北海道電力の見込みでは2013年度に1160億円の経常損失が発生する(図3)。値上げの効果で売上が前年比319億円も増えるのに対して、燃料費・購入電力料が201億円、その他の費用が92億円の増加で、ほぼ帳消しになる状況だ。
ただし売上と燃料費・購入電力料の双方には、再エネの買取に伴う金額が100億円以上も含まれる。さらに売上の中には燃料費調整制度によって利用者から徴収した調整額があり、年間で100億円近くにのぼる見込みだ。この2つを合わせると200億円前後の規模になる。
結局のところ、売上と燃料費・購入電力料それぞれの増加額から200億円を引いたものが実質的な変動分と考えられる。値上げの効果を含めても売上の増加は100億円程度にとどまり、燃料費・購入電力料の増加分は再エネの買取と燃料費調整額で吸収できる水準に収まっている。
こうして見ると、北海道電力の収支は値上げを実施してもさほど改善しないことが想定できる。実質的な費用の増加は原子力関連で発生している部分が大きい。かりに泊発電所を再稼働できたとしても、その後の安全対策を含めて維持コストが増えていくことは確実な情勢だ。
むしろ急ぐべきは火力発電所の設備を更新することである。北海道電力の火力発電所には燃料費の高い石油を使う設備が4割以上も残っていて、年間に800億円以上の燃料費がかかっている(図4)。これを石炭かLNG(液化天然ガス)による最新設備に切り替えれば、半分以下の燃料費に減らすことができる。
今後も値上げを繰り返さないためには、コストを含めて先行きが不透明な原子力発電に依存せずに、火力発電所の設備更新を前倒しで進めるべきだ。加えて北海道の各地で急増する再生可能エネルギーに対応するために、送配電ネットワークの強化が欠かせない。そうした設備増強の費用の一部は国の予算で補うことも必要だろう。
北海道電力の経営状況には、電力会社が抱えるさまざまな問題点が集約されている。今後も旧態依然とした解決策に固執するのか、それとも電力システム改革の流れに沿って新しい電気事業者に生まれ変わる方向へ進んでいくのか、大きな岐路に立っている。今こそ国のリーダーシップと先見力が問われる局面である。
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