高低差や軟弱な地盤に対応する、13.2MWのメガソーラー自然エネルギー(1/2 ページ)

戸田建設と三菱グループは長崎市に出力13.2MWの大規模太陽光発電所を立ち上げる。課題は建設予定地の状態だった。高低差があり、柔らかい地盤の方が多い。建設コストや解体コストを考えたメガソーラーの設計と工法とは。

» 2014年02月20日 07時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]
図1 長崎市と発電所の位置

 長崎市に立ち上がる「長崎田手原(たではら)メガソーラー発電所」(図1)は、県内でも最大規模の太陽光発電所となる。直流出力は13.2MW。予想年間発電量は約1300万kWhであり、これは標準的な3500世帯の年間消費電力量に相当する。

 同発電所の敷地面積は約112万m2。そのうち、28万m2に太陽電池モジュールを設置する。

 この数字を長崎県で最も大きな太陽光発電所である「大村メガソーラー発電所」(長崎県大村市)と比較してみよう(関連記事)。大村の出力は13.5MWであり、田手原とほぼ同じだ。ところが、大村の敷地面積は約20万m2であり、狭い面積を有効に活用している。

 これは大村が九州電力の石炭火力発電所の跡地を再利用したためだ。平たんな敷地であり、最も効率よく太陽電池モジュールを設置できる。田手原は大村と比較すると不利な土地だ。ゴルフ場として造成された未利用の土地に設置するからだ。

最大出力を目指さない設計と工法

 「(田手原の)敷地は造成後、実際にゴルフ場として使われたことはなく、荒れ地になっていた。地形には多数の起伏があり、太陽電池モジュール同士の影の影響が複雑だ。設計に当たっては、なるべく多くのモジュールを設置するというよりも、配置に手間が掛かり採算性の悪くなる部分は利用しないよう工夫した」(戸田建設)。土地利用効率が大村市の事例よりも低くなった理由である。

 図2に長崎田手原メガソーラー発電所の完成予想図を示した。敷地内で勾配がきつい部分や周囲との高低差があり、設置しない方がよい部分を残していることが分かる。

 図はメガソーラーを南側上空から眺めた状態に相当する。図右上に写る海は、天草灘であり、長崎の中心街が位置する長崎港周辺とは、長崎半島の逆の側になる。

図2 長崎田手原メガソーラー発電所の完成予想図 出典:戸田建設

 施工にも課題があるという。山肌を一部削り、一部埋めて開発した土地であり、地盤の状態が一定ではなく、必ずしも強固ではないからだ。「地盤がしっかりしている部分は一般的なメガソーラーと同じ布基礎を利用する。地盤が軟らかい所は杭基礎で対応した。面積では杭基礎を採用する部分の方が広い」(戸田建設)。

 杭基礎工法では、土地に長さ1mのコンクリート杭を差し入れ、その上の地表に正方形に近い基礎を作り込む。この上に架台を据える形だ。このような工夫によって、施工性が高まる他、メガソーラー解体時のコストも低減できるという。

 長崎田手原メガソーラー発電所の総事業費は約50億円。1MW当たりの事業費は約3億8000万円となり、最も条件のよい土地に建設した場合よりも50%程度のコストアップに抑えた形だ。

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