ミッキーマウスをはじめとするキャラクターでアニメーションをこれほどまでに発展させ、現在では全米三大ネットワークの1つであるABCやスポーツ専門放送局のESPN、ピクサーアニメーション、ミラマックスなどを傘下に収めるWalt Disney。強力なコンテンツを豊富に抱える同社が家電業界に供するコメントとして今回のスピーチ内容には大いに注目が集まっていた──。しかし、その内容は人気コンテンツとその新作紹介に終始。「業界を発展させる助言」はついに聞くことはできなかったのである。
Walt Disneyの社長兼CEOを務めるロバート・アイガー氏の基調講演は、ESPNの人気NFL中継番組「マンデー・ナイト・フットボール」を、アーノルド・シュワルツェネッガー、パリス・ヒルトンといった豪華なゲストが出演するオリジナルのパロディビデオで始まった。壇上にもマンデー・ナイト・フットボールのスタジオセットを模したものが用意されるなど、総合エンターテイメント企業らしく、スピーチであってもショウとして「魅せる」要素を大事にしていることが感じられた。
アイガー氏は、Walt Disneyを「アートが技術に挑戦し、技術がアートをインスパイアする場」だと定義づけた。同社はiTunes Store初となる映画やTV番組を提供する企業であり、同時に最大のハイ・ディフィニション(HD)ビデオコンテンツ供給企業でもある。同社は自身を「高品質のエンターテイメントを提供する、ほかに類を見ないブランド」と位置づけ、さらにファンの期待を裏切らない信頼性の高さも特徴に挙げている。また、質が高いコンテンツを、いかに簡単に、かつ手軽にユーザーに提供できるかも考えていて、例えば、NBAの試合結果コンテンツにESPN.comやABC.comなどのウェブサイトだけでなく、3G携帯電話などからもアクセスできるようになっている。
「コンテンツビジネスでユーザーの支持を得るには、適切なコンテンツを適切な時期に適切な価格で市場に投入するのが肝要だ」とアイガー氏は語る。iTunes Store、DisneyChannel.com、ABC.comなどを通じて、同社のコンテンツは120万回以上ダウンロードされているという。基調講演では同社の新たなコンテンツであるピクサー・アニメーションが制作中のフルCGアニメ「ラタトゥーユ」のデモムービーが上映された。
また、ABCで放送中の大ヒットTVドラマ「LOST」についても言及し、iTunes Storeで提供された初のテレビドラマ作品であること、ABC.comでのPC向けダウンロード配信だけでなく携帯電話でも全エピソードが閲覧可能であることなど、マルチプラットフォームでの展開が行われていることをアピールした。LOSTの登場人物によるアドリブたっぷりの特製デモムービーが上映され、登場人物がCESについて語る無理矢理なせりふや、LOSTの登場人物の一人である「ジャック」と大ヒット映画シリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの主人公「ジャック・スパロウ」をかけたダジャレ、物語の核心部分で突如現れる「現在画像が乱れております」のキャプションなどジョークあふれる構成に会場のあちこちから爆笑と拍手喝采がわき起こっていた。続いてLOSTジャック役のマシュー・フォックスとケイト役のエヴァンジェリン・リリーが登場して、会場の雰囲気に花を添えた。
さらにマンデー・ナイト・フットボール解説者のマイク・ティリコ氏が現れ、世界各国のESPNでHDクオリティの試合中継が配信されていることや携帯電話での動画ストリーミング、Podcast、パーソナライズが可能な個人ポータルサイト「MyESPN」、オンラインビデオプレイヤー「ESPN360」などが紹介された。
Disney.comでは、動画再生、ゲーム、チャット、ショッピングなどがすべてひとつのウィンドウ内で済ませられる「グローバルナビゲーション」を採用した新デザインになった。グローバルナビゲーション画面の下部からは、人気キャラクターにちなんだ画面デザイン、ゲーム、アバターチャットなどが利用できるキャラクターワールドにアクセスできる。さらに年齢や性別などによってワンクリックで表示されるコンテンツや画面デザインをカスタマイズできるパーソナライズ機能も利用可能だ。
また、仮想デスクトップ「Disney XD」(Extreme Digital)では、動画を見ながらゲームをプレイし、メッセンジャーでチャットをする、といったマルチタスクが可能。さらにウィジットを組み合わせて好みのデスクトップ環境を作成したり「Disney XD Headquarters」では各チャンネルの中で人気が高いものやオススメのものが一目でわかるようになっていたりするほか、自分専用のチャンネルを作成してコンテンツを登録するといった使い方も考えられている。
Walt Disneyの人気コンテンツとして忘れてはならないのは、大ヒットを収めたハリウッド映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズだ。スピーチの締めくくりとして、同作品プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー氏が春公開の新作「パイレーツ・オブ・カリビアン3」の撮影現場から駆けつけた。ラフな3Dで描画されたクライマックスシーンを含むデモムービーがちらりと公開されるなど、なにやらティーザー広告めいた雰囲気だった。
最後にアイガー氏は、新しいテクノロジーを積極的にコンテンツビジネスに取り入れることで、常に時代の最先端を走る企業でありたいと語り、今回のスピーチの幕を下ろした。
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