石油からガス火力へ設備更新を急げ、環境省が中部電力に意見書法制度・規制

火力発電によってCO2排出量が増加している対策として、環境省が石油火力からガス火力へ設備を更新するよう電力会社に求め始めた。中部電力が4年後の2017年度に運転を開始する「西名古屋火力発電所」の新設備を早期に稼働させるため、環境影響評価の審査期間を約3か月短縮する。

» 2013年05月29日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 中部電力の「西名古屋火力発電所」は稼働中の1〜4号機のすべてが石油を燃料にする旧式の発電設備で、すでに運転開始から40年以上を経過している。4基の合計で119万kWの発電能力があるが、これを最先端のガス火力発電設備に更新する計画だ。新設備の「7号系列」は2基で構成して、稼働すると231万6000kWの発電能力になり、現行の約2倍の規模に拡大する(図1)。

図1 「西名古屋火力発電所」の設備更新計画。出典:中部電力

 中部電力が2012年7月に経済産業大臣に届け出た計画によると、7号系列の工事は2013年12月に開始して、1号機を2017年9月から、2号機を2018年3月から運転開始する予定になっている。もともとの計画では工事開始を2014年度、運転開始を2019年度と見込んでいたが、スケジュールを約2年早めて進行中だ。

 新たに環境省が工事開始前の環境影響評価の審査期間を従来の270日程度から180日程度に短縮する方針を明らかにしたため、さらに運転開始を早められる可能性が出てきた。環境省は中部電力に提出した環境影響評価に対する意見書の中で、新設備の早期稼働を求めるとともに、発電効率の悪い発電所の設備利用率を低い水準に抑えるように促している。

 西名古屋火力発電所の新設備は天然ガスによるコンバインドサイクル発電方式を採用して、発電効率を62%程度まで高める。CO2排出量は現行の設備と比べて電力1kWhあたり47%も削減できる見込みである。

 中部電力は西名古屋火力発電所の近隣に、天然ガスを燃料とする「知多第二火力発電所」を運営している。2つの発電所を海底シールドトンネルで結び、天然ガスの供給ルートを構築する(図2)。

図2 発電設備の更新に合わせて敷設する燃料ガス導管。出典:中部電力

 この計画と並行して、中部電力は大阪ガスと共同で2017年から米国産のシェールガスを輸入するプロジェクトを進めている。ガス火力発電の拡大によってCO2排出量の削減と同時に、燃料費を削減できる可能性も高まってきた。石油からガスあるいは石炭火力への移行は長期的に電気料金を抑制することにつながるだけに、各電力会社にとっては最重要の課題になる。

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