東京湾の東側に広がる千葉県はエネルギー供給基地の役割を担い、沿岸部では火力発電所や風力発電所、日本で最大規模のバイオマス発電所も稼働中だ。新たにメガソーラーの建設計画が県内各地で進む一方、太平洋側では国内初の本格的な洋上風力発電設備が運転を開始した。
千葉県では最先端のガス火力発電所が数多く稼働していて、関東地方のエネルギー供給に大きな役割を果たしている。さらに今後は洋上風力と太陽光を中心に再生可能エネルギーの導入量が急速に増える見通しで、その役割はますます大きくなっていく。
中でも注目は洋上風力発電である。火力発電所が建ち並ぶ東京湾岸とは反対側の太平洋沿岸は風力発電に適している。広い洋上には発電設備を設置できる場所が無限にある。これまで国内では海岸線から1キロメートル以上の洋上で風力発電を実施した例はなかったが、ついに2013年3月に、千葉県の銚子市の沖合3キロメートルの海上で大型の風力発電設備が運転を開始した(図1)。
東京電力とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が共同で進めている実証研究プロジェクトで、風車の高さは海面から126メートルに達する。水深は12メートルと浅いため、発電設備を海底に固定する「着床式」を採用した(図2)。1基で2.4MW(メガワット)の発電能力があり、一般家庭1200世帯分の電力を供給することができる。
実際に発電した電力は海底の送電ケーブルを経由して、銚子市の海岸にある変電設備から東京電力の送配電ネットワークに送り出している。洋上の風車の近くには観測タワーもあり、風速や風向き、波の高さなどを常に測定することができる。洋上風力発電の安全性や環境への影響、商用時に欠かせない運用技術を含めて総合的に検証する体制だ。
この実証研究は2014年3月まで続ける予定で、検証結果を見て発電設備の拡大を検討することになる。同様の実証研究は福岡県の北九州市の沖合でも進んでいるほか、福島県の沖合では発電設備を海面に浮かせる「浮体式」による大型風車の建設が2013年内に始まる。千葉県が洋上風力発電の分野で先頭を走り続けられるかどうかは、地元の自治体や民間事業者を巻き込んだ推進体制にかかっている。
自治体と民間事業者のあいだの連携は、すでに太陽光発電の分野では活発になってきた。特に規模が大きいプロジェクトとして、東京湾に面した富津(ふっつ)市で進行中の40MWのメガソーラーがある。
もともと砂利の採取に使っていた200万平方メートルにも及ぶ広大な土地の一部にメガソーラーを建設する計画だ(図3)。年間の発電量は4200万kWhを見込んでいて、一般家庭で1万1500世帯分の電力使用量に相当する。運転開始は2014年8月の予定で、完成すれば関東地方で最大のメガソーラーになる。
同じ富津市内では千葉県が所有地を事業者に貸与して4MWのメガソーラーを建設するほか、県内の浄水場や取水場でも民間事業者が太陽光発電と小水力発電を実施することが決まっている(図4)。3件を合わせると5MWの発電能力になり、千葉県は事業者からの土地使用料と納付金で年間に約5000万円の収入を得る見込みだ。
これまで千葉県の再生可能エネルギーの導入量は関東の中でも東京都と並んで最も低かった。しかし最近ではバイオマス発電の導入量が一気に増えて、千葉大学による調査では全国のトップに躍り出た(図5)。
バイオマス発電が急増した大きな要因は、東京湾岸で稼働している「市原グリーン電力」が対象に加わったことによる(図6)。発電能力が50MWもある大規模な発電設備で、燃料には建設資材を中心にした木質チップを80%、古紙やプラスチック類の廃棄物を固形燃料にしたRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)を20%利用する。
国内のバイオマス発電所では神奈川県にある木質専用の「川崎バイオマス発電所」が33MWで最大とみなされてきた。市原グリーン電力の木質チップの分だけを換算すると40MWになり、実質的には川崎バイオマスの規模を上回る。
このところ千葉県に限らず首都圏では、廃棄物を活用した発電設備が増えてきた。再生可能エネルギーの固定価格買取制度でも各種の廃棄物を燃料にした発電設備は認定対象に含まれている。都市ならではのバイオマス発電が今後さらに増えていくことは確実で、市原グリーン電力は先行事例になる。
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2015年版(12)千葉:「山にメガソーラー、街で水力とバイオマス、海では風力と波力も有望」
2014年版(12)千葉:「東京湾岸にメガソーラーが続々誕生、砂利採取場も最終処分場も発電で稼ぐ」
2012年版(12)千葉:「半島に広がる火力と風力の発電所、関東の電力供給基地を担う」
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