通信機能の仕様が不統一のまま、開発が進むスマートメーター電力供給サービス

電力システムの改革に不可欠なスマートメーターで問題点が浮上してきた。本来は電力会社間で仕様を統一すべきところだが、現状では通信機能の仕様が統一されないまま開発が進んでいる。コストが増加するうえに、電力使用量などのデータを地域の電力会社にしか送信できない可能性がある。

» 2013年07月26日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 電気料金の値上げとスマートメーターは密接な関係がある。企業や家庭にスマートメーターが普及すれば、電力会社は多彩な料金メニューを提供できるようになる一方、スマートメーターの設置に必要なコストが電気料金に反映される。電力会社は値上げの申請にあたって、スマートメーターの導入費用を原価に盛り込んでいる。

 東北電力と四国電力が申請中の値上げ案に対して、政府の委員会が7月24日に公表した査定方針案を見ると、東北電力は2015年度に84億円、四国電力は2014年度と2015年度の2年間に57億円をスマートメーター関連費用として申請した。この方針案の中では両社のスマートメーターの仕様についても触れている。

 委員会によると、東北電力は東京電力のスマートメーターの仕様を採用する方針であるのに対して、四国電力は東京電力と関西電力のどちらの仕様を採用するか決定していない。さらに通信方式について四国電力は自営の光ファイバー網を前提にして費用を申請している。

 実は資源エネルギー庁が1月に関西電力と九州電力の値上げに関連して委員会に提出した資料の中でも同様の問題に言及していた。スマートメーターを構成する3つのユニットのうち、2つは両社で共通の仕様を採用しているものの、通信ユニットだけは仕様が異なることを示している(図1)。

図1 関西電力と九州電力のスマートメーターの仕様。出典:資源エネルギー庁

 結局のところ、スマートメーターは「東電仕様」と「関電仕様」の2種類に分かれて、さらに通信機能の仕様は各電力会社で不統一のまま開発が進んでいく可能性が大きい。スマートメーターの通信ネットワークは遠距離をつなぐWAN(ワイドエリアネットワーク)と近距離をつなぐFAN(フィールドエリアネットワーク)の2本立てで構成することになっている(図2)。

 このうちWANの通信方式は主に3種類が候補になっていて、電力会社が所有する光ファイバー、通信会社が運営する光ファイバー、そして携帯電話で使われている3Gなどの無線である。一方のFANは3Gなど高出力の無線のほかに、低出力のマルチホップ方式による無線、電力線を使ったPLC(パワーラインコミュニケーション)の3種類が候補になっている。

図2 スマートメーターの通信ネットワーク。出典:東京電力

 東京電力はコスト削減に加えて接続性と拡張性を理由にオープンな仕様の採用を求められ、WANとFANそれぞれで3方式の中から複数を選択する方針を表明している。すでに通信システムの開発は公募を経て東芝に発注済みだ。しかし政府の委員会や資源エネルギー庁が指摘する通りであれば、他の電力会社の通信方式が東京電力の仕様と共通になる可能性は小さいと考えられる。

 各電力会社が個別に通信システムを開発すれば、当然ながら開発や保守のコストが重複してかかり、電気料金のベースになる原価が増える。さらに通信方式が異なると、各地域のスマートメーターから隣接する地域の電力会社にデータを送れなくなることも予想できる。電力システムの改革は課題山積である。

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