ニュース
» 2012年08月01日 02時46分 UPDATE

SoftBank World 2012:営業スタイルの改革を目指すアサヒビール、iPadが果たす役割は (1/2)

iPadの導入自体を目的化せず、課題を解決するためのツールとして活用。トライアルからスタートし、本格展開へ――。こうした“成功につながるポイント”をおさえつつ、営業スタッフの業務スタイルの改革を目指しているのがアサヒビールだ。

[柴田克己,ITmedia]
Photo アサヒプロマネジメント、業務システム部担当課長の越間学氏

 iPadのようなタブレットデバイスを、日常業務の一部に取り込み、従来のワークスタイルの変革や競争力の強化につなげていこうとする試みが、さまざまな企業で行われている。

 そうした中、現時点で一定の成果を上げ、さらなる活用拡大のフェーズへと進もうとしている企業には、いくつかの共通点があるようだ。

 その1つは、デバイスの導入自体を目的化せず、現在の業務が抱えている課題の解決を主眼とし、その実現のためのツールとして、結果的にデバイスを選択している点。さらに、導入にあたっては小規模なトライアルからスタートし、そこでのユーザーのフィードバックを本格展開に十分に反映させるプロセスをとっている点だ。

 酒類、飲料事業大手のアサヒビールも、こうしたポイントを押さえつつ、営業担当者の業務スタイルを改革するという目標に向けて、タブレットデバイスを活用する試みを続けている。7月11日に開催された「SoftBank World 2012」において、アサヒプロマネジメント、業務システム部担当課長である越間学氏は「アサヒビールの営業スタイル改革プロジェクトとiPadの活用」と題した講演を行い、この取り組みについて紹介した。

 越間氏は「特別に、かっこいいことやすごいことをやっているわけではないが、さまざまな人々の協力を得てプロジェクトを進める中で見えてきた『本当にやらなければならないこと』『基本的なこと』について、情報を共有できれば」と話し、まずは業務の視点で、同グループの「営業改革プロジェクト」が目指すものについて述べた。

目指すのは「提案力の向上」と「時間の創出」

 酒類市場の縮小や顧客ニーズの多様化といった外部環境の変化、社員一人ひとりの生産性向上や効率的な経営資産活用といった社内的な要請に対応しうる「新たな営業スタイル」を生みだそうとする今回のプロジェクトは、グループの純粋持株会社であるアサヒグループホールディングス、事業会社であるアサヒビール、越間氏も所属するグループ共通の間接業務を担当するアサヒプロマネジメント、IT関連業務を受け持つアサヒビジネスソリューションズの4社共同で進められている。

 越間氏によれば、この営業スタイル改革で実現したかったことは2点に集約されるという。それは「提案力の向上」と「外勤・回訪時間の創出」だ。

Photo 営業スタイル改革プロジェクトの背景とねらい

 提案力向上の面では、写真や動画を利用したプレゼンテーションや、顧客からの問い合わせにその場で答えられる情報環境の整備といった要素がポイントになる。また、外勤・回訪時間の創出という点では、外出先でのメール対応や営業日誌の入力ができる仕組みを整えることで、余分な帰社回数を減らし、そこで生まれた時間をさらなる顧客対応に活用することを意図した。

 「時間の創出という点では、営業活動中の『途中帰社』を極力少なくすることを目指した。途中帰社の原因となっているのは、会社に返却しなければならない『社用車』と、会社からしか利用できない『システム』だった。社用車はできるだけ使用せず、日報など、業務のために必要なシステムは、一部を社外から利用できるようにすることを考慮した」(越間氏)

 越間氏によれば、プロジェクトの目標となるこの2点については、実際にiPadを利用する営業担当者に対しても常に意識するよう促し「この目的の達成のためにiPadを使う」ことを念頭に置いてもらうようにしているという。

 また、実際に営業活動の中でiPadをどのように運用するかについては、アサヒグループの企業文化等なども考慮したとする。越間氏は、例えばグループ全体の強みと考えている「コミュニケーション」と「チームワーク」という要素については、iPadの導入によって損なわれることがないよう配慮した。「会社にまったく来なくても仕事が完結してしまうような運用は、違うだろうと感じた」(越間氏)という。

 それ以外にも、年齢やスキルが幅広い社員全員がデバイスを活用できるよう「簡単な操作」で必要な機能が利用できること、ITに関する知識は最低限でも運用できることを考慮したとする。

パイロットでのフィードバックを十分に反映

 基本的な構想を立案した後、実際のデバイス配布にあたっては十数名での「パイロット展開」からスタートし、そこでの効果を利用者の声をもとに検証しつつ、徐々に拡大展開していくというスタイルをとっている。2011年9月から約6カ月にわたって展開したパイロット運用は、人事部門やマーケティング部門なども参画する形で進められ、そこでの評価をとりまとめて、2012年4月以降の拡大展開のフェーズへと進んでいる。

Photo プロジェクトは企画立案からパイロット展開、展開の拡大と段階的に進行中

 パイロット展開に参加した営業担当者からは、「提案力の向上」「時間の創出」という2つの目標について、iPadが役に立つ感触を得たとの感想が得られたという。特に「営業の武器となるツールとして使える」との反応は大きかったとする。

 また、その他の効果として、管理職では部下への指示の迅速化、内勤担当者からは外勤営業からの問い合わせ頻度の低下、管理部門からは紙資料の総量の削減といったメリットが報告されたという。

 一方で課題としては、このiPadを利用した「新営業スタイル」実践における活動指標の明確化や計画的活動の実施といったマネジメント面での強化、デバイスから活用できるコンテンツの拡充や運用体制の確立、アプリの整備といった点での必要性が見えてきたとする。これらの課題については、短期的に対応するものと長期的に取り組んでいくものとに分けて整理し、随時解決に取り組んでいく方針だという。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2016 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.