同じく展示されていたハイブリッド燃料電池システムは、機器の電力需要とリチウムイオンバッテリーの残量に応じて、自動的に出力モードを切り替える複合型のバッテリー。燃料電池のみで電力を供給し、過剰電力はリチウムイオンバッテリーの充電に回す“FCモード”、一時的な高出力時などにも対応できる従来のリチウムイオンバッテリーのみで電力を供給する“Li-ionモード”、高出力時に燃料電池とリチウムイオンバッテリーの両方で供給する“ハイブリッドモード”を状況に応じて制御する。
例えば、通常出力時はリチウムイオンバッテリーで安定して駆動、低出力時は燃料電池で駆動しつつリチウムイオンバッテリーを充電するといった制御ができるので、長時間駆動が望まれるノートPCや携帯電話用など、既存のリチウムイオンバッテリーの代替としても期待できそうだ。
このハイブリッド燃料電池を用いた、かなり具体的な試作機として「レイアウトフリー燃料電池スピーカー」「携帯型燃料電池充電器」「インテリア型燃料電池充電器」も展示する。いずれもメタノールを用いるダイレクトメタノール型燃料電池を内蔵し、充電器型はUSB端子経由で別の機器に電力を供給、燃料電池スピーカーは駆動そのものをハイブリッド燃料電池システムで行う。
携帯型燃料電池充電器は、ソニーのデジタルカメラ「Cyber-shot T」シリーズほどの小型サイズで、たたずまいもそれとなく似ている。上部の透明パーツがメタノールカートリッジ、右側面にUSB端子を備え、USB充電に対応する携帯電話やポータブルゲーム機といったモバイル機器への給電を想定する。
インテリア型燃料電池充電器も携帯型充電器と基本機能は一緒。ただ、据え置き用ということで大容量のカートリッジとLEDによるイルミネーション機能を備え、インテリアとしての用途も想定する。現行の携帯電話で、2機種同時(USB端子を2つ搭載)に1カ月分の充電をこれ1つでまかなえるという。
レイアウトフリー燃料電池スピーカーは、既存のワイヤレス音声送信システムとハイブリッド燃料電池システムを内蔵する、言葉どおりのAC電源ケーブルも必要ない“レイアウトフリー”スピーカー。一見するとコーヒーメーカーのような形状だが、下段にある円柱状のものがメタノールカートリッジで、インテリアとしても映えるようLEDのイルミネーションも備わっていた。
この試作機は257ccのカートリッジを備え、出力電力量は1ccあたり1Wh。出力2Wのスピーカーを備えるので、カートリッジ1本あたり、単純計算で133.5時間分(2時間の映画66本分)駆動する。「これを煮詰めて、レイアウトフリー“BRAVIA”も技術的には不可能ではありません」(説明員)
メタノールを使うコンシューマー向け燃料電池は、依然、コストとカートリッジ(のソケット)の規格化をいかにするかが課題にある。
ソニーの試作機のようにこのまま商品化できそうと思えるものであっても、ユーザーが“あたかも電池、あるいはライターを購入する”ように燃料を入手できなければ、コンシューマーへの普及は難しい。もちろんコストそのものやカートリッジの安全性も含めて、ソケットの規格化や供給システムの構築の議論を業界団体内で鋭意行っているとするがこの状況はここ何年か続いているように思う。2009年度は何らかが商品化されることを期待したい。
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