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» 2014年01月14日 15時00分 UPDATE

自然エネルギー:風力を導入すると電力価格は下がるのか――欧州の事例

風力発電を大量に導入すると何が起きるのか。エネルギーや石油関連商品、金属などに関する情報と市場データを提供している米Plattsは、2013年12月の欧州市場について風力発電の影響を分析した。確かに電力価格を引き下げる効果があったものの、副作用も現れた。

[畑陽一郎,スマートジャパン]

 風力発電にはさまざまな課題がある。しかし、手付かずの巨大な風力資源を生かすことで、比較的安価に大量の電力が得られるはずだ。幸い、発電設備の技術開発・製品開発は着実に進んでおり、発電所を設置する適地さえあれば、比較的導入しやすい。

 日本は風力発電の導入が先進諸国に比べて遅れている。設備の設置容量は2.6GWであり、これは世界第13位。発電量はさらにわずかだ。国内で発電した年間発電量のうち、風力が占める比率は0.4%(世界第28位)だ。このため、風力発電を大規模に導入した場合、何が起こるのか、実際の経験に乏しい。

 欧州では太陽光発電よりも風力発電の導入量が多く、年間発電量の33.7%を風力が占めるデンマークのような国もある。太陽光の大量導入で知られているドイツも、実際には風力の年間発電量の方が多い。年間発電量の7.4%を風力から得ている。

風力発電は電力価格を下げるのか

 風力発電を大量に導入した場合、電力料金に与える影響はどのようなものなのか*1)。エネルギーや石油関連商品、金属などに関する情報と市場データを提供している米Plattsは、2014年1月、欧州の電力料金と風力発電量の関係について実績値を発表した。

 欧州は電力自由化が進んでいるため、日々の電力価格の変化についての情報が豊富だ。Plattsは、電力価格のインデックス値であるCONTI(Platts Continental Power Index)を公表しており、CONTIの値を見ることで価格の変動が分かる。

 欧州方面の電力情報に関するアソシエイトエディトリアルディレクターを同社で務めるEdwardes-Evans氏は発表資料の中で、電力価格に対する風力発電の影響を2つ挙げた。「2013年12月の電力価格の推移から分かることは、風力発電の気まぐれな性質による電力価格の不安定さだ。風力発電の出力が落ちると、欧州の電力システムは高価な天然ガス火力に頼らざるを得ない。風力発電の出力が回復すると、電力価格は下がる」。

 つまり、風力発電には電力価格を引き下げる効果があること、欧州では電力について市場のメカニズムが強く働いており、価格変動が起こることだ*2)

*1) 関連記事では、ドイツと日本の電気料金を比較し、料金に差がある理由を探った。
*2) 国内では価格による調整ではなく、風力発電の停止を義務付ける解列条件などにより対応してきた(関連記事)。

ドイツは変動が大きく、英国は高止まり

 実際にはどの程度、電力価格が変わるのだろうか。欧州全体とドイツ、英国で状況が異なっていた。

 欧州全体では、2013年12月に電力価格が下がっている。Plattsによれば荒天ともいえる強い風のため、ドイツとフランス、英国で風力発電の出力が最高記録に達した。加えて、気温が平年値とさほど変わらず、大きな需要増がなかったためだ。

 欧州全体を通したCONTIの値は2013年12月に前月比で0.4%低下し、1MWh当たり46.80ユーロとなった。これは同月の為替レートで換算すると1kWh当たり約6.5円だ。

 ドイツでは風力発電の影響がさらに強く現れた。12月の前日市場における平均ベースロード価格は前月比で10%低下し、1MWh当たり35.71ユーロだった。確かに平均値が低くなっている。だが、ドイツは風力発電の出力変化の影響を特に強く受けた。前日市場価格が12月10日と11日には60ユーロ近くまで上がった一方、12月24日には0.5ユーロまで下がったからだ。実に120倍の変動である。

 英国の状況はさらに異なる。英国の電力系統と大陸欧州の電力系統を結ぶ連系線は2本しかないのだという。フランスとの間に1本、オランダとの間に1本だ。従って、英国と大陸欧州の間では余剰電力の融通の余地が限られている。英国では2013年12月の前日市場における平均ベースロード価格は対前月比で安定していたものの、大陸欧州北西部と比較するとかなり高額だったという。

 以上のような状況を日本の現状にそのまま当てはめることはできない。電力の自由化は道半ばであり、風力発電の導入量も少ないからだ。しかし、日本よりも10年以上先を行く諸国の経験を生かすことはできるはずだ

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