家庭で電力を売って光熱費がゼロに、太陽光発電を備えた住宅でHEMSが広がるスマートホーム

電気料金の値上げが迫る中、スマートハウスで光熱費をゼロに抑える家庭が増えている。太陽光発電システムを搭載した住宅は昼間に余った電力を高い価格で売ることができるからだ。HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)と組み合わせた効率的な電力の利用法が広がり始めた。

» 2012年06月27日 10時40分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 スマートハウスの分野で先行しているセキスイハイムを例にとると、2011年度の新築住宅のうち83%に太陽光発電システムが採用された。既築住宅のリフォームと合わせると、同社だけで年間に約1万5000件のペースで太陽光発電システムを搭載した住宅が増えている。

 人気の理由は、昼間に余る太陽光発電の電力を電力会社に買い取ってもらうことで、電気料金を削減できる点にある。「実際に太陽光発電を利用している家庭の8割では、昼間の電力を売って光熱費がゼロになっている。中には光熱費がマイナスになる家庭もある」(積水化学工業の住宅カンパニー環境・快適住宅推進グループの太田真人課長)。

 7月1日にスタートする再生可能エネルギーの固定価格買取制度よりも早く、太陽光発電の余剰電力買取制度が2009年11月から始まっている。2012年度の買取価格は新制度と同じ1kWhあたり42円に設定されている。通常の家庭向け電気料金の約2倍の価格である。

 一般的な4人家族の場合で、電気やガスなどの光熱費に年間で平均25万円ほどかかる。同じくらいの金額の電力を売ることができれば、光熱費をゼロにできる計算だ。この結果、太陽光発電システムの導入コストを8年〜10年で回収できる、というのがセキスイハイムの試算である。

 太陽光発電の電力を可能な限り多く余らせるためには、HEMS(家庭向けエネルギー管理システム)を活用して家庭内の電力使用量と発電量を時間帯別に見られるようにすることが望ましい(図1)。「現在では太陽光発電とHEMSのセットが新築住宅の標準仕様になっている」(積水化学工業の太田氏)。

ALT 図1 電力の売買状況を管理できるHEMSの画面。出典:積水化学工業

 さらに電力会社との契約を時間帯別の料金プランに変更することで、昼と夜の電力使用量を調整して電気料金の削減額を大きくすることができる。時間帯別の料金プランは昼間のピークタイムが高く、夜間は大幅に安く設定されている。昼間に太陽光発電の電力を使って、夜間に安い電力を買えば、昼間に余らせた電力を高く売ることで、電気料金をゼロあるいはマイナスにすることも可能になるわけだ。

 最近はインターネット経由で家庭の電気料金を毎日計算してくれるHEMSが増えてきた。電気料金の削減につながるのであれば、太陽光発電と合わせてHEMSの導入も急速に進むだろう。

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