太陽光発電と自動車で全国1位、2020年にソーラー普及率14%へ日本列島エネルギー改造計画(23)愛知

愛知県は住宅向けの太陽光発電システムの導入件数で全国のトップを走り続けている。2020年までに40万戸の住宅へ広げて県内の普及率を14%まで高める計画だ。さらにトヨタ自動車の地元である利点を生かして、次世代の燃料電池自動車の活用にも積極的に取り組む。

» 2012年12月18日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 これまでに国から補助金を受けた件数だけを見ても、すでに愛知県では6万戸を超える住宅に太陽光発電システムが設置されている。第2位の埼玉県を大きく上回る圧倒的な多さだ。太陽の熱を利用したシステムの導入も進んでおり、太陽光発電と太陽熱利用の両方で全国最大の規模になっている(図1)。

図1 愛知県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 愛知県には戸建住宅が多いことに加えて、年間の日照時間が全国でもトップクラスの長さであることが大きな要因になっている。気象庁の統計データによる全国の比較マップを見ると、日本の太平洋側でほぼ中央に位置している愛知県と静岡県の日照時間が長い(図2)。それだけ太陽光発電の電力量も多くなるわけだ。

 良好な立地を背景に、さらに太陽光発電システムの導入量を拡大する計画が着々と進んでいる。愛知県では2020年度の温室効果ガスの排出量を1990年度比で15%削減する目標を掲げ、その第1の施策として再生可能エネルギーの拡大を積極的に推進する方針だ。

図2 全国の年間日照時間(気象庁による)。出典:愛知県環境部

 具体的な数値目標と取り組みは、住宅向けと事業者向けの2つに分けて設定した。いずれの目標も極めて意欲的である(図3)。住宅においては太陽光発電の導入件数を40万に増やして、普及率を14%に引き上げる。平均して7戸に1戸の割合で太陽光発電システムが設置されることになる。

図3 2020年に向けた再生可能エネルギーの拡大施策。出典:愛知県環境部

 同様に事業者にも太陽光発電設備を広げて、合計で実に120万kW(1200MW)の発電規模を実現する計画だ。まず公共施設に率先して導入するほか、大規模なメガソーラーの建設も促進していく。

 今のところ愛知県内にはメガソーラーは1か所あるだけだ。中部電力が2011年10月に運転を開始した「メガソーラーたけとよ」(図4)で、発電能力は7.5MWある。年間の発電量は730万kWhを見込み、約2000世帯の電力使用量に相当する。現時点で国内で稼働しているメガソーラーの中ではトップ5に入る。

図4 メガソーラーたけとよ。出典:中部電力

 もっと大規模なメガソーラーの建設計画もいくつか決まっている。その中で最大のプロジェクトは三井化学が県南部の渥美半島にある広大な社有地に建設するもので、国内最大級の50MWの発電能力を実現する。2014年10月の稼働を予定しており、完成すれば愛知県の1200MWの目標に向けて一歩前進することになる。

 このメガソーラーは立地を生かして風力発電を併設する点でもユニークだ。風力だけで6MWの発電を可能にする。完成予想図を見ると、海に面した場所に3基の大型風車を設置する形になっている(図5)。大規模な太陽光発電と風力発電の設備を一体に建設する事例は国内初と言える。愛知県と地元の田原市も補助金を出して支援する。

図5 たはらソーラー・ウインド。出典:三井化学

 太陽光発電の拡大と合わせて、愛知県が力を注いでいるのが次世代エコカーの普及である。電気自動車やプラグインハイブリッド電気自動車のほか、水素と酸素を使って発生させた電気で動く燃料電池自動車(図6)の導入拡大にも取り組む。これらの次世代エコカーを2020年までに合計200万台に増やして、県内の自動車の4割まで普及させることを目指す。

図6 燃料電池自動車(トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業)と移動式水素ステーション。出典:あいちFCV普及促進協議会

 愛知県はトヨタ自動車の本拠地であり、自動車の登録台数は全国トップの500万台にのぼる。第2位の東京都と比べて50万台も多い。この国内最大の自動車王国で、環境負荷の小さい次世代エコカーが先行して普及する意義は極めて大きいものがある。

 太陽光発電と次世代エコカーの両分野で、愛知県が日本のエネルギー改革の先頭を走り続けることになる。

2014年版(23)愛知:「太陽光の先進県がバイオマスで全国1位、木質から廃棄物まで燃料に」

2013年版(23)愛知:「太陽光発電で全国のトップを快走、加速するメガソーラー開発に風力や小水力も」

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −北陸・中部編−」をダウンロードへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.