節電を商業活動と結び付ける、デマンドレスポンスが開く新市場エネルギー管理

SBエナジーとヤフーは共同でデマンドレスポンスの実証実験を2013年9月から開始する。両社の取り組みでは節電効果はもちろん、商業施設への誘導効果を強く狙っており、他社の取り組みとは力点が異なる。

» 2013年08月26日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 電力の需要が、供給量の上限に近づいたときどうするか。消費者に限界が近いという情報を伝えて、応答を求める仕組みはまだ完成していない。そこで国をはじめ、電力会社やEMSアグリゲーターなど関係者がより効果的なデマンドレスポンスの開発、運営に取り組んでいる。

 デマンドレスポンスとは、電力の需給がひっ迫したときに節電を求める仕組みだ。ひっ迫していることを伝える仕組み、受け取った連絡に応じてうまく節電する仕組み、節電にどの程度応じたかによって、インセンティブ(報酬)を支払う仕組みの3つが最低限必要だ。

 各種の取り組みは、この3つの仕組みのうち、どこに力点を置くかが異なっている。SBエナジーとヤフーが2013年9月2日から開始する実証実験では、インセンティブに力点を置く。電力会社やEMSアグリゲーターが取り組む場合とは異なり、第三者がデマンドレスポンスをビジネスとして立ち上げる場合は、ユーザーがどの程度インセンティブに応答するか、インセンティブの授受自体がビジネスになるかどうかが重要なのだという。

 両社にとって、デマンドレスポンスとは、ネガワット(節電)を経済的なインセンティブで促進することだ。具体的には、地域のスーパーなどで利用可能なクーポンやポイントを計画している。スマートフォンやPCに直接クーポンやポイントを送る計画だ。

 「節電につながるかどうかが最も大切だ。加えて、ユーザーにとってどの程度インセンティブがあるのか、その結果、どの程度店舗への誘導効果があるのかを実証実験では知りたいと考えている」(ソフトバンク)。効果があった場合には事業化につなげるという。

 図1に実証実験の大枠を示した。2種類の手法を計画していることが分かる。パターン1は一般的なインセンティブだ。パターン2は計画した時間に外出を促すという考え方だ。「クールシェア」に近い考え方である。

図1 実証実験の内容。2種類のパターンを計画している。出典:SBエナジー、ヤフー

ソーラーフロンティアのシステムを利用

 実証実験では、全国に店舗網をもつ大手のリテール企業と協力する予定だ。デマンドレスポンスを求めるユーザーは最大1000件を予定している。

 デマンドレスポンスを実現するには消費電力の見える化が必要不可欠だ。節電を実行した記録がなければインセンティブが有効だったかどうかも分からない。SBエナジーとヤフーの実証実験ではソーラーフロンティアの見える化サービス「フロンティアモニター」を使う。このため、実証実験のユーザーは同サービスの導入者がほとんどを占める形だ。

 フロンティアモニターは、配電盤に接続して消費電力を記録する「ホームサーバー」とディスプレー、クラウドサービスを組み合わせた見える化サービスだ。ユーザーから見ると、消費電力情報やインセンティブなど必要な情報のやりとりはスマートフォンやPCで完結しているように見える。実証実験で得た電力量のデータはヤフーが運用するYahoo! JAPANのクラウドストレージに蓄積する。今後は気象情報などと組み合わせた情報発信の可能性もあるとした。

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