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» 2011年12月16日 14時00分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:ポストPC時代を象徴する「iPad 2」の強さ (1/2)

スマートフォンの普及から少し遅れて、タブレット端末の市場が活気づいた2011年。しかし蓋を開けてみればタブレット市場は「iPadが売れている」のであって、全てのタブレット端末がまんべんなく売れたというわけではなかった。iPad、そしてiPad 2の強さはどこにあるのか。

[神尾寿,ITmedia]

 クリスマスも間近に迫る中、アメリカの調査会社ニールセンが興味深いリポートを発表した。それは米国の6〜12歳の子どものうち、44%がiPadを欲しがっているというもの。同調査によると、iPadに加えて、iPod touchは30%、iPhoneは27%の子どもが「欲しい」と答えている。Apple製品が、他社のスマートフォンやタブレットはもちろん、任天堂の「ニンテンドー3DS」やMicrosoftの「Kinect for XBOX 360」を抜いて、アメリカの子どもたちのハートを捕らえているのだ。今のAppleは、ファミリー市場においてとても強い競争力と存在感を持っていると言っていいだろう。

 iPadはなぜ、これほどまでに“ファミリー層にとって魅力的”なのか。なぜ、他のAndroidタブレットではダメなのか。

 Apple ワールドワイドプロダクトマーケティング iPad担当のスコット・ブロドリック氏に話を聞きつつ、iPad 2がファミリー市場で高く評価されている理由と、その魅力について考えてみたい。

iOS 5の効果で、iPad 2の競争力がさらに向上

 周知のとおり、2010年1月に初代iPadが発表され、2011年3月に現在の「iPad 2」が米国で発売された。日本では東日本大震災への配慮から発売が2011年4月になってしまったが、その遅れを取り戻すかのように、好調な売れ行きを見せている。今年は国内外で他社製のAndroidタブレットも数多く発売されたものの、iPadの牙城を切り崩せていないというのが実情だろう。

 iPad 2がタブレット市場で強い競争力を持ち、クリスマス商戦でも人気商品になっている理由について、ブロドリック氏は「まず、ソフトウェアとハードウェアが高度にインテグレーションされていることがある」と話す。

 「特に今回のクリスマス商戦において、追い風となっているのが『iOS 5』です。これはiPhone 4Sの発売時にリリースされたものですが、iPad 2にも対応しています。iOS 5では200以上の新機能が追加され、その多くがiPadにおいても非常に有益であり、製品の魅力を底上げするものになっているのです」(ブロドリック氏)

 ことハードウェアの性能だけで見れば、iPad 2に追随するAndroidタブレット端末も登場している。しかし、AppleはiOS 5で、スマートフォン分野だけでなくタブレット分野でもユーザー体験のレベルを引き上げ、それをiPad 2というハードウェアと“調和させること”に成功した。これが販売開始から10カ月以上経っても、後発のAndroidタブレット端末にiPad 2が大きく差を付ける要因になっている。

 「例えば、Webブラウジングの面だけ取り上げても、iOS 5を搭載したiPad 2が魅力的になったのは一目瞭然です。iOS 5では新たにタブブラウジングに対応し、ブラウザの使い勝手が向上しました。さらにリーダー機能で、Webの画面をiPad 2で読みやすく表示することもできます。WebブラウジングはiPadで最も利用されている機能ですが、それがiOS 5で大きく進化したのです。この結果として、タブレット端末からのWebトラフィックのうち、全体の97%がiPadからというcomScoreの調査結果にもつながっています」(ブロドリック氏)

PhotoPhoto iPad 2をiOS 5にアップデートすると、ブラウザ「Safari」がタブ表示に対応する。従来よりも使い勝手が大幅に向上している。また新機能の「リーダー」では、Webコンテンツがまるで電子書籍のページのように再編集されて読みやすくなる。iOS 5の新機能により、iPad 2の魅力は発売当時より大幅に向上した

 OSをはじめとするソフトウェアの力でハードウェアの価値や真価が向上するのは、スマートフォンやタブレット端末などのスマートデバイスの特長だ。iPad 2はこの特性をうまく使って競争力を維持しているのである。

豊富な「iPad専用アプリ」が魅力を底上げ

 iOS 5というOS部分に加えて、iPad 2を魅力的なものにしているのが豊富な「iPad専用アプリ群」である。ブロドリック氏によると、iOSデバイスはすでに累計2億5千万台が販売されており、iOS向けアプリは約50万本がApp Storeに登録されている。そして、そのうち約14万本ものアプリが、iPadの画面サイズに最適化されたiPad専用アプリだという。

 「iPad 2の特長の1つが(9.7インチの)大画面のマルチタッチスクリーンですが、約14万本ものアプリが、このiPad/iPad 2の画面に最適化されて作られています。しかも、とても高いクオリティで、バリエーションも豊富です。子どもたち向けのマルチメディア絵本やゲーム、エデュテイメントソフトはもちろん、キッチンで主婦が使うレシピアプリなどもあります。これらはiPadに最適化され、iPadの画面を上手に使うようデザインされているのです。一方のAndroidタブレット向けのアプリはどうか。それを考えてもらえば、iPadのアプリ環境がどれだけ魅力的かを分かっていただけるでしょう」(ブロドリック氏)

 iOSもAndroidも、“スマートフォン向けのアプリの多くが、タブレットでも拡大表示されて動く”のは確かだ。しかし、タブレットに最適化されたアプリのユーザー体験は、スマートフォン用アプリの拡大表示とはまったく別次元のものである。取材では、日米のiPad用アプリをいくつか例に取ってデモンストレーションが行われたが、そこで紹介されたiPad専用アプリはどれも「iPadの画面サイズ/解像度」と「マルチタッチスクリーン」を活用しており、ファミリー層の利用シーンにぴったりのものばかりだった。

PhotoPhoto iPad用アプリ「CHARLIE BROWN Christmas」。子ども向けデジタル絵本だが、iPadの画面サイズとマルチタッチスクリーンを活用し、インタラクティブで楽しいものになっている
Photo iPad用アプリ「タニタ食堂」。iPad向けに最適化されており、画面がとても見やすく、UIも使いやすい

 翻ってAndroidタブレットの現状はどうだろうか。筆者自身、Androidタブレットを所有しているが、こと「ファミリー層向けのタブレット専用アプリ」の充実度で考えると、iPadのアプリ環境には遠く及ばないのが実際のところだ。とりわけ日本語アプリの少なさ・バリエーションの乏しさはいかんともしがたい。このタブレット専用アプリの充実度の違いは、現在のiPadとAndroidタブレットの大きな格差になっている。

 さらにブロドリック氏によると、iPad向けアプリの環境はさらに進化し、現在では「周辺機器と連動する新たなiPad用アプリの開発・投入が進んでいる」という。

 その一例として紹介されたのが、「Cars Appmates」である。これは日本では未発売だが、映画カーズをモチーフにしたゲームであり、“カーズの登場キャラクターのフィギュアを、iPad上のコースを走らせて遊ぶ”というものだ。詳しくは動画を見てもらいたいが、リアルなおもちゃとヴァーチャルなゲームの融合として、非常におもしろいアプリになっている。

PhotoPhoto リアルなフィギュアとアプリが連動する「Cars Appmates」。日本未発売だが、モノの動きとアプリ上のゲームが連動する様は秀逸
Photo Cars Appmatesのリアル連携の秘密は、フィギュアの下にあるタッチパターン。これが車種ごとに異なっており、iPad上で“接触したタッチパターン”に応じて、どのクルマが使われているかを判別する仕組みだ。iPadのマルチタッチスクリーンをうまく活用した事例と言える

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