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» 2013年03月05日 09時00分 UPDATE

日本列島エネルギー改造計画(41)佐賀:「太陽光王国」へ遺跡にメガソーラー、住宅の普及率は全国1位

家庭に太陽光発電システムが最も普及しているのは佐賀県だ。国の補助金の申請件数は県内の全住宅の4%に達し、全国平均の2.5倍の高さである。さらに「太陽光王国」を目指してメガソーラーの建設計画が進む。風力や原子力の大規模な発電所もあり、日本の将来の縮図が見える。

[石田雅也,スマートジャパン]

 九州の各県は日照時間が長くて、太陽光発電に適した場所が広がっている。経済産業省の調査によると、住宅用の太陽光発電システムの普及率では上位4位までを九州勢が独占する。第1位が佐賀県で、次いで熊本県、宮崎県、大分県の順になる。

solar_home.jpg 図1 住宅用太陽光発電システムの設置目標。出典:佐賀県統括本部

 4年前の2009年から始まった国の補助金の申請件数を見ても、佐賀県からは累計で1万2000件以上の申請が出ている。その比率は県内の住宅数の4%に達し、全国平均の1.6%に対して2.5倍も高い。現在でも拡大ペースが衰えることはなく、2011年度から推進中の「総合計画2011」では2014年度までの4年間に太陽光発電システムの設置件数を倍増させる目標を立てている(図1)。

 この計画の中で佐賀県は「太陽光王国」の実現を掲げた。事業者向けにも支援制度を充実させて、工場などへの導入やメガソーラーの誘致を進めていく。メガソーラーは2011年度の時点で実績ゼロの状態から、2014年度に30MW(メガワット)の規模まで拡大させる計画だ。この方針に沿って県内の各自治体がメガソーラーに適した土地を選定して事業者の誘致に乗り出し、2012年度に入ると建設計画が続々と決まり始めた(図2)。

saga_megasolar.jpg 図2 メガソーラー候補地。出典:佐賀県農林水産商工本部

 その中でも最大のプロジェクトが、県の東部にある神埼(かんざき)市で進んでいる。弥生時代の遺跡として有名な「吉野ヶ里(よしのがり)歴史公園」に隣接する広大な未利用の土地に、大規模なメガソーラーを建設する計画である。

 この土地は28年も前から工業団地を開発する予定になっていたが、利用する企業が見つからず、放置されたままになっていた。景観上も好ましくないため、県が目指す「太陽光王国」のシンボルとしてメガソーラーを建設することにした(図3)。

yoshinogari_nttf.jpg 図3 吉野ヶ里メガソーラーの設置イメージ。出典:NTTファシリティーズ

 遺跡の貴重な埋蔵文化財を保護するために、太陽光パネルを設置する基礎工事では土地を深く掘らない方法をとる。さらに景観を損なわないように、パネルの高さを低く抑えるほか、周囲に緑地帯を設けることで歴史公園にふさわしい設備にする。2013年2月中に着工して、6月末には発電能力12MWの国内最大級の規模で運転を開始する予定だ。

ranking_saga.jpg 図4 佐賀県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 着々と規模を拡大中の太陽光発電だが、これまでは住宅への導入が中心だったため、県全体の導入量はまだ多くない。むしろ小水力発電や風力発電のほうが規模は大きい(図4)

 佐賀県は北側に玄界灘があり、北部の沿岸地域は風力発電に適している。稼働中の風力発電所で最大の規模は唐津市にある「肥前風力発電」である。20基の大型風車を使って30MWの発電能力を発揮する国内でも有数の風力発電所だ(図5)。

 この発電所は2012年10月に大阪ガスグループが買収したことでも話題になった。

hizen_osakagas.jpg 図5 肥前風力発電。出典:大阪ガス

 さらに唐津市の隣にある玄海町でも9MWの風力発電所が動いている。唐津市と玄海町がある東松浦半島は玄界灘に突き出る形になっていて、全国の他の半島と同様に、風力をはじめとして数多くの発電所が集まる立地である。

 玄海町の風力発電所の近くには、九州電力の「玄海原子力発電所」がある(図6)。現在は運転を停止しているが、1〜4号機を合わせると348万kW(3480MW)にのぼる圧倒的な発電能力がある。

genkai_kyuden.jpg 図6 玄海原子力発電所。出典:九州電力

 西日本で最大の原子力発電所で、従来は九州電力の供給力の2割以上をカバーしていた。佐賀県の古川康知事は国が進める原子力安全規制の進展を注視しながら、「現時点では玄海原子力発電所の再稼働について言及する段階にはない」と中立的な姿勢をとる。

 いずれにせよ再生可能エネルギーの拡大が不可欠と判断して「太陽光王国」を目指すことに決めた。住宅用と事業者用、さらにメガソーラーを加えた発電設備の普及を素早く進めていく。

*電子ブックレット「日本列島エネルギー改造計画 −九州・沖縄編−Part I」をダウンロードへ

2014年版(41)佐賀:「ごみと下水から電力・熱・水素を地産地消、排出するCO2は植物工場に」

2013年版(41)佐賀:「イカの本場で潮流+風力発電、近海に浮かぶ水車と風車が電力を作る」

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