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» 2013年02月19日 15時00分 UPDATE

電力供給サービス:電力不足を全国レベルで解消、地域間の連系能力を増強

夏や冬に特定の地域で電力不足の懸念が生じる一方で、電力が余る地域もある。地域間で電力を融通するための連系システムを強化すれば、全国レベルで需給バランスを調整できる幅が広がる。最大の問題は周波数が異なる東西間の連系能力だが、ようやく設備を増強する動きが進み始めた。

[石田雅也,スマートジャパン]

 政府による電力システムの改革は3段階で進めることが決まり、最初に「広域系統運用機関」の設立から着手する(図1)。現在のような地域別の電力会社ごとに需給バランスを維持する非効率な体制を改めて、全国レベルで需要と供給を調整できるようにすることが目標だ。

kaikaku_schedule.jpg 図1 電力システムの改革に向けた実行スケジュール(画像をクリックすると拡大)。出典:電力システム改革専門委員会

 そのためには調整役になる運用機関を設けるだけでは不十分で、地域間で電力を融通し合える仕組みが必要になる。電力会社による送配電ネットワークを連動させて、電力が余っている地域から足りない地域へ送るシステムである。

電力需要に対応できない現在の連系設備

 電力業界では送配電ネットワークを「系統」と呼び、系統に接続することを「連系」と呼んでいる。従来から地域間で連系する仕組みはあるものの、その容量が小さいために、現状では十分な電力を地域間で送り合うことが難しい。

 実際に各地域の電力需要と地域間の連系能力を比較してみれば、現在のシステムが不十分であることは明らかだ(図2)。最も弱い部分は北海道と東北の間で、東北から北海道へ送電できる電力は最大でも北海道の需要規模の1割程度しかない。

zenkoku_renkei.jpg 図2 全国9地域の需要規模と地域間連系線の送電容量(2012年4月時点)。出典:電力システム改革専門委員会

 もうひとつの大きな問題点は、周波数が違う東日本と中日本/西日本の間の連系能力である。東日本の3地域の需要規模は8000万kW、一方の中日本/西日本の6地域は合計で9000万kWを超える。ところが、この両地域を結ぶ連系設備の能力はわずか103万kWしかない。停電のリスクを回避する予備率3%を確保するためには、現状の3倍の300万kW程度が必要だ。

 東日本大震災が発生した2010年の夏には、東北と東京で計画停電を実施せざるを得なくなった。電力に余裕があった中日本/西日本から大量の電力を送ることができれば、計画停電を回避あるいは少なくとも実施規模を縮小することができた。逆に2012年の夏には関西をはじめ西日本で電力不足の可能性が生じ、さらに今冬は北海道で同様の不安が続いている。

 連系能力の不足が日本の電力需給を不安定にしている大きな要因である。この問題を改善すれば、特定地域の電力不足を全国レベルの需給調整によって回避できるうえに、各電力会社の発電量を減らすことも可能になる。

東西間の設備増強が始まる、2020年度に2倍の能力へ

 2012年2月から始まった政府による電力システム改革の検討と合わせて、地域間の連系能力を強化する計画の策定が進んできた。最も重要な東日本と中日本/西日本を結ぶ東西間の連系設備を2020年度までに現在の約2倍にあたる210万kWへ増強する計画だ。最終的には300万kWまでの能力強化を想定している。

 東西間を結ぶルートは複数あって、それぞれの連系設備を増強するためのコストと工期、将来の拡張性などが検討された(図3)。その結果、東京電力が長野県で運営している「新信濃変電所」の周波数変換設備(FC:Frequency Converter)を増強して、現在の60万kWから150万kWに拡大する案が有力になっている。

tozai_renkei.jpg 図3 周波数が違う東日本(50Hz)と中日本/西日本(60Hz)の間を結ぶ連系ルート。出典:電力システム改革専門委員会
chubu_renkei.jpg 図4 東西間の連携設備の現状。出典:中部電力

 政府の委員会による試算では、この設備増強に必要なコストは約2000億円と見積もられている。基本的には9つの電力会社が分担すべき費用だが、国策として早急に進めるために政府の援助が望ましいところだ。

 すでに一部の連系設備の増強計画が進んでいる。中部電力は静岡県で運営する「東清水変電所」の連系能力を2013年2月15日から30万kWに拡大した(図4)。これにより東西間の連系能力は3か所の合計で120万kWになった。そして計画通りに新信濃変電所の連系設備を90万kW増強できれば、目標の210万kWに到達する。

北海道−東北間も早急に30万kWの増強が必要

 次に重要な北海道に向けた連系設備の強化計画は、まだ具体的になっていない。政府の委員会は現状の60万kWの連系能力を早期に90万kWへ拡大する必要があると指摘している。この連系設備を運営する電源開発(J-POWER)に加えて北海道電力と東北電力が共同で取り組むべき重要かつ緊急の課題である。

 さらに北海道と東北では風力発電の拡大が見込まれることから、風力による電力を東日本の3地域で有効に使えるようにするための連系設備の増強も求められている。この点では北海道電力と東京電力が共同の実証実験を始める。

 北海道にある風力発電所からの電力のうち、風況によって変動する分を東京へ送る試みである。最大20万kWまでの風力発電設備を対象に連系の可能性を実証する。同様の実証実験は東北電力と東京電力の間でも開始する予定になっている。

 今後は全国各地で太陽光や風力による発電量が増加していく。天候によって変動する再生可能エネルギーの電力を地域内で最大限に活用するための連系設備も重要になってくる。中国電力は2013年1月から、地域内で送配電ネットワークに接続できる風力発電設備の規模を62万kWから100万kWに増やした。

 日本の電力システムの中核になる送配電ネットワークの増強は地域間と地域内の双方で不可欠になっている。電力会社の送配電部門を独立させる「発送電分離」が2020年度までに実施される見通しになり、それまでに連系設備の強化を進めておく必要がある。

 発送電分離には電力会社が抵抗する姿勢を見せているため、連系設備の増強に本腰を入れて取り組むかどうか不安な面もある。多額の設備コストの問題も含めて、政府のリーダーシップが問われるところだ。

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