予備率7%台でも北海道に節電目標、3%台の関西と九州は心配なしエネルギー管理

政府の委員会が今冬の電力需給の見通しを確定した。予備率が最も低くなるのは関西の3.0%で、停電リスクを回避できるギリギリの水準だが、委員会は安定供給可能との判断を下した。一方で北海道は予備率が7%を上回るものの、発電所のトラブルを想定して節電目標を設定するように提言した。

» 2013年10月25日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 全国各地の需給見通しを検討する「電力需給検証小委員会」が、今冬の予測を最終的にとりまとめて公表した。10月1日に発表した予測から多少の修正を加えた程度で、従来通り電力会社が提出した数値を集約したものだ。節電効果を前年度の実績の8割しか見込まないなど、保守的な予測方法に固執しているため、実際の需給状況よりも厳しい数値になっている(図1)。

図1 全国10電力会社の2014年1月と2月の需給見通し(画像をクリックすると拡大)。出典:電力需給検証小委員会

 特に関西と九州では1月と2月の予備率が危険水準の3%台に低下する。それでも「安定供給に最低限必要な3%以上を確保できる」と判断して、節電目標の設定を政府に要請しなかった。ただし北海道だけは予備率が7%以上を確保できる状況にあるものの、節電目標が必要との認識を示した。

 理由は2つある。1つは北海道電力の火力発電所にトラブルが多く発生することだ。過去5年間に発電所のトラブルなどによって計画外で減少した供給力は最大で100万kWを超える(図2)。もし需要が最大になる冬の夕方に重なった場合には、予備の電力(2月で41万kW)を大幅に超えてしまう。

図2 北海道電力の計画外停止による供給力減少分(過去5年間の実績)。出典:電力需給検証小委員会

 もう1つの問題は、北海道に電力を融通できる電力会社が東北電力しかないことだ。しかも最大で60万kWまでの電力に限られる(図3)。発電所の計画外停止が最大に達した場合には、東北から融通できる電力だけでは足りない可能性がある。同様に九州も中国電力からしか融通を受けられず、最大54万kWの供給力を増やすのが限界だ。

図3 全国10電力会社の冬の最大電力(2012年度)と連系線の容量(画像をクリックすると拡大)。出典:電力需給検証小委員会

 とはいえ実際に需要のピークと計画外停止のピークが重なる確率は極めて低く、そのような状況が発生したことは近年にはない。あくまでも万一の備えとして、節電目標を設定して需要を抑制する狙いだ。北海道電力は9月から値上げを実施したため、節電によって電力の使用量を削減することは利用者にとってもメリットがある。

 一方で九州には節電目標を設定しなくて大丈夫なのか、不安が残る。今夏の九州では保守的な予測を超えて需要が増大した結果、8月には予備率が3.1%まで低下する事態が発生した。今冬も1月と2月に同じ3.1%になる予測を出しているが、相当に保守的に算出した数値でない限りは、北海道と同様に節電目標を設定すべきである。

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