像力で仮想的な自転車旅の記録をつけていくというものだった。なんという先見性だろう。
「すごいね」と褒めてあげたいところだが、一緒に歌うことはできても、言葉で伝えることはできない。
妻が隣でBianchiのクロスバイクを漕いでいるつもりになって、一緒に行くはずだったニューヨークのダコタハウスとか、リバプールのペニーレイン再訪とか、ビリー・ジョエルの曲「Movin' Out」で「そんなところに持ち家あったってね」と言われてしまうハッケンサックとか、いろいろ走ってみたい。
VZfitは自分のハンドルだけが見える1st Person View、後方から自分を見下ろす形の3rd Person View、そしてNo Person Viewを選べる。もう1つ、With Someone You Love Viewというのを設定して、そこに一緒に走りたい人の3Dモデルを置けるようにしてくれないだろうか。妻の3Dモデルはもう作ってあるので。
そんなことを願いながら、35回目の結婚記念日にVRゴーグルをかぶってペダルをこぐ。BGMは、新婚旅行時、カセットウォークマンに録音した妻との会話だ。
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