日比谷にスマートシティを建設、防災と環境負荷低減をうたう三井不動産スマートシティ

三井不動産が東京・日比谷に都市型スマートシティを2017年に立ち上げる。帰宅困難者の支援や災害に強い電源、エネルギー効率の高い設備を特徴とする。

» 2013年12月12日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 東京都千代田区と日比谷の位置

 三井不動産は2013年12月、東京都心部の日比谷における都市型スマートシティの開発について、都市再生特別地区の都市計画が自治体から認められたと発表した。同社の都市型スマートシティとしては都心部の日本橋につぐ2番目のプロジェクトだ。

 「(仮称)新日比谷プロジェクト」と呼び、千代田区有楽町1丁目に地上35階地下4階の大規模複合ビル1棟と地上の広場、地下通路などを作り上げる。2014年度に着工し、2017年度の完成を予定する(図2)。

 敷地面積は約1万700m2、延床面積は約18万5000m2、建物の高さは約192mであり、事務所の他、店舗や文化交流施設、産業支援施設、駐車場などを含む。

図2 大規模複合ビルの概要。図外右側には晴海通りが走っており、その地下に位置する日比谷線日比谷駅とは地下通路経由で接続する。出典:三井不動産の資料を一部編集

防災機能と低い環境負荷に特徴

 新日比谷プロジェクトでは、防災機能の強化と環境負荷低減を強調しており、3つの対策を打ち出した。第1に帰宅困難者の支援機能だ。東京都心部は夜間人口に比べて昼間人口が著しく多い。2010年の国勢調査によれば千代田区の昼間人口は81万9247人であり、夜間人口の17.4倍に上る。新日比谷プロジェクトでは、千代田区最大級の一時滞在施設(5000m2)と備蓄倉庫(200m2)を設けることで対応する。

 第2に高効率で自立性の高いエネルギーシステムを導入する。中圧ガス管*1)と接続して発電可能なガスコージェネレーションシステムを導入する他、オイルとガス(中圧ガス管)の両方に対応するデュアルフューエル型非常用発電機を導入する。さらに都市部でも珍しくない集中豪雨などの浸水対策を考慮し、2つの発電機は地下ではなく、図1のように建物の地上部に設置する。地下に設置する機械室には水の浸入を抑えるための水密扉を設ける。

 非常時には北側に隣接する千代田区の広場にも非常用電力を供給して、防災に協力する計画だ。地域冷暖房(DHC)施設にも電力を供給する。

*1) 東京ガスによれば、高圧・中圧ガス導管は、阪神・淡路大震災、東日本大震災クラスの大地震にも十分耐えられる構造だという。

 第3に環境負荷を低減し、「二酸化炭素(CO2)排出量を35%削減する」(三井不動産)。熱負荷を引き下げることと、省エネルギー設備の設置、高効率の設備機器を採用することで実現する。建物の断熱・遮熱性能(PAL:Perimeter Annual Load)と、基準値に対する設備の省エネルギー効率の改善(ERR:Energy Reduction Ratio)という2つの数値目標を満たすことで達成度合いを明示する。東京都建築物環境計画書制度が定めたPAL・ERRの「段階3」と、建築環境総合性能評価システムCASBEE「Sランク」相当の確保を目指す。

どのような立地なのか

 新日比谷プロジェクトは、東京駅と皇居に挟まれた丸の内オフィス街を北に眺め、西は日比谷公園、東は幾つかのビルを挟んで山手線、南は劇場やホテルという立地にある。山手線の向う側は銀座だ(図3)。

図3 新日比谷プロジェクトの立地。三信ビルディングと日比谷三井ビルディングの跡地を利用する。出典:三井不動産

 このような立地にあるため、防災機能の強化と環境負荷低減の他に、歩行者中心の基盤整備や国際競争力を高める都市機能の導入を都市再生の力点に据えている。

 歩行者中心の基盤整備として、大規模複合ビルの北側の地表に面積4000m2の「(仮称)日比谷ゲートプラザ」を置く。複合ビルの北側地下にある日比谷線日比谷駅と、西側地下にある千代田線日比谷駅をつなぐバリアフリー地下通路と、地下広場(1200m2)も設ける。

 国際競争力を高める都市機能としては、「(仮称)日比谷ビジネス連携拠点」(約2000m2)の他、「(仮称)日比谷文化発信拠点」(約800m2の吹き抜けイベント空間など)を設置する。

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