ゲリラ雷雨を把握するサポーター投稿メディア――ウェザーニューズの気象革命(前編):松村太郎のノマド・ビジネス(1/2 ページ)

» 2008年10月09日 07時15分 公開
[松村太郎,ITmedia]

 今回が連載の初回となる「ノマド・ビジネス」は、毎回モバイルビジネスを取り上げ、ライフスタイルとの関係性を見ながら将来像を模索するコラムである。ノマドとは遊牧民のこと。1人1人がケータイやPCなどの情報端末を持って昼夜動き回る様子を、現在のデジタルな遊牧民として捉え、そんな遊牧民をターゲットとしたビジネスがどのように展開されるのかを追っていく。

 またWebの世界では「クラウドコンピューティング」というキーワードから製品やサービスが生まれており、本連載ではコンピューティングやコミュニケーションの未来像を占うという目標も掲げていきたいと考えている。


Photo ウェザーニューズ広報部の上山亮佑氏

 初回に取り上げるのはウェザーニューズだ。社名から分かるとおり、気象ビジネスを扱う会社である。ウェザーニューズは“気象がモバイルと結びつくと、革命を起こす”というビジョンのもと、日々サービスづくりに取り組んでいる。

 まずはコンシューマー向けサービスの広報を担当する、ウェザーニューズ広報部の上山亮佑氏に、今夏の「ゲリラ雷雨」の話を聞いていこう。

 「実は今年は、さほど異常事態ではなかったんです。しかし雷雨が少し多かったと思います。気象的に見れば、夏の終わりに起きやすい気象条件でしたが、高気圧が不安定な配置になっていたことが主な原因です。ただ激しい気象も多かったため、今年は気象、特に雨に興味を持ったり、問題意識を持つ人が増えたのではないでしょうか」(上山氏)

 たしかに例年、夏の終わりは夕立が増える傾向にある。太平洋高気圧の張り出しが続かなくなり、上空に寒気が流れ込みやすくなると、大気が不安定になって夕立が起きやすくなる。今年はその寒気の入り方が継続したため連日のように夕立が起こり、こうした体験から雨の降り方に興味を持つ人が増えたのだろう。

 いつ降るか、いつ降られるか分からない――。そんな予測不能の突発的、局地的な雷雨は、もともと気象関係者の間で「ゲリラ雷雨」と呼んでいたそうだ。今年になってウェザーニューズが、毎朝送信しているメールサービスや交通デジタル広告の気象情報、そして「ゲリラ雷雨メール」「ゲリラ雷雨防衛隊」といったモバイルサービスの中でこの言葉を活用したため、マスコミや口コミで、この言葉が一挙に広まった。

 言葉の浸透が、人々の「体験」に基づいている点は、後に紹介するユーザー投稿型サービスを支える要素の1つである。

“ユーザー参加型”でしか成立しない「ゲリラ雷雨メール」

 気象予報が自由化したのは1995年。この自由化を機に、気象予報士という新たな資格が生まれ、たくさんの気象情報サービスが登場したものの、気象データの利用については依然として気象庁から配信されたものを活用するのが主流となっている。しかし、ケータイユーザーや都市のサービスに対して気象情報を提供しようとすると、この気象庁のデータでは足りない。水平距離の解像度が足りないのだ。

 それを感じさせるのが、ゲリラ雷雨の実体験である。僕自身も8月末に、ゲリラ雷雨に遭ったが、その降り方はとても不思議なものだ。

 東京都港区の青山一丁目付近で雷が鳴り響き、バケツをひっくり返したような雨に降られた。「これでは屋外でスポーツもできない」ということで、そこから地下鉄で2駅の麻布十番で夕食を食べようと降りてみると、そこは雨も降っていなければ、道路も濡れていなかった。これは駅間にして2.4キロ。ちょっと積乱雲の通り道からそれるだけで、同じ区内で距離が2駅しか離れていなくても、気象は全く変わってしまうのだ。

 気象庁が行う数値予報のうち、時系列予報などに活用する全球モデルは、水平解像度20キロ、1日4回の予報間隔となる。防災気象であっても、5キロ四方、1日8回の予報であり、1キロ程度、数10分で変化するゲリラ豪雨をきれいに捉えることは難しい。

 また、雨が降っているエリアを示す通常の雨雲レーダーは、上空2000メートル以上の「水分がある雲」を捉えているという。つまり、雨を降らせているかどうかは関係なく、あくまで上空の水分量のみを見ており、気象現況はとらえていないそうだ。こうした方法では、1時間単位の予測には対応できるが、それより細かい予測や現状の天気を知るのは不可能だ。

 一方、ウェザーニューズが今夏提供したゲリラ雷雨メールは、10分ごとに1時間先までの予測を伝える仕組みだ。気象庁が提供する情報よりも水平・時間的な解像度が圧倒的に高く、リアルタイムの天気も分かる。しかし、この予測には、“雨雲レーダーを使っていない”というから驚きだ。雨雲レーダーで捉えられない情報を発信しているのは、実は全国各地のケータイユーザーなのだ。

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