世界を目指し、未来を変える――「KDDI ∞ Labo」に選ばれた期待の新星たちKDDIのスタートアップ支援(1/2 ページ)

» 2012年09月28日 23時00分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo KDDI ∞ Laboの第3期に選出された5チームとメンターたち。満面の笑みでガッツポーズを決めた

 KDDIは9月27日、同社のスタートアップ支援プログラム「KDDI ∞ Labo」の第3期参加チームを発表した。第3期からはラボスペースが渋谷ヒカリエに移転しており、参加チームの紹介は新しいラボで行われた。

 KDDI ∞ Laboは、これからの時代にマッチしたサービスの開発を目指すエンジニアやベンチャー企業を支援するためのプログラム。アドバイザーにはモバイル業界で注目を集める企業の幹部や大学教授などそうそうたるメンバーが名を連ね、選ばれたチームはアドバイザーの指導を受けながら3カ月でサービスを完成させる。

 KDDIで新規ビジネス推進本部の副本部長とKDDI ∞ Labo長を兼任する増田和彦氏によると、第3期には100近い応募があったという。また、今回から新たに設けられた学生枠にも25の応募があり、参加が決まった5チームのうち2チームが学生枠での参加となった。

 次々と新しいトレンドが生まれるIT業界のスタートアップ企業が応募するとあって、今期も「新しい目線のサービスが目白押しだった」と増田氏。KDDIとして、新たなビジネスにチャレンジする人たちを最大限応援していきたいとエールを送った。

 参加5チームは、それぞれ5分の持ち時間を使い、これからラボで磨きをかけ、大きく育てていこうとしているビジネスの概要を紹介した。

Photo 渋谷ヒカリエの新しいラボ。天井から∞をかたどったライトが見下ろす

9人限定のSNS、大切な人とだけつながれる――Close

Photo REVENTIVE CEOの水田氏

 「本当に親しい友達とだけ使う、秘密コミュニティ」――。学生枠で選出されたREVENTIVEでCEOを務める水田大輔氏が披露した「Close」は、こんなSNSサービスだ。

 SNSといえば、どれだけの人とつながれるかに関心が集まりがちだが、多くの人とつながればつながるほど、息苦しさを感じたり、違和感を覚えたりする面もあると水田氏は指摘する。仕事関係でつながっている人もいれば、昔からの親友もいるなど、さまざまな関係性でつながっているSNSの世界では本音で話すのが難しく、結局は無難な話に終始することになりかねないからだ。

 Closeは、登録できる人数を9人に限定したSNS。気の合う仲間や親しい友人、大切な人と、安心してきがねなく交流できる場を提供するために生まれたサービスだ。「誰が親友なのか、誰が大切な人なのか。そういうことを定義するサービスがなかったので、Closeを立ち上げた」(水田氏)

 日々の活動を投稿するという基本的な使い方は一般的なSNSと同様だが、互いが親友として登録しあった場合にのみ、タイムライン上で情報の共有が始まる点が異なる。投稿を閲覧できるのは、気を許した人だけになるので、お気に入りの映画や音楽、本などといったプライバシー性が高い情報を投稿する場合でも、見栄を張ったり反応を気にすることなく、素の自分のままで投稿できるというわけだ。

Photo 最大9人しか登録できないところがポイント。気持ちよく使える秀逸なUIも見どころの1つだ

 フレンドの登録時に、「承認」や「拒否」といった概念を取り入れなかったのも、こだわった部分だ。「承認や拒否といった、自分の都合とは別の外部からの圧力にとらわれず、自分が居心地がいい場所を維持するために、好きな人を登録できるようにする」というのが、その理由だ。誰が誰をフレンドに追加したかといった関係性の探り合いもできないようにしているという。

 収益化については、本や映画などの投稿時にアフィリエイトリンクを付加することによって得られる収入のほか、投稿の分析による高精度のレコメンドサービスを検討しているという。「親友に誕生日やライフイベントが起こったときに、プレゼントやサービスをレコメンドする。親友なので、一定以上の単価のものを進めることができる」(水田氏)

 既にiPhone版アプリは公開されており、日本語のほかに、英語や韓国語、中国語に対応済み。KDDI ∞ LaboにはAndroid版の開発支援と、世界展開に向けたプロモーションやブランディングのノウハウを期待しているという。「シリコンバレーをはじめ、クローズドソーシャルが普及していないアジアでの普及を目指す」(水田氏)

photo Close

日々の行動、投稿すればするほど街が成長――LogTown

Photo Tritrue CEOの寺田真介氏

 自分が投稿した行動履歴に応じて街が進化する――。こんなユニークなサービス「LogTown」を開発しているのが、Tritrue CEOの寺田真介氏だ。利用者が楽しみながらライフログを残せるようにするとともに、残した履歴を振り返る機会を提供しようというのが狙いだ。

 日々の生活を記録するサービスとして、SNSやチェックイン、画像投稿など、さまざまなサービスが提供されているが、蓄積された行動を振り返っている人は少ないと寺田氏は指摘する。その理由として同氏は、(1)そもそも記録するのが面倒(2)記録したところで、それをどう生かせばいいかが分からない(3)さまざまなサービスがあるため情報が分散しており、一覧性に欠ける(4)プライバシーが気になる といった点を挙げる。こうした課題を解決するため、ログの記録や振り返りに“街を作る”というゲーム性を持たせたのがLogTownだ。

 面倒な記録は、普段使っているFacebookやInstagram、foursquareなどのサービスからLogTownがデータを自動で取得することで解決。アプリを使うだけで街が発展するようにした。こうして取得した情報は街に反映され、その街の様子を見ると自分の行動履歴が分かるという。例えば寿司を食べに行くと街に寿司屋が登場し、その回数が多ければ多いほど街に寿司屋が増える――といった具合だ。

Photo 日々の行動を投稿すればするほど街が発展する
Photo ライフログにまつわる課題をゲーム性を持たせることで解決させようという試み
Photo 記録した行動に応じて街が発展する。育てゲーの人気が高い国で人気を博しそうだ

 サービスごとに情報が分散するという課題も、各サービスの情報を1つの街の構成要素として集約することで解決できる。プライバシー面も、データを街で表すことで、他者には詳細を隠せるという。

 記録を残せば残すほど町が発展し、街の様子を見ることで自分がどこで何をしてきたかが分かるというこのサービスは、人に新たな気づきを与えると寺田氏。このサービスをひっさげて、世界進出を果たすのが目標だ。KDDI ∞ Laboには、今後のスマートフォン展開と、ブランディング戦略の立案に対する支援を期待しているという。

“起きられない人”同士が起こし合う――MorningRelay

Photo チーム目覚ましのエンジニア、佐藤拓也氏

 朝、起きられない――。こんないつの世にもある普遍的な悩みを、スマートフォンで解決しようというのが、チーム目覚ましの「MorningRelay」。起きられない人同士が協力し合って起こすというソーシャル目覚ましだ。

 早起きが苦手で、そのせいで大学を留年したというエンジニアの佐藤拓也氏は、MorningRelayの開発に至るまでに2本の目覚ましアプリを開発した実績がある。

 1つは位置情報を利用した目覚ましサービスで、設定した時間内に家を離れないと、自動で反省文がTwitterに投稿されてしまう「Morning Bomb」。時間通りに家を離れるには、それに間に合うように起きなければならないので、結果的に早起きする――という仕組みだ。

 なかなかユニークなアプリだが、利用した佐藤氏自身が「Twitterに投稿されるのが恐くなって、使えなくなってしまった」といい、お仕置きで人は起こせないことが分かったと振り返る。

 2本目のアプリとして開発したのは、時間通りに起きるとユーザーに代わって協賛企業が1円を寄付する「Morning+」。こちらも発想は面白いが、協賛企業が見つからなかったことや、「社会貢献」という固いイメージから普及に時間がかかりそうだったことから、次のアプリ開発に取りかかったという。

 こんな過程を経て生まれたのが、3本目の目覚ましアプリ、MorningRelayだ。“朝、起きた人が、まだ寝ている人を起こす”という連鎖を続ければ、起きられるのではないかというのが発想の原点。時差を生かして「日本の人がインドの人を起こして、インドの人がフランスの人を起こして、フランスの人がアメリカの東海岸の人が起こす――と、そんなリレーが続けば、みんながハッピーに起きられるのではないか」と、佐藤氏は期待を寄せる。

 MorningRelayアプリを起動すると、画面の右側に寝ている人(起こしてもらいたい人)の一覧が表示され、起こしたい人を見つけたら「声援」ボタンを押す。押された人のアラームは、スヌーズ状態になったときに声援が流れ、誰かが起こすのを応援してくれていることが分かる。スヌーズに人の気配を介在させることで、起きる気にさせようというわけだ。

Photo 目覚ましアプリの3作目は、起きられない人が互いに起こし合うソーシャル目覚まし。起こしあいのつながりは可視化する予定だ

Photo 朝や健康に関連する企業との連携で収益化を目指す。なお、早起きが苦手な佐藤氏が、このアプリを通じて起きられるようになっていく(であろう)様子をTwitterで逐次ツイートするという。IDは@morningrelay_jp

 ユーザーを増やすための策としては、起こし起こされる人たちのつながりの可視化や、「起きられない人」「たくさん起こしている人」などのランキング表示、早起きすると入手できるクーポンの提供などを検討中。収益化については、朝や健康に関する企業とのタイアップや寝具、健康関連メーカーとの提携、朝に必要な情報を集めたポータルサイトなどの展開を検討している。

 アプリは9月末をめどに関係者向けにα版をリリースし、10月末に希望するユーザーにβ版を提供。12月初旬に国内・海外正式版をリリースする計画。KDDI ∞ Laboには「本当に応援されたらうれしいのか」「朝どう応援されたらうれしいのか」といったコンセプトの検証、海外リリースのための支援を期待しているという。

photo MorningBomb

photo Morning+

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